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01


「は〜、やっと終わったぁ」
「おつかれさま」


今日最後の授業が終わった途端、エースはそう言って机に突っ伏した。「早くホリデーにならねぇかなぁ」だるそうにエースが言う。「何を言ってるんだ、ホリデーはもう目の前だろう」そんなエースを見てデュースが言った、「それまでのあと少しが面倒なんだよ」2人の間に座っていた夜月は教科書を片付けながら会話を聞いていた。

ああ、そっか。もうすぐホリデーだったっけ。そういえば最近、どの生徒も少しそわそわしてたな。夜月はここ最近のことをふと思い出す。2人も帰るのだろうか。夜月はエースとデュースに視線を向けた。


「2人はホリデーの予定はあるの?」


「もちろんだ」デュースが最初に頷いた。「僕はホリデーの間は母さんと過ごすつもりだ。家にいなかった分、手伝いもするつもりだ」胸を張って言うデュースに「いいね。お母さんも絶対喜ぶよ」と言う。それを聞いてデュースは少し嬉しそうに目元とやわらげた。

「エースは?」今度はエースに向けて聞いた。「オレは別に? まあクリスマスと新年明けが被るから、ごちそうは食うけどね」なんでもないように言うと「ふなっ!? ごちそう!?」とグリムが飛びついた。

そのまま3人は教科書を持って教室を出る。ホリデーの話をする2人について聞いているうちに、夜月は歩く速度を少しずつ落としていった。そっか・・・・・・エースもデュースも帰るのか。


「どうしたんだゾ?」


とうとう立ち止まってしまった夜月を腕の中にいたグリムが見上げた。入学式以来、エースとデュースとはいつも一緒にいた。その2人がいなくなるのは、なんだか感慨深く思えた。


「ちょっと、さみしいね」


夜月は少し寂しそうな顔をして、それでも笑いながらグリムに言う。「オレ様がいるんだゾ」グリムの言葉に目を丸くする。「・・・・・・うん。そうだね、グリム」腕に抱えたグリムをギュっと少し力を込めて抱きしめた。ひとりぼっちではないから、きっと寂しくないよ。


「ヨヅキ?」
「どうかしたのか?」


いつの間にか廊下に立ち止まってしまった夜月に気づき、エースとデュースは後ろを振り返って夜月に目を向けた。夜月は慌てて2人のもとに駆けよって何でもないと口にする。2人もそこまで気にした様子もなく、いつも通りそれぞれの帰路に進んだ。



■ □ ■



オンボロ寮に向かうグリムと夜月と別れ、エースとデュースはハーツラビュル寮に向かって歩いていた。そんなとき、ふとデュースが口を零した。


「ヨヅキは、帰る場所がないんだよな・・・・・・」


その言葉にエースもハッとし、曖昧に言葉を濁す。「んじゃ、ヨヅキとグリムは学園に居残りか・・・・・・」夜月は異世界から来たという事情は知っている。まだ帰る方法もわからないのに、無遠慮にホリデーの話をしてしまったと2人は罰の悪そうな顔をして見合わせた。


「・・・・・・今度、さりげなく聞いてみるか」
「そうだな、改めて聞くよりいいだろう」


「「(土産でも買って帰るか)」」学園にグリムとふたり残る夜月を想像して、2人は心の中で思った。