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「ぜー、はー、な、なんなのアイツ!? めちゃくちゃすばしっこい!」
「も、もう、むり・・・・・・つかれた・・・・・・」
「はぁ、ただ足が速い、というより、はぁ、高低差を飛び越える能力が尋常じゃないな」
「ふなぁあぁ・・・・・・」
「シシシ! こんなんスラムの裏道に比べたら余裕ッスよ」


ラギーを追いかけていつの間にか中庭まで来てしまっていた。ラギーは全然疲れていないのに、エースたちは息を切らして立ち止まってしまっていた。運動のできない夜月や体の小さいグリムに至っては、疲れ切ってその場に座り込んでしまう。

「つかさぁ、もしここでオレを捕まえたってアンタらオレが犯人って言いきれなくないッスか?」息を切らす4人を見てラギーは余裕そうに言う。「なんだと?」デュースが眉をひそめた。「だって、オレが怪我させたって証拠、ないッスよね。誰かオレが魔法使ってるとこ見たんスか?」


「そんで、それ写真に撮ったりしたんスか? してないッスよねぇ?」
「うぐっ・・・・・・そ、それは」
「た、確かに・・・・・・うぅ、卑怯・・・・・・」


証拠もない状態では捕まえられない。「卑怯者? 誉め言葉ッスわ」ラギーは目を細める。「んじゃ、今日の追いかけっこはここまで。さっき盗ったマジカルペンはここに置いとくッスよ。ばいばーい」ラギーはその場にリドルとケイトのマジカルペンを置き、手を振って立ち去っていく。


「くっそ〜! 腹立つ〜!」
「結局また一からか・・・・・・」
「ローズハート寮長に首をはねられる・・・・・・」


はあ、とため息を吐き出す。「テメェら、まだ懲りずに犯人探しやってんのか」すると木の陰からジャックが姿を現してそんなことを聞いてきた。「んだよ、見てたんなら手伝えよな。おたくんとこの先輩、超悪いヤツなんですけど?」エースはムッとした顔で言い放つ。ジャックは少し間を置いた後に「お前ら、何故そんなに他人のために必死になれる?」と問いかけた。「他人のため?」デュースは不思議そうに聞き返す。「怪我したダチの仇討とうって気持ちは分からなくもねぇが・・・・・・」と続けるジャックにエースは「は? 何言ってんの?」と言い、意地悪な表情を浮かべた。


「だーれが他人のためなんかにやるかっつーの」
「僕たちはこの事件の犯人を捕まえて手柄を立てたいだけだ」
「オレ様だって、絶対アイツを捕まえてテレビに映ってやるんだゾ!」


あくまで自分のため。他人のためなんかではさらさらない。「案外冷たいよね」そんな3人に苦笑しながら言えば「お前だって学園長にこんなの頼まれなきゃやってねえだろ?」とエースが同意を求める。「まあ、面倒ごとは避けたいからね」私も私か、と夜月は頷いた。


「ハッ! お前ら、思ってたより酷ぇ奴らだな」
「オレらよりお前のほうがひでーじゃん。その様子じゃ知ってたんだろ?」
「あっ! そうか、同じ寮だから『自分は狙われない』って言ったのか?」


「オイ、テメェら。俺と勝負しろ」突然、ジャックは言い出す。「テメェらは口だけの輩じゃないとオレに証明出来たら、俺の知ってる話を教えてやってもいい」これは情報を聞き出す好機かもしれない。けれどそういった勝負はあまりしたくはない。「げっ。オレそういう汗臭いの苦手なんだけど」エースも嫌そうな顔をしたが「俺はそういうの嫌いじゃねぇぞ。分かりやすくていいじゃねぇか!」デュースに至ってはニヤリと口端を上げていた。同じ属性ということか。どうしていつも面倒なことになるのだろうと思いながら、ジャックと勝負をする羽目となった。