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016


昼休みになって、ジャックと夜月はエースとデュースに次の作戦を説明した。


「無敵の契約書を破く方法を探す? いいじゃん! めっちゃ卑怯だけど」
「確かにそっちの方が望みはあるかもしれないな。卑怯だけど」
「うるさいよ。もとはと言えば貴方たちのせいじゃない」


卑怯だと言う2人にムッとする。「卑怯っていうならアズールだって同じだろ。最初から邪魔するつもりで取りに行けっつったんだ」ジャックも言い返す。「レオナ先輩は確かに卑怯者だけど、頭は切れる天才司令塔だ。チャレンジしてみる価値はあると思う」と提案するジャックに「なんか卑怯って言葉が飽和してきたな・・・・・・」とデュースはこぼした。


「リーチ兄弟はウツボだったけど、アズールも海の中ではあんなカンジなんかな」
「そういえば、インチキタコ野郎って呼ばれてたのを聞いたけど」
「レオナ先輩もアイツをタコ野郎って呼んでたような」
「まさか、正体はタコの人魚?」
「ふなっ!? 海ん中で脚がいっぱい増えるとしたら、ウツボよりも強そうなんだゾ!」


「まずは契約書を探さないとね」夜月が呟くと「あのVIPルームの金庫がいかにも怪しいけどな・・・・・・」ジャックが答えた。「そうと決まれば、さっそくオクタヴィネル寮に潜入だ!」グリムの言う通り、さっそく5人はオクタヴィネル寮に向かった。



● 〇 ●



まだ『モストロ・ラウンジ』の開店時間前のため、中には誰もいなかった。5人は見つからないように身をかがめて『モストロ・ラウンジ』の奥にあるVIPルームに忍び込む。


「金庫は暗証番号と鍵の二重ロックか」
「厳重さからして、契約書はこの中で間違いないみたいだね」


金庫をデュースと夜月が覗き込む。厳重さからして中から盗むには壊すしかなさそうだ。「・・・・・・!! だれか来る!」ピクッと耳を動かしたジャックが声を潜めて叫んだ。「えっヤバッ。隠れろ!」足音はエースたちでも聞こえるくらい近寄ってきている。

5人は急いで机の下に隠れる。「ほら、ヨヅキも早く入れって!」エースが夜月の肩を掴んで押し込む。「うわっ・・・・・・!」ガクンと膝を崩す。「っ! エース、危ないだろ!」先に入り込んでいたデュースに上に倒れこみ、咄嗟にデュースが受け止める。「仕方ねえだろ! 狭・・・・・・ジャック、でかいんだよお前」体の大きいジャックにエースは文句を垂らすと「んだと?」とジャックが不満げに零す。「ちょ、動くなって!」机の下に5人はきつ過ぎる。


「さてと・・・・・・」


部屋に入ってきたのはアズールだった。アズールは金庫の扉を開け、中から黄金の契約書を取り出す。1枚、2枚、3枚とまるで札束を数えるように。はたまたどこかの怪談のように契約書の束を数える。そしてふたたび契約書を金庫にしまい、鍵をかけて部屋を退出していく。何をしに来たのだろう・・・・・・契約書の確認、にしては少しおかしい気がする。

アズールが出ていったのを確認して、一息ついてから机の下から順に出る。「大丈夫か、ヨヅキ」先に出たジャックが手を差し伸べてくれる。「ありがとう、ジャック」夜月はジャックの手を取って机の下から出る。それに続いて最後にデュースも出る。「デュースも庇ってくれてありがとう」という夜月に「お前に怪我がないなら良い」と笑って返す。


「・・・・・・待て! 見ろ、テーブルの上に1枚契約書が置きっぱなしになってるぞ」
「マジか、ラッキ〜。拝借して、破けるかどうか試してみようぜ」
「アズールのヤツ、意外とおっちょこちょいなんだゾ」


「どれどれ・・・・・・」グリムがなんの警戒もなく手を伸ばす。「あ、ちょっと待って!」何かおかしいと思い咄嗟に止めようとしたが、時すでに遅し。ビリビリと電撃が走った。「あばばば!!!」グリムから感染してエースとジャックが。「ダバババ!!」そしてデュースにも感染した。「え、ちょっ、みんな大丈夫っ!?」電撃でしびれる4人に慌てて声をかけた。


「アハハハハ!!」
「電気ナマズの攻撃でもくらったかのように震えて。無様ですねぇ、みなさん」


しびれが落ち着いたころ、アズールとフロイドとジェイドが部屋にやってきた。「テメェら、気づいてたのか!」入ってきた3人をジャックが睨みつける。「当たり前でしょう。丸見えでしたよ、そのフサフサの尻尾がね」クスクスとアズールが笑う。「実は、僕以外が触れると電流が流れる仕組みになってるんです。残念でしたね」勝ち誇った顔をするアズールに「そ、そこまでするか!?」とエースが驚愕する。


「こいつらバカじゃん! 何で結果が分かりきってんのに挑んでくんの?」
「フロイド、そんなに笑ってはかわいそうですよ。彼らなりに、無い知恵を絞って頑張っているんですから。フフフッ」
「大事なものを盗もうとする悪い子には、お仕置きが必要ですね」


「二度とこんなことを考えないように、しっかり躾けなくては」アズールがマジカルペンを手にする。「順番にゆーっくり絞めたげるからねぇ」続いてフロイドやジェイドもマジカルペンを構えた。「くっ・・・・・・来るぞ、お前ら!」ジャックの言葉を合図に、こちらもマジカルペンを構えた。そこから戦闘が始まるも、室内で狭く得意魔法も使えないためにこちらが劣勢だ。

「クソッ、召喚魔法は得意じゃねーけど・・・・・・出でよ、大釜!」エースが大釜をフロイドに投げつける。「おまっ、僕の真似するな!」デュースが叫ぶ。「昨日も言ったじゃん。そんなの当たんねーよ! 『巻きつく尾バインド・ザ・ハート』!」フロイドはユニーク魔法で大釜を避けた。


「フロイド!! どこに向けて魔法を打ってるんだ! 金庫に向けて逸らすやつがあるか!!」
「あ、ごめーん」


「ああ、扉に傷が!! ダイヤルや蝶番は馬鹿になってないな!?」大釜が金庫にあたり、アズールは急いで鍵を確認する。「ユニーク魔法を考えなしに使うのはやめろといつも言ってるだろう! 何度言えばわかるんだ!?」アズールは荒い口調でフロイドに怒鳴りつける。「ゴメンって。ちっせー傷がついたくらいでそんな怒んなくてもいいじゃん」ムッとしたフロイドが言い返す。「壊れてからじゃ遅いんだよ!!」


「2人とも、落ち着きなさい。さもないと・・・・・・彼らが逃げちゃいますよ」
「「えっ?」」


「今がチャンス! なんだゾ!」喧嘩をしてるすきに5人はコソコソと出入り口に足を忍ばせ、全力疾走で逃げ出した。「あっ、待ちなさい!」背後からアズールの引き留める声がした。

オクタヴィネル寮から逃げ出した5人は鏡舎で膝をついた。「あの契約書、破れないどころか触れもしないとは・・・・・・」デュースが最初に口を開いた。「今日のところはここまでか」ジャックが言う。「本当に破る方法なんかあんのかよ〜」エースがため息交じりに嘆く。でもなんだろう、この違和感は。夜月はひとり、感じ取った違和感に首を傾げた。