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07


月が沈み、太陽が昇った。朝を告げる日差しとさえずる小鳥に、ターリアは目を覚ました。


「おはよう、ターリア」
「目が覚めたかのう、ターリア」


瞼をあげて最初に視界に飛び込んできたのは、黒髪に金色の瞳をしたふたりの男の顔。どちらも同じ顔をしている男は、微笑みを浮かべながら、両サイドから上半身を起こしてこちらを見下ろしている。

「・・・・・・なんで大人」見慣れたスノウとホワイトの大人の姿に、寝起きのせいもあって素気なく聞くと「ドキッとしたじゃろう?」と声をそろえて笑った。


その後、双子はいつもの姿に戻り、ターリアは身支度を終えると、久しぶりにアーサーとお茶をしようと3人はアーサーのもとへと尋ねた。途中でオズのもとへを向かい、一緒に飲まないかと誘ったが、オズは首に横に振った。

アーサーの執務室で4人で優雅に紅茶を飲んでいると、ノック音が響く。入ってきたのは、賢者とヒースクリフと少年だった。


「おはようございます、賢者様」
「スノウ様、ホワイト様、ターリア様も。ご一緒だったんですね」
「そうじゃ、朝のお茶を一緒にと思っての」


彼らが会話を弾ませている傍らで、少年とターリアの視線が交差した。「おい、それよりも、そこの女は誰だ」少年はぶっきらぼうに言い放つ。「シノ、失礼だろ! それに昨日、広間で名乗っていただろう」隣でヒースクリフがシノを諫めたが、シノは「俺には名乗られてない」と言い返す。

その様子をみながら「あらあら、気が強い子ね」とターリアは笑った。


「私は北の魔法使い、ターリア。スノウとホワイトの一番弟子よ」
「シノだ、ブランシェット家の小間使いだ」


名乗ればシノも素直に素性を明かす。素直な性格だ。幼馴染なのだとあとから付け足すヒースクリフに、ターリアはなるほどとうなずいた。


「して、賢者よ。なにか用事があって此処に来たのじゃろ?」
「はい、実は昨晩、墓地で・・・・・・」


そう促せば、賢者は頷いて昨晩の出来事を話しだした。

賢者とヒースクリフとシノは、昨晩墓地に向かうと墓荒らしをされていたことを話した。埋蔵品には手を付けず、遺体だけが無くなっているという、奇妙なことだ。埋蔵品が残っているのなら、盗賊の可能性はないだろう。これ以外にも、<大いなる厄災>の影響を受けた埋蔵品や巨大な鳥の影の話も持ち上がっている。


「はて、巨大な鳥の影・・・・・・」
「聞いたことがあるような、ないような・・・・・・」
「本当ですか?」


「うーむ、ここまで出かかっておるんじゃがの」聞いたことがあるような鳥の話に、スノウが首を傾げる。「ターリアは分からぬか」ホワイトが隣のターリアへ目を向ける。「鳥の影ね・・・・・・なにかあったかしら」視線を逸らして考えてみるそぶりを見せる。

すると魔法科学兵団長のニコラスがやってきた。ちょうど今の話をアーサーから伝え、調査をしてほしいと頼むが、ニコラスは今朝墓地に行ったがなにも変わりはなかった、魔法使いたちが何かしたのではないか、と言いがかりを付ける。
今朝から墓地へ行く不審もあったが、ニコラスはそれを民からの報告があったからだと言い返す。

根拠もない言いがかりに、シノは腹を立て言い合いに発展しそうになるが、東の国の領主であるブランシェット家の名前を持ち出したヒースクリフによって、その場はなんとか治まる。

非協力的な魔法科学兵団はさておき、もう一度墓地へ行ってみようと、アーサーを除いた6人が再び墓地へ向かった。

墓地にたどり着くと、とくに変わった様子はなく、平穏そのままだった。掘り返されていた痕跡は全く消えていた。その様子に、シノやヒースクリフや賢者は目を丸くする。


「もう一度、墓を掘り返してみよう。骨はないままかもしれない」
「やめなさい、シノ。それこそ根も葉もない噂を立てられてしまうわ」


「でも・・・・・・」と食い下がるシノに「それに亡骸は無いわ。誰かに持ち出されているわね」と冷静に墓地を見渡しながら告げた。双子も頷いている。「近頃、中央の都で良くないことが起きるかもしれん」スノウが笑む。「面白そうじゃ。アーサーに警告しておこう」ホワイトも口端を上げた。

墓地から再び城へと戻ってきた6人は、それぞれで動くことになる。


「では賢者よ、アーサーには我々から話しておく」
「俺たちは俺たちで調査を続ける。手柄を横取りされたくないからな」
「叙任式には間に合うようにするのじゃぞ」


双子はアーサーのもとへ向かい、シノとヒースクリフは調査への向う。残った賢者とターリアがさて、と次のことを考えようとしたとき、背後からドラモンドが焦ったように駆け寄ってきた。

「賢者様! どうかお力をお貸しください!」ドラモンドの話を聞いてみると、都中で古代の財宝が不思議な光を放ったり、滅びたはずの太古の生物が目撃されたりと、都はいま混乱しているという。なかでも月蝕の館の怪異が厄介だという。


「月蝕の館ですって?」


話を聞いていたターリアが口を挟めば、ドラモンドは少し怯みながら「は、はい」と頷いた。どうやら館に入れないらしい。正確には、入ったら帰ってこれないのだという。それを確かめに書記官クックロビンが向かったらしいが、帰ってこず、賢者に助けを求めたらしい。


「賢者様とターリアだ。おーい!」


振り向くと、大振りに手を振ったムルを含めた西の魔法使いたちがいた。ニコニコと笑いながら、彼らは3人のもとまで来る。


「何をお話になられていたのですか」
「月蝕の館というところで異変があって、クックロビンさんが行方不明になってしまったんです」


「随分と広いお屋敷なのでしょうね」ラティスカはのんきに言う。
「月蝕の館には奇妙なものがたくさんあるわ。扱いを間違えれば一発、というのもね」微笑みを浮かべながらターリアが言う。
「ムルが勝手に持ち出したり足したりしていましたね」頷きながら懐かしいことをシャイロックは思い出す。


「・・・・・・引き受けてくれるか」
「いい加減で嘘つきな魔法使いでも、よろしければ」
「・・・・・・構わん、どうか頼む」


シャイロックの皮肉でも、ドラモンドは部下を思って頷く。「俺も手伝うよ! みんなで頑張ろう!」クロエも賛成だと答える。「うん! じゃあ出発!」話が決まった途端、すぐに向かおうとするムルに続いて、魔法使いたちが動き出す。賢者も同行したいと願い出て、一緒に行くことになった。

「ターリアはどうします?」シャイロックがターリアに尋ねる。「西の魔法使い総出で行くのなら、私はいいでしょう」人手が足りていると言い、ターリアは彼らを見送った。

箒で飛び去って行く彼らを見届けると、ターリアはさて、と呟いてドラモンドに振り返った、


「では、<大いなる厄災>が接近しすぎて起きた異変を全てお聞かせ願えるかしら。私が検証したしましょう」