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017


いつもの癖でいつのまにか取り上げられたオンボロ寮まできてしまった。寮に明かりがついているということは、ジェイドとフロイドがいるのだろう。契約の日まであと1日。なんとかして契約条件を達成させないと。


「・・・・・・ん?」


視界の隅に小さな光が走ったのに気づく。追うように視線を向けると、あたりに黄緑色の光が飛んでいた。蛍のようだけど、どこか違う。幻想的な光を放っている。「綺麗だな・・・・・・」黄緑色の光に手を伸ばすと、その光は弄ぶように近づいては離れていく。


「・・・・・・ん? お前は・・・・・・」


声の主を追うと、そこには以前会った頭に角が生えた人が黄緑色の光に包まれていた。彼が夜月に気づき声をかけると、光はどこかへ消えていった。


「あ、ツノ太郎。こんばんわ」
「ツノ太郎? ツノ太郎とは・・・・・・まさか、僕のことか?」


「うん。好きに呼べと言ったから、グリムにつけてもらったの」目を丸くした彼にそういえば、彼は瞬きを繰り返した。それから徐々に口端を上げた。「・・・・・・ふふ、ははは! この僕をツノ太郎とは! 本当に恐れを知らないとみえる」フフッと笑みをこぼす彼。「やっぱり、ダメでしたかね」夜月がそう聞くと「いい、好きに呼べと言ったのは僕だ。その珍妙なあだ名で僕を呼ぶことをお前に許す」と満足げに答えた。


「・・・・・・ところで、ここ数日この寮の中が騒がしいようだ。お前たち以外にも寮生が?」
「ああ、実は・・・・・・」


夜月は寮を取られる羽目になった経緯を話した。すると腕を組んで「では、きっと明日の日没後にはここはアイツの所有物となり騒がしい生徒たちの社交場となるだろう」と言い切られる。「・・・‥ふ、何やら意義がありそうな顔だ」ムッとした顔に気づかれるとそんなことをニヤけづらで言われた。「負ける前提で話されたら、誰だってムッとするよ」夜月は唇を尖らせる。


「・・・・・・ところで、この寮の壁には、見事な彫刻のガーゴイルがあるな」
「ガーゴイルって、あの石像のこと?」


夜月は寮の像を指さす。「そうだ。ガーゴイルというのは、一見禍々しい姿をした怪物の彫刻に見えるが・・・・・・実は、雨水が壁面を汚さぬように作られた雨どいの一種なんだ」ツノ太郎は続ける。「見た目こそ恐ろしいが、あれらは屋敷を大切にいつくしむ存在・・・・・・ということだな」ガーゴイルを見詰めたまま言うツノ太郎に「意外といい人なんだね」と答えた。


「目に見えるものとその実態は、時として真逆なこともある」
「見た目と、真逆・・・・・・」


ふと、夜月が視線を下ろして考え込む。どこか引っかかる。「この場所が毎夜騒がしくなるのは、僕も遠慮願いたい」ツノ太郎は嫌そうな顔をした。「せいぜい足掻いて、寮を守って見せるがいい」それだけ告げるとツノ太郎はパッと姿を消した。
夜月はツノ太郎に言われた言葉を考えながら、サバナクロー寮に向けて足を踏み出した。