×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






xvi


「オイ、起きろ!!」
「――――あ?」


レオナが目を開けると、そこには自分を覗き込む小さい動物がいた。「ずっと気絶したままだったらどうしようかと思ったんだゾ!」グリムがそういい放つ横では「よかったあ・・・・・・」と安堵する夜月が覗き込んでいた。「さあ、早く今までの事件が自分が企てましたと自白しろ」目を覚ましたレオナにグリムは事を急かす。「なに・・・・・・なんだって?」状況が理解できず、自分を覗き込む彼らを目でキョロキョロと追いながらレオナは問いかける。


「貴方はブロットの負のエネルギーに取り込まれて暴走し、オーバーブロットしてしまったのです。覚えていませんか?」
「この俺が暴走して・・・・・・オーバーブロット? 嘘だろ・・・・・・」


起き上がると、話を聞きつけて来たクロウリーが説明した。レオナは信じられないと目を丸くして驚いていた。「オマエが自白してくんねーと、オレ様がご褒美に試合に出してもらえねぇんだゾ!」グリムは早くしろとレオナを急かす。「こいつら、学園長にマジカルシフト大会に出してもらうことを条件に先輩たちを追ってたんス」意味の分からないレオナのために、ジャックがグリムと夜月の事情を話す。「えぇ? そ、そんなことのためにッスか?」ラギーは声を上げた。「私は遠慮したいんだけど、グリムがね・・・・・・」夜月はため息交じりに頷いた。


「今までの連続傷害事件は君たちがやっていたということで間違いありませんね?」
「・・・・・・あぁ、そうだ」


諦めかどうでもよくなったのか、レオナは頷いてそれを認めた。クロウリーはサバナクロー寮は今回の大会を失格とし、今後の処分は被害者の人たちと話し合ったうえで決定することを告げる。「・・・・・・わかった」素直にそれを受け入れるレオナ。「学園長、待ってください」しかしリドルがそこで声を上げた。リドルの背後にはトレイやジャミルなど、被害者たちの顔ぶれがそろっていた。


「今回の大会、どうかサバナクロー寮を失格にせず出場させてくれませんか
「なんですって? 彼らを許すと?」
「アンタたち・・・・・・」
「いいや、許すわけじゃない」
「サバナクロー寮に欠場されると、気兼ねなく仕返しできないからな」


トレイとジャミルは口端をニッと上げ怪しく嗤う。「え、ええっ!?」「仕返しだと!?」ラギーとジャックは声を上げる。学園内での魔法による私闘は禁じられている。だがマジカルシフトはれっきとしたスポーツであり、気兼ねなく魔法を使える。「ただし、別名・魔法力を全会背戦うフィールドの格闘技・・・・・・だけどな」トレイは笑って言う。「何があったかは知らないが、サバナクロー寮のほうが俺たちよりボロボロみたいだしな」ジャミルも続ける。「君たちの気持ちは分かりました」クロウリーは頷く。


「しかし、この状態でサバナクロー寮生たちが試合に出られるかどうか。とくにキングスカラーくんは経っているのもやっとの状態では?」
「ふ、ははは! ナメるなよ、クロウリー。手負いの草食動物を仕留めるなんて、昼寝しながらだって出来る」


「俺は謝るつもりは毛頭ないぜ。この俺に謝らせたい奴は力づくで謝らせてみろ」レオナはいつものように笑みを深めた。「ってわけで、いいですよね?」と聞くトレイに「いいでしょう。予定通りサバナクロー寮の大会出場を許可します」とクロウリーは許可を出した。「学園としても、大会当日にこのような不祥事が世界中に生中継されるのは避けたいところですしね」ポツリと小さく零すクロウリーに「そういう大人の事情は聞こえないように言ってください」と聞こえてしまった夜月は釘を刺し、コホンと咳払いをする。


「じゃあ、行くか・・・・・・っ、ぐ、痛ってぇ・・・・・・」
「・・・・・・一度、空いた時間に保健室には行ったほうが良いと思いますよ」
「・・・・・・」


立ち上がったレオナは全身に響く痛みに顔を歪める。そばにいた夜月が保健室に行った方がいいと勧めるが、レオナは瞳を向けるだけで何も答えなかった。

「オレ、アンタのこと許したわけじゃねーからな」ムッとした顔でラギーは言う。「あぁ、そうかよ」レオナは普段通りに投げ捨てた。「でも・・・・・・何でッスかね。そんなふうに情けない顔したアンタは、見たくねーなって思っちゃうんスよね」ラギーは少し感慨深げに呟いた。「アンタはいつもみたいにふんぞり返って、ニヤニヤしてるほうがお似合いッス。そら、『愚者の行進ラフ・ウィズ・ミー!』」


「ひってぇ! おいふぇめぇ、らふぃー!」
「シシシッ! おふぇ、いっふぁいあんらにこれやっれみたふぁったっふ」
「ひまふぐふぁめろ!」


ラギーのユニーク魔法によってレオナはラギーと同じ顔をする。見たことないぐらいのいい笑顔をしている。「何やってんだ、あんたら・・・・・・フッ」2人の様子を見て呆れた顔を見せるがジャックは小さく笑った。「ふふ、変な光景」夜月も続けてクスクスと笑みをこぼす。「一件落着だね」という夜月に「ああ、あんたたちには世話になった」とジャックは笑みを浮かべながら告げる。「こちらこそありがとう、ジャック」これで事件も解決し、一安心だ。


「なあなあ学園長! コレで約束通り試合に出してくれるんだろーな!?」
「え!? あ〜・・・・・・っと、そんな約束してましたねぇ」


グリムの言葉にクロウリーは視線を泳がせる。以前のように絶対無理だと思って、すでにトーナメント表を発表してしまったという。「そうだ! エキシビジョンマッチで特別枠というのはいかがです?」とグリムに提案する。「トーナメント本線が始まる前に、余興として行えば問題ありません。きっと目立ちますよぉ〜!」と煽るクロウリーに「目立つ!?」と目を輝かせて食いつく。「でも補填メンバーは? 対戦相手だっていないでしょう?」夜月としては出場せず見学をしていたい。その意を込めて聞いてみると。


「話は聞かせてもらったぜ」
「その助っ人の件、僕たちが請け負おう」


いつの間にか戻ってきていたエースとデュースが2人して声を上げる。「何を言ってるんだい? キミたちはハーツラビュル寮の所属じゃないか」リドルはそういうが「大会のルールに『他の寮のチームに入っちゃいけません』なんて書いてねーもん」とエースが上手く言いくるめる。確かにどこにもそんなことは書いていないが、なんという悪知恵だ。「なにそれ、面白そう! オレもヨヅキちゃんのチーム入りたいな〜」それを聞き、ケイトも出たいというがそもそもケイトはハーツラビュル寮の選手だとリドルに怒られる。


「対戦相手がいねぇなら、俺たちサバナクローが相手になるぜ」
「ふなッ? オマエらが?」
「なーんだ。お前案外良いヤツじゃん」
「か、勘違いすんじゃねぇ。借りをさっさとチャラにしちまいたいだけだ!」


あと3名選手が集まれば試合ができるというクロウリー。「どうせあと3人必要なら私は見学させてもらいます」結局3人必要なら1人増えたところでそう変わらない。見学を申し出る夜月にジャックは「お前、出ないのか・・・・・・」とあからさまに尻尾と耳を下げる。無意識なのか知らないが、しゅんとした姿にうっ、と小さく零す。「運動苦手なんだ・・・・・・」そう続けた夜月に「オレを追いかけてるときもヘトヘトでしたもんねぇ」といつの日かを思い出してラギーが笑う。「そんなこと言わずに、お前も出よーぜ」エースは夜月の肩に腕をまわす。「ヨヅキがいなかったら、誰が僕たちの司令塔をするんだ」さも当たり前のようにデュースが言う。「へえ、俺と張り合おうってのか?」と口端を上げ目を細めるレオナに慌てて手を上げ首を振る。「い、いや、そんな・・・・・・2人とも!」なんて余計なことを言うんだ。彼は天才司令塔とまで言われているのに。


「んで、残りはどうするんだゾ」
「はぁ・・・・・・オンボロ寮に住んでるゴーストなんていいんじゃない? ちょうど3人いた」
「えぇっ? ゴーストのみなさんを選手に登録するってことですか!?」
「『ゴーストの参加は不可』だなんてどこにも書いていないでしょう?」


エースの真似をしてクロウリーに言ってやる。結局参加することになってしまった。「名案なんだゾ! オレ様、呼んでくる!」グリムは嬉々としてすぐさまオンボロ寮まで駆けていく。そんな姿を見て、グリムが楽しそうなら今回ばかりは良いかと自分を納得させた。「ったく、なんでもありだな・・・・・・」呟くジャックに「ま、いーんじゃない? 夜月なんて選手なのに魔法が使えないんだぜ」とエースはニヤつきながら夜月を見た。「それなら見学させてよ、もう・・・・・・」何故魔法も使えないのに魔法のスポーツに出なければいけないんだ、と肩を落とす。


「ヨヅキ、行くぞ」
「うん。お互い頑張ろうね、ジャック」


もうすぐマジカルシフト大会が始まる。コロシアムに向かうようにというクロウリーの言葉に従い、彼らはその場を後にした。