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xviii


レオナはチェカを連れて保健室を立ち去り、ラギーも寮へと帰っていく。エースやデュースもそれに続いて寮へと帰ろうとした。夜月もベッドから出て帰ろうとすると「送ってく。こんな時間だし、怪我もしてるしな」とジャックが気遣って声をかけた。大丈夫だと伝えたが送っていくと言い張るジャックに甘え、夜月はエースたちと別れジャックと一緒にオンボロ寮へと向かった。グリムは早く帰って寝たいと言って一人で帰って行ってしまった。


「ごめんね、送ってもらっちゃって」
「ウォーキングついでに言っただけだ、気にすんな」
「ジャックは優しいね」
「べ、別にそんなんじゃ・・・・・・!」


夜月の言葉にジャックは目を泳がしそっぽを向いてしまった。そんな素振りに夜月は笑みを浮かべる。暗い道を2人で何も話すことなく歩いていく。静かに吹く風が少し冷たい。沈黙が続き、何か話をしようと夜月はジャックを見上げた。


「あの――――わっ!?」
「――!? 大丈夫か!?」


声をかけた次には、夜月は道端の出っ張りに足をかけて躓いた。咄嗟にジャックが夜月の身体を支えてくれたことで、なんとか転ぶことは免れた。「ごめんなさい、躓いちゃって」ジャックの手を取って体勢を整える。「あんま無理すんなよ。なんならおぶって行くが」転びそうになった夜月を気遣って提案するが「本当に大丈夫だよ。ありがとう、ジャック」夜月は首を振って断った。「この辺は明かりがないし暗いからな。気を付けろよ」注意を促して再び歩き出す。心なしか歩くスピードが落ちた気がする。


「やっぱり、聴覚や臭覚と同じように視力もいいの?」
「そうだな。他の奴らよりはいいと思う、夜目もきくしな」
「へえ」


やはり獣人は半分獣であるため、人間より五感がいいみたいだ。夜月は感嘆の声を漏らした。人とは違う感覚を持っているというのは、少し気になる。歩きながら他愛のない会話を続けていると、あっという間にオンボロ寮の目の前まで来ていた。


「此処まででいいよ。ありがとう、ジャック」


オンボロ寮が見えたところで夜月はそういう。おやすみと告げて寮へと向かおうとしたとき、ジャックは夜月を呼び止めた。どうしたのと聞くが、ジャックはいつの日かのように言葉を探してしどろもどろになっていた。


「・・・・・・この先、なんかあったら俺を頼れ」
「え?」
おんなひとりじゃ何かと大変だろうし、問題もあるだろ。俺なら事情も知ってるし」


気恥ずかしさを隠すように、ジャックは頭をかく。自分のことを気遣ってくれているという事実に、夜月は嬉しくなった。「うん、助かるよ」教師たちは知っているが、いつも頼れるわけでもない。一緒にいる時間の多い友人たちを頼れるというのは、心強かった。


「それじゃあ、おやすみなさい」
「ああ、また明日な」


夜月はジャックと別れ、オンボロ寮へと向かう。ジャックはしっかりと寮へと入った夜月の姿を確認してから踵を返し、自分の寮へと戻っていった。