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XII


「――エッ!? 本当にドワーフ鉱山へ行ったんですか?」


鏡の間へと戻ってがクロウリーに魔法石を差し出すと、そんなことを言いだした。みんな声をそろえて短く言葉を零す。どうやら本当に行くとは思ってもいなかったみたいで、粛々と退学手続きを進めていたという。教育者として、それはどうなのだろう。

それから学園長室へと場所を移し、ドワーフ鉱山での出来事をありありと説明した。炭鉱に住み着いた謎のモンスター。それを4人で協力して倒し、魔法石を手に入れ学園に戻ってきたと。


「お、おお・・・・・・! ナイトレイブンカレッジ生同士が手と手を取り合って敵に立ち向かい打ち勝つ日がくるなんて!」
「そこまで感動するかな・・・・・・?」
「んなっ!? 僕はこいつと手なんかつないでいません!」
「つーか学園長、歳いくつ!?」


大きく、大げさではないかと言いたいほど、クロウリーは猛烈に感動していた。それを眺めていれば「今回の件で確信しました」と夜月に視線を向けた。「ユウくん。貴方には間違いなく猛獣使い的才能がある!」いったいどんな才能だというんだ。あまりうれしくない。

ナイトレイブンカレッジの生徒たちはみんな、闇の鏡に選ばれた優秀な魔法士の卵。それゆえに、優秀がゆえにプライドが高く我も強い。他人と協力するという考えをも陣も持たない個人主義かつ自己中心的な者が多い。
話を聞いていても、よほど生徒たちに苦労をしているのがわかる。すこし夜月は同情した。


「ユウくん、貴方にナイトレイブンカレッジの生徒として学園に通う資格を与えます!」


クロウリーの言葉に思わず全員が声を上げて驚いた。一番驚いているのは夜月自身だ。「魔法が使えないのに、ですか?」おするおそる聞いてみると「えぇ。何せ私、とびきり優しいので」とニコリと笑顔を向ける。しかし夜月には魔法が使えない。満足に授業さえも受けられない。そこでクロウリーはグリムと2人で1人の生徒として在籍することを認められた。喜ぶグリムに「よかったね、グリム」と笑いかけた。

クロウリーはグリムの首に魔法石のぶら下がったリボンの首輪をつけた。そして釘をさすようにグリムをしっかりと監督するようにと口に出す。


「すげーじゃん、お前。入学したばっかで、もう監督生になっちゃったわけ?」
「そうか、お前たちの寮は2人だけだからな。グリムの監督を任されたお前が監督生ってことになるな」


そうなるのだろうか。「前代未聞じゃん。いいね、クールじゃん。魔法が使えない監督生!」エースはそういって笑いかけてくれた。「うーん、あまり自信ないな・・・・・・」先の不安を抱えて呟くと「ドワーフ鉱山での気合はどうした?」とデュースが元気づけてくれる。

そしてクロウリーは『ゴーストカメラ』というカメラを夜月に手渡した。カメラには魔法が施されていて、被写体の姿だけではなく、魂の一部をも写し取ることができるらしい。撮影者と被写体の魂の結びつきが深くなると、写真に写された『メモリー』が飛び出してくるという。これを使ってグリムや生徒たちを撮影し、学園生活の記録を残すよう言いつける。


「さて、今日はもう遅い。詳しい話は明日にしましょう」
「ありがとうございます」


4人は学園長室を後にした。