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xx


――鏡に影?
――これも、不思議な夢の1つだろうか。


カーテンから漏れる太陽の日差しで目を覚ます。何度か寝返りをした後、ぐしゃぐしゃになった髪を片手で流し、カーテンを開ける。今日もいい天気だ。グリムに至ってはまだ夢の中。夜月は寝間着から制服に着替え、髪をまとめる。するとグリムもやって起きていた。朝の準備も終わり、一息ついたところで玄関の扉が叩かれる音がした。「こんな時間に誰なんだゾ?」夜月は急いで階段を降り、玄関の戸を開けた。


「おはよう、ヨヅキ。よく眠れたか?」
「・・・・・・え?」

扉を開けるとトレイが笑顔で出迎え、その背後にはケイトやリドル、エースやデュースの姿もあった。ハーツラビュル寮の勢揃いに夜月は頭にハテナを浮かべ「え、なんでみんないるの? え、わたし、なんかした?」と動揺する。そんな夜月にケイトは笑い「取り合えず、中に入れてくんない?」と言う。夜月は扉を開け、ひとまず彼らを談話室へと招き入れた。

談話室に入ってからも沈黙が続いた。尋ねに来た理由の分からない夜月は相手が話すのを待つしかなく、トレイたちに至ってはちらちらとリドルが口を開くのを待った。「・・・・・・あっ、お、お茶用意するね」気を利かせて立ち上がった夜月を「いや、大丈夫だ」とリドルは断る。スッとリドルは立ち上がり、夜月の目の前にった。


「すまなかったっ!!」
「えぇ!?」


突然頭を下げられ、夜月は目を見開いて驚く。リドルは頭を下げたまま続ける。「隠していたとはいえ、女性である君を男だと勘違いをしてしまった」そう告げるリドルに「え、な、なに。2人とも、みんなに話したの?」と夜月はエースとデュースに視線を向ける。「いや、話しといたほうが良いと思ってさ」エースは誤魔化すように目をそらして唇を尖らせる。「すまない・・・・・・話さないほうがよかったか?」やっぱり駄目だったか、とデュースは申し訳なさそうにする。


「リドル先輩、言わなかった私のせいでもありますしそんな気に病まないでください」
「本当に申し訳ない・・・・・・せ、責任は取る!」
「せ、責任!?」


リドルの謝罪がヒートアップしていき、夜月もあたふたとする。そんなリドルと夜月の様子に見かね、トレイは一度リドルに落ち着くように声をかける。リドルは我に返り、また申し訳なだそうに夜月に謝った。


「俺たちからも謝らせてくれ、悪い。ちゃんと気づいてやれればよかったんだが」
「まあオレはそうかなー、ってぐらいには気づいてたけどね。これからは頼ってくれていいからね、ヨヅキちゃん」


目を丸くして夜月は1人ひとりの顔を見た。「そ、そんなことで・・・・・・」隠していたのは自分の方だというのに、こんなに気にするとは思わなかった。たかが性別だけでこんな事態になるとは。「そんなことって・・・・・・おまえなあ・・・・・・」思わず漏れてしまった夜月の言葉に、エースは呆れた。


「だ、だって、そんな重く捉えられるとは思ってなくて。性別って、そんなに重大な問題かな」
「重大中の重大だよ。だって、男子校に女の子が1人紛れ込んでるんだよ? 問題にならないわけないじゃん」


そこまで重大な問題とは思っていなかった夜月はケイトにそういわれ、なんだか申し訳なくなってきた。こんなことなら早めに打ち明けていたほうがよかったかも。そんな夜月に気づいてか、トレイが口を開いた。


「まあ、話はこれくらいにして。何かあったら遠慮なく頼ってくれ、1人じゃいろいろと大変だろ? あとこれ、お詫びに受け取ってくれ」


トレイはそういって片手で箱を掲げた。それを受け取り開けてみると、そこにはケーキが入っていた。「お、美味しそう・・・・・・!」以前とはまた違うチーズケーキだ。香りからしてキャラメルがかかっているみたい。


「ありがとう。せっかくだから、みんなで食べましょう」
「ああ、そうだな」


二度手間になるが寮に戻るかというトレイに従い、再びハーツラビュル寮に戻ることにした。あいにくオンボロ寮にはそんなに食器の数がない。夜月はケーキを抱え、オンボロ寮を後にした。

この日以降、やけにハーツラビュル寮の彼らが過保護になったのは言うまでもない。