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015


「・・・・・・ん」


意識が浮上する。微睡んだなか、心地いい温かさに眠気を誘われる。まだ眠っていたい欲に、思わず頬をすり寄せた。いつもと違うフカフカなベッドが気持ちいい。このままもう一度寝てしまおうと思った、その時だった。


「――!?」


思わず勢いよく飛び起きてしまった。恐る恐ると隣に目を向ければ、レオナが目を閉じて眠っている。この状況に一瞬困惑した後、昨夜のことを思い出す。そうだった。そういえば、あのまま眠ってしまったんだった。寝息を立てるレオナに目を向ける。レオナが起きる前に先に起きておこう。夜月はレオナを起こさないように気を付けながらベッドから足を下ろした。


「――!」
「おい・・・・・・まだ寝てろ・・・・・・」


腰を上げようとした瞬間、後ろから伸びた腕に捕まってベッドに引き戻される。まだ半分寝ているレオナは夜月の腹に腕をまわして抱き枕にする。「レオナさん、もう朝です。早く起きないと」腕の中から出ようともがくが、力が強くて出られない。「グルル・・・・・・るせぇな・・・・・・」もがく夜月にレオナは眉間にしわをよせる。もうすぐラギーも起こしに来ると言って起こそうとすれば、レオナは舌打ちを打って仕方なさげに夜月から腕を引いて解放した。解放された腕から出てベッドから足を下ろし振り向くと、レオナは眠そうに肘を立てて欠伸を零していた。

今日は2日目だ。そろそろ時間もなくなってきたことだし、急がないとな。ベッドに腰を下ろしてレオナに背を向けたまま夜月は思う。悶々と考えながら手持ち無沙汰になって指で髪をあそぶ。


「・・・・・・」


その様子を眠い目でレオナは眺めていた。座り込んで髪を弄んで物思いにふける夜月。髪を前に流しているためにうなじが露わになっていた。レオナはおもむろに手を伸ばし、うなじをそっと指先で滑らせた。


「――ひゃっ!! え、な・・・・・・」


ビクリと肩を揺らした夜月は咄嗟に片手でうなじを抑え、後ろを振り返る。顔を赤くした夜月に目を丸くしたレオナはフッと口端を上げて楽し気に笑った。「い、いたずらはやめてください」笑ったレオナを不満に思ったのか、夜月は唇を尖らせて言う。「一緒のベッドに寝かしてやったんだから、これくらいいいだろ」ニタリと口端を上げるレオナに、夜月はまたムッとした。

地位や金を目当てに近寄ってくることもなければ、媚を売ってくることもしない。最初は怖気づいていたのに、今では警戒心すらない。恐れもせず、真っ直ぐと視線を向けてくる。ああ、存外俺はこの草食動物を気に入ってたらしい。



● 〇 ●



「あ、ヨヅキちゃん久しぶり〜」
「元気にしてたか?」


ジャックたちと一緒に学園に登校したあと別れると、ケイトとトレイやリドルにたまたま廊下で居合わせた。「こんにちわ、お久しぶりですね」手を振って近寄ってくる3人に挨拶をする。「2人から事情は聞いてる。今はサバナクロー寮にいるそうだね」リドルが言った。「なんとか3日間だけ泊めてくれています」夜月は頷く。


「エースとデュースが悪いな、毎回巻き込んで」
「いえ。今回はグリムのせいもだいぶ多いですし、学園長にも半ば強引に押し付けられたので・・・・・・」
「え、そうなの? ヨヅキちゃんも大変だねぇ・・・・・・」


ケイトが苦笑する。エースやデュースやグリムがこれに関わってなかったとしても、食費を盾に学園長に押し付けられていただろう。夜月はため息をついた。


「縁起でもないけど。もしオンボロ寮をとられてしまったら、ハーツラビュル寮に来るといい。もとはと言えば、ウチの寮生のせいだしね」
「え? でも、デュースからいつも満員状態って聞きましたけど」
「キミ一人分ぐらい、すぐに用意できるよ」


リドルは気前よくそう提案してくれる。「ありがとうございます。正直、助かります」その時は甘えさせてもらいますね、と夜月は素直にその行為に甘えることにした。「それじゃあ、ボクたちはこれで。キミも授業に遅れないようにね」それじゃあ、とリドルは片手を上げて踵を返す。「またな、ヨヅキ」「ばいば〜い」続いてトレイやケイトもリドルの後を付いて行った。

アズールとの契約満了まで、残り2日――