008
「・・・・・・うう、今日からこの寒空の下野宿かぁ・・・・・・辛いんだゾ」
「誰のせいだと思ってるの・・・・・・」
寒い真夜中、夜月とグリムはジェイドとフロイドによってオンボロ寮から追い払われていた。担保にしたのが寮のため、契約達成まで一時的アズールにとられてしまう。最低限の荷物をもって追い払われた夜月は途方に暮れる。
「おーい、ヨヅキ、グリム!」
「・・・・・・? あれ、デュースにエースとジャックまで」
「ふなっ! オマエたち、もしかして助けに来てくれたんだゾ!?」振り向くと3人が走ってこっちに向かってきてくれていた。「グリムはともかく、夜月が宿無しになるのは、まあ、オレたちにも原因はあるし?」エースはバツ悪そうにして言う。「野宿して風邪でも引かれると、寝覚めが悪いっつーか」エースなりに気にしていたみたいだ。それが分かっただけでも夜月にとっては良い収穫だったといえる。「ローズハート寮長に、話はつけてある」続いてデュースがそういう。
「僕たち1年生の4人部屋でいいなら、雨風をしのげる場所は提供できるぞ」
「お前ら、4人部屋にさらに1人と1匹を押し込めるつもりか?」
「ハーツラビュルに空き部屋はねぇのかよ」と聞くジャックに「うちの寮は退学者も留年者もいないから、常に満員状態なんだ」と答える。以前、リドルもハーツラビュル寮だけが留年者・退学者がいないと言っていた。「うーん、人数もいるのにそこに押し掛けるのはちょっと」狭くなるだろうし、相部屋の他の人たちにも迷惑をかけてしまう。
「・・・・・・なら、サバナクロー寮に来るか?」
「え?」
「「エッ!!!?」」
まさかジャックが提案してくるとは思ってみなく、思わず目を丸くする。「アズールとの交渉に付いて行ってやると偉そうに言っておいて、結局何もできなかったからな」ジャックなりに今回のことを気にしてくれていたみたいだ。「レオナ先輩たちもマジフト大会の時の借りもあるし、断わりゃしないだろう」
「ほぉ〜〜」
「へぇ〜〜。ジャックくんって実は優しいんだぁ〜〜」
「意外な一面なんだゾ〜〜」
「か、勘違いするなよ!」ニヤニヤする3人にジャックは声を上げる。「次のテストのために、ヨヅキにはアズールとの勝負に勝ってもらわないと困るだけだ!」耳をピクピク動かして誤魔化すジャック。「ジャックの提案のほうが、ヨヅキたちもしっかり休めそうだしな」デュースはサバナクロー寮のほうが良いんじゃないかと言う。「ウチの寮だと床に寝るか、オレかデュースのベッドで一緒に寝るかになっちゃうしねー」それについてはエースも同意した。
「・・・・・・あ、もしかしてそっちの方がいい?」
「エース・・・・・・」
「はは、冗談だって。拗ねんなよ」
意地悪な顔をしてそんなこと言ったエースをじとり目で見やる。エースは笑ってムッとした夜月の頬を人差し指でつついた。
「じゃあ、さっさと寮に戻るぞ。もう12時近いじゃねぇか・・・・・・」
「んじゃ、また明日な」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
夜月はサバナクロー寮にお邪魔することにして、ジャックの後を付いて行った。ハーツラビュル寮への帰り道、デュースがふと隣に目を向けてはぁとため息を落とした。
「お前も素直じゃないな」
「は!? な、なんだよ・・・・・・」
「素直に誘えばいいものを」
「すぐ顔に出るお前にはぜってー言われたくねぇ!」
「なっ!? ぼ、僕は別にそんなこと思ってないっ!」
やいやい言い合ってハーツラビュル寮に戻り、結局夜月はサバナクロー寮に泊めてもらうことになったとリドルに説明すると「キミたちが原因なんだから連れてこないとダメだろう!?」と怒鳴られて、ケイトとトレイに見守られながら約1時間ほど説教を去れた。