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010


――人魚の、夢。


「ウィーッス! はよッス! ヨヅキくんとグリムくんもさっさと起きてください」
「んぅ・・・・・・?」


朝。いつもならカーテンの木漏れ日やグリムやゴーストたち、もしくは目覚まし時計で起きるが、今日は違う。「ほら、早く起きるッスよ」肩を掴まれユサユサと揺さぶられる。のろにろと上半身を起こす。「・・・・・・おはようございます」まだ寝起きで働ていない頭であいさつをする。「おはようッス。シシシッ、髪ボサボサじゃないッスか」ラギーは寝起きの夜月の髪を手櫛で解き「早く起きて顔洗ってきてください」と言ってレオナの方へと向かった。


「・・・・・・ん、るせぇなぁ・・・・・・ぐー」
「レオナさん! ほら、二度寝しないでください!」


ラギーは寝るレオナの両足を掴んで雑に引き下ろす。わりと容赦ない。夜月もグリムもお越し、言われた通り洗面所に向かって朝の身支度を済ませに向かった。

アズールとの契約満了まで、残り3日――



〇 ● 〇



「おう、お前らも朝練に参加するのか?」
「そうみたい」
「オレ様はまだ寝てたかったのに、ラギーに起こされたんだゾ」


6時に起こされたのは、サバナクロー寮ではマジフトの朝練があるからだ。この寮にいる以上、夜月たちも参加することになるらしい。「そんじゃ、久しぶりにゲームでもしますか」ラギーが続ける。「ヨヅキくんは隅で運動部のマネージャーみたいにオレらのサポートしてください」夜月には魔法は使えないため、サポートを言いつけた。わかりましたと言って頷くが「ラギー、そいつも試合に参加させる」とレオナの一言でそれを打ち消される。ラギーと夜月は目を丸くしてレオナを見た。夜月は女なのに加え、運動も苦手で魔法も使えない。それなのに参加させるのか、とラギーは目で語る。


「俺ほどじゃねぇが、そいつは司令塔としての素質があるみてぇだからな。1年坊の司令塔として外野から指示させる」
「でも、私の指示なんて聞かないと思うんですけど」
「そこはレオナさんの一言でなんとかなるッスよ」


「んじゃ、そういうことで」ポンと肩を叩き、ラギーは分けられた上級生にチームに向かう。「よろしくな、ヨヅキ」1年チームにいるジャックが笑いかけ「うん、よろしくねジャック」と夜月も笑って返した。

それからチーム戦や毎日のトレーニングが始まった。みんな汗を流して頑張っている。「朝一で身体を動かすの、思ってたより気持ちが良いんだゾ」休憩時間にグリムがそういうと「だろ? オレはさらに1時間早く起きてジョギングもしてる」とジャックも楽しげに話し始めた。「もう来年のマジフト大会に向けて朝練してるなんて凄いね」と夜月が言うと「ああ、そっか。アンタらまだ知らないんスね」と話を聞いていたラギーが口を開いた。


「寮対抗マジフト大会よりも、もっと大規模なヤツが毎年5月にあるんスよ」
「ふな”っ!? あれよりデカい規模の大会があんのか?」
「『学園対抗戦』だ」
「ああ、他にも学校があるんでしたっけ」


「ウチの学校は、毎年ロイヤルソードアカデミーと戦う」チェーニャのいる学校だ。「魔法士養成学校はいくつかあるんスけど、その中でもナイトレイブンカレッジとロイヤルソードアカデミーは『二大魔法学校』って呼ばれるくらい名門なんス」続けてラギーをが補足を入れる。「どんな学校なんですか?」と聞けば「キザったらしい優男ばっかりのお坊ちゃま学校だ」と馬鹿にしたようにレオナが答える。「校舎も制服もやたらキラキラしててダサいし」いくら名門といえど、あっちの学校には頼まれたって通いたくないとラギーは言う。


「でも、確か『学園対抗マジフト大会』ってナイトレイブンカレッジが100年間負け越してるんですよね」
「そういえば、トレイ先輩もそんなこと言ってましたね」
「うぐっ、まだ負け越しは99回ッス! 今年は100年目の正直で絶対勝ってやるんスから」


ムッとした顔で言うラギー。トレイも以前言っていたが、ナイトレイブンカレッジ生は本当にロイヤルソードアカデミー生を敵視しているみたいだ。「学園対抗ってことは、他の寮もロイヤルソードアカデミーと戦うのか?」グリムの問いに「そうだ。各寮からの選抜選手が学園代表としてチームを組む」とレオナが答える。「それはまた、いろいろと揉めそうですね・・・・・・」と苦笑した夜月。「去年はポジション決めで揉めて、試合前に乱闘騒ぎになった」さすがナイトレイブンカレッジの生徒、と言ったところだろうか。


「オレ様も絶対学園代表に選ばれて見せるんだゾー!」
「選抜選手になって力を見せつけるためにも、やはり日頃から鍛錬は欠かせないってことだな」
「寮対抗よりテレビ放映も視聴率高石、良いとこに就職できるチャンスなんスよ!」
「どうやって他人を蹴落として選抜選手の座を手に入れるか、今からよく考えておくんだな」