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08


ドラモンドから中央の都で起きている異変について、来ている知らせすべてを読み、ターリアがその対処法などに協力していると、月蝕の館に行っていた西の魔法使いたちと賢者が帰ってきた。彼らは行方不明となったクックロビンを連れており、その姿を見るなりドラモンドはほっと安堵の息を漏らした。

どうやや屋敷に閉じ込めていたらしく、彼自身に異変は無かったという。ターリアはシャイロックから耳打ちで、砕けた破片のムルが実体化しクックロビンを閉じ込めていたことを聞く。どうやらムルの奇妙な傷は、砕けた破片が実体化する現象で出てしまっているらしい。


「それより、大変なことが明らかになったんです」
「大変なことと言いますと・・・・・・」
「<大いなる厄災>を召喚しようとしたとんでもない奴らがいるんですよ!」
「な、なんじゃと!?」


「・・・・・・どういうことかしら?」ターリアは優し気な微笑みを消し、冷静な声で聞き返した。

話に聞けば、骨がたくさん集められ魔法陣が描かれており、さらには中央の国の魔法科学兵団の起動装置まであったという。またその召喚儀式は失敗したらしく、媒介は無かったという。月蝕の館で媒介に相応しいと言えば、月の石しかありえない。思ったよりも厄介な話になっているみたいだ。

今回の厄災の力がいつもより増していたのは、これを行った人物によるものだとひとまず見ていいだろう。


「その人物こそが、人間と、魔法使いの、共通の敵です」
「厄介なことをする人もいるものね。その人物は生かしてはおけないわ」
「ここは我々魔法管理省と賢者の魔法使いたちが、協力し合うべきかもしれん」


その時、悲鳴が響き渡った。窓に飛びついたクロエが、お城のバルコニーの一つを指さして叫ぶ。「見て、あそこ!」そこには魔法科学兵団長のニコラスが、バルコニーから身を乗り出していた。クロエがいそいで箒に乗って助けようとするが、それよりも早くニコラスはバルコニーから身を投げた。


「《パルノクタン・ニクスジオ》!」


地面に衝突する寸前で、アーサーの魔法によりニコラスの身体は空中でピタリと止まる。間一髪、地面スレスレだ。意識を失って倒れ込むニコラスに、アーサーが駆け寄る。「一体、ニコラスはどうしたんだ?」アーサーも、この場に居た全員が状況を理解出来ていなかった。


「・・・・・・オーエン」
「え?」


ターリアが呟く。賢者がターリアの視線を追うと、そこにはオーエンが居た。呆然と、立ち尽くしていた。

騒ぎを聞きつけた人々が騒ぎ出し、訳も分からないまま、オーエンの姿を見つけると「北の魔法使いが自殺させようとした!」と囃し立てた。オーエンは黙ったまま、じっと地面を見下ろしていた。その表情には何の感情もなく、自分を指さす人々を見ると、ようやく薄い冷笑を浮かべた。


「そうだよ。きみたちの不幸は、全部僕の仕業だよ」


オーエンはゆったりと身をひるがえし、室内へと消えていった。
人びとの怒号と罵倒は、鳴り止まない。


「・・・・・・おかしいわね――」
「え、なにが・・・・・・あれ、ターリア?」


ポツリ呟いたターリアに聞き返すが、隣を見てみればそこにターリアの姿は無かった。先ほどまで隣に居たのに、忽然と、姿が消えていた。