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15


「『首をはねろオフ・ウィズ・ユアヘッド』!!」
「「うわあああ!!」」


魔法を具現化させる暇もなく、決闘の合図が放たれた瞬間にリドルは魔法を封じた。5秒ともかからずして、2人は手も足も出なかった。魔法の強さは、イマジネーションの強さ。魔法の効果を正確に思い描く力が強いほど、正確性も強さも増す。「ローズハートくんはますます魔法に磨きがかかっていますね」クロウリーは誇らしげに笑う。


「その程度の実力で、よくボクに挑もうと思ったものだ。恥ずかしくないの?」


「やっぱりルールを破るやつは、何をやってもダメ。お母様の言うとおりだ」リドルはきつく2人を睨みながら納得するように小さく零す。「たしかに、ルールは守るべきだ。でも無茶苦茶なルールを押し付けるのはただの横暴だ!」デュースは声を荒げる。「ルールを破れば罰がある。そして、この寮ではボクがルールだ」リドルは強く言いやった。デュースの言葉の通りだ、こんなの横暴だ。守れないルールに、ルールとしての価値はない。


「だから、ボクが決めたことに従えない奴は首をはねられたって文句は言えないんだよ!」
「でも、だからって。ルールだからと何をしてもいいわけじゃない。意味のないルールには、何の意味も持たない」
「罰則もないルールなんか、誰も従わない!」


「そんな簡単なこともわからないなんて、キミは一体どんな教育を受けてきたの?」外野から声を上げた夜月に視線を移し、リドルは鼻で笑うように続ける。


「どうせ大した魔法も使えない親から生まれて、この学園に入るまでろくな教育も受けられなかったんだろう。実に不憫だ」
「・・・・・・っ」
「・・・・・・テメッ・・・・・・」
「ふざっけんなよ!!!」


「え・・・・・・っ?」エースが声を荒げ、目の前の光景に目を見開く。エースが思い切りリドルに殴りかかっていた。「リドル!?」「リドルくん!?」「ローズハートくん!?」それを見て周りの人も驚愕した。
「エ、エース!?」デュースが慌てる。「エース!? なにしてるの!?」夜月も慌ててエースに詰め寄ろうとした。「あー、もういい。寮長とか、決闘とか、どうでもいいわ」エースはぼやくように告げ、静かに怒りを露わにしていた。「子どもは親のトロフィーじゃねーし、子どものデキが親の価値を決めるわけでもないでしょ」リドルをまっすぐと見つめ、エースは続ける。


「お前がそんなクソ野郎なのは親のせいでもなんでもねー。この学園に来てから1年、お前の横暴さを注意してくれるダチの1人も作れなかった、てめーのせいだ!」


「何・・・・・・を、言ってるんだ?」いまだ自分が殴られたという事実に追い付いていないのか、リドルは目を丸くしてエースを見上げていた。「何が赤き支配者だ! お前は魔法が強いだけの、ただの赤ちゃんだ!」しかしエースの言葉で状況を読み込めたのか、リドルは唇を噛む。「ボクのこと何も知らないくせに!」


「あんな態度でわかると思うか? 甘えてんじゃねーよ!」
「お母様は正しいんだ! だからボクも絶対に正しいんだ!!」


うるさい、うるさい。黙れとリドルは続ける。冷静なリドルが取り乱していた。「リドル、落ち着け。決闘はもう終わってる!」その様子にトレイはなんとか落ち着かせようと声をかける。「挑戦者は暴力行為で失格。これ以上は校則違反になりますよ!」トレイに賛成し、クロウリーも止めにかかる。


「新入生の言うとおりだ! もうううんざりなんだよ!」
「うっ!?」
「・・・・・・え、なに・・・・・・?」


ハーツラビュル寮生の誰かが、リドルに卵を投げつけた。「誰だ! ボクに卵を投げたやつは!」周りを見渡しながら言う。誰も何も答えず、この状況に固唾をのみこんでいた。「どいつもこいつも、自分勝手な馬鹿ばっかり! いいだろう、連帯責任だ!」リドルは立ち上がる。


「全員の首をはねてやる! 『首をはねろオフ・ウィズ・ユアヘッド』!!」


その瞬間、ハーツラビュル寮生のほとんどの人がリドルによって首輪を嵌められた。魔法を封じられ、慌てふためく彼ら。「アハハハ! どうだ! やっぱりルールを厳守するボクが一番正しいんだ!」リドルは高笑いをする。「おやめなさい、ローズハートくん!」クロウリーは止めようとするが、リドルの耳には届かない。
「トレイ、これヤバイよ。あんなに魔法を連発したら・・・・・・」ケイトがいつもの様子とは一変し、至極真剣に言う。「くっ! リドル! もうやめろ!」それはトレイにもわかっていた。


「そうやってすぐ癇癪起こすとこが赤ん坊だっつってんの!」
「今すぐ撤回しろ! 串刺しにされたいのか!」
「やだね、絶っ対にしねえ」


「うぎぃぃぃぃ!!!」リドルは顔を真っ赤にして怒り狂う。するとリドルの魔法なのか、庭中の薔薇の木が浮き上がった。根っこから引き抜かれた薔薇の木は空中に浮き、薔薇の迷路は酷い有様だ。


「薔薇の木よ、あいつの身体をバラバラにしてしまえーー!!」
「いけない!」
「エースっ!!」
「・・・・・・ッ!!」


リドルの命令で薔薇の木々はエースに向かって一直線に飛んでいく。あんな速さで飛び込んでくれば避けられるわけがない。エースは固く目をつむり身体をこわばらせた。しかしその瞬間、薔薇の木がすべてトランプに変化した。「リドル、もうやめろ!」トレイがリドルに叫ぶ。「トレイの『ドゥードゥル・スート』!?」トランプに変化した薔薇の木を見て、ケイトが目を見開く。首輪も外れていた。


「言っただろ。俺の『ドゥードゥル・スート』は少しの間だけならどんな要素も上書きすることもできる」


「だから・・・・・・リドルの魔法を俺の魔法で上書きした」「そんなんあり!?」ケイトは驚愕する。上書きできる要素はなんでもいい。短時間しか持続しないが、それは強い力だった。「首をはねろったら! 何でトランプしか出てこないんだよぉ!」何度魔法を唱えても自分の魔法が具現化せず、トランプにかわっていく。


「リドル、もうやめろ。これ以上はお前が孤立していくだけだ! みんなの顔を見てみろ!」


トレイの言葉にリドルが周りに目を向けた。周りの人間はすっかりリドルに怯え切っていた。「キミもボクが間違ってるって言いたいの? ずっと厳しいルールを守って頑張ってきたのに!」リドルは泣きそうになりながらトレイに訴える。「いっぱいいっぱい我慢したのに! ボクは・・・・・・信じないぞ!!」叫ぶリドルはどこか痛々しかった。「いけません! それ以上魔法を使えば、魔法石が『ブロット』に染まり切ってしまう!」その様子を見て、クロウリーは慌てて声を上げる。


「ボクこそが!! 絶対、絶対、正しいんだーーーー!!!!」


赤い赤い魔法石が、黒く染まった――