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xv


「ガアアアァアアッ!」


黒く染まったレオナはまるで凶暴な猛獣のごとく咆哮した。レオナの背後には巨大な影がそびえたつ。大きな大きなライオンのようにそれは見えた。「なんだ、ありゃぁ・・・・・・!?」変わり果てた姿を見たジャックは驚きに声を上げた。「アイツ、リドルみてぇに闇落ちバーサーカー状態になっちまったのか!?」グリムの言う通りだ。レオナは以前のリドルのようにオーバーブロットしてしまった。「早く止めないと、レオナさんの身体が!」以前クロウリーから聞いた話を思い出す。このままではレオナの命に関わる。


「くっ・・・・・・立てるものは自力で待避! エース、デュースは怪我人を連れて外へ」
「「はい!」」
「リリア先輩、先生たちに救援を頼みます!」
「あいわかった。しばし持ちこたえよ」


咆哮を上げるレオナ。それにリドルたちは対峙する。「なんでこんな怖い目にばっか合うの? オレ、こういうの向いてないんだけど!」ケイトはレオナを目の前に弱音を吐く。「怖いなら逃げてもかまわないよ」リドルは目の前を見据えたままケイトに告げる。「リドルくん置いて逃げたら、トレイくんに後でボコられちゃう。お供しますよ、寮長」ケイトはそういってマジカルペンを手にする。「よくわからねぇが、レオナ先輩をぶん殴って正気に戻せばいいんだな?」


「オ・・・・・・オレも、手伝うッス・・・・・・ゴホッ・・・・・・あそこまで言われて寝てられるかってんだ・・・・・・」
「でも怪我が・・・・・・ッ!」
「これくらい、どうってことないッスよ・・・・・・」


夜月に支えられながら身を横にしていたラギーはそういって起き上がろうとする。すぐに夜月が止めようとしたが大丈夫だと苦しいのに口端をあげながら言う。ラギーは庇う夜月の肩を押しのけ、立ち上がる。

「ハイエナ風情が俺に刃向かおうってのか?」立ち上がったラギーをレオナは見た。「ハハハ・・・・・・笑えねぇ冗談だ。全員明日の朝日は拝めないと思え!」嘲笑し、鋭い瞳で睨みつける。


「ヨヅキちゃん、悪いけど、今回もオレたちに指示を頂戴!」
「君の指示は的確だ。なるべく被害が向かないようボクたちが援護する。頼んだよ、ヨヅキ」


背後にいた夜月にケイトとリドルは言う。夜月の指示の的確さはリドルの一件や日々の日常で知っている。夜月は2人の言葉に強く返事を返し、前を見据えた。


「覆せない世界など、すべて砂に変えてやる・・・・・・! 全部無意味だ・・・・・・何もかも!」


マジカルペンを構え、対峙するリドルたちを凄む。


「ラギー先輩、さっさとレオナ先輩を正気に戻しましょう!」
「そんなの、言われなくてもわかってるッスよ!」


それを合図に、オーバーブロットしたレオナを止めるため4人は魔法を放ち始めた。リドルの一件でも分かったが、オーバーブロットをして魔力のコントロールができていないために放たれる魔法の威力は凄いものだ。心なしかレオナの攻撃リドルより強く思える。
「くっ・・・・・・強い!」レオナの攻撃をかわしながらジャックが眉間にしわを寄せる。「こんなに強ぇのに、なんでアンタは全部諦めちまったんだ・・・・・・ッ!」ジャックは叫ぶ。「うぜぇんだよ、どいつもこいつも・・・・・・全部砂になっちまえ!!」レオナの咆哮とともに、強力な魔法が放たれ砂や細かい瓦礫が飛び交った。


「ッ! しまったッ!?」
「ヨヅキちゃん!!」
「避けろッ!!」


背後に控えていた夜月に向かって流れ弾が飛ぶ。高速で迫りくるそれを目の前に、夜月にはまるでその一瞬がスローモーションのように見えていた。頭ではわかっていた。脳では理解していた。けれど身体が固まって動かない。目の前に迫りくるそれに、彼らの叫ぶ声を聞きながら強く目をつむった。けれど痛みは一向になく、かわりに浮遊感に襲われた。


「ッ! ラギー先輩!?」
「っもう、突っ立てるだけじゃなくてちゃんと動いてくれなきゃ困るッスよ!」


ラギーは目をつむった夜月を横抱きに抱え、間一髪で流れ弾を避けた。すぐ後ろで流れ弾がぶつかって爆発する。飛び散る破片で頬に一線赤い傷を作ってしまったが、ラギーのおかげで命を救われた。


「ほら、ちゃんと指示出してくださいよ。じゃないと、オレら動けないでしょ?」


夜月を下ろしたラギーはそう言って、いつもみたくシシシと笑みを浮かべる。はい、と返事をして夜月は再び暴走したレオナを見据える。


「俺が・・・・・・王・・・・・・に・・・・・・」


最期にレオナは、そう悲痛の叫びをこぼし意識を手放した。