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28


「さあ、宴の準備は整った。みんな好きなだけ食って、歌って、踊って、今年の嫌なこと全部忘れちまおう!」


パレードをしながらオアシスへと向かうと大騒ぎの宴が始まった。「ほら、ジャミルもこっちで踊ろうぜ!」音楽が流れるなかへカリムはジャミルを引っ張っていく。「お、俺はいいから・・・・・・!」カリムに引かれるまま、ジャミルは踊りの輪の中へ入っていく。「おふたりともお上手ですね。アズールも踊りを教えていただいては?」それを眺めていたジェイドがアズールを揶揄うように言う。「やめてください。人魚にはハードルが高すぎます」アズールはそう言って首を振る。「オレも踊る〜!」フロイドは楽しそうに自らその輪へ入っていった。

それを眺めていると、ふと何かの声が耳に入った。「・・・・・・ん? いま、声しなかった?」辺りを見渡しつつ、グリムに聞く。「砂漠の向こうから、誰か走ってくるんだゾ」砂漠の向こうに何かを見つけたグリムが指をさしてそう言った。


「お〜い、ヨヅキ〜! グリム〜!」
「お前たち、無事か!?」
「エースに、デュース!?」
「な、なんでふたりが・・・・・・!?」


砂漠の向こうから走ってきたのはエースとデュースだった。「はあ、はあ・・・・・・なにここ、めっちゃ熱い。真夏かよ!」夜月の前まで来ると、息を整えつつ汗を拭った。「2人ともどうしたの、実家に帰省してたんじゃ・・・・・・」目を丸くして2人を見る。「どうしたの、じゃねーっつの。お前らこそどうしちゃったわけ?」息を整えたエースが言う。「『スカラビアに監禁されてる!』なんてメッセージが届いたと思ったら、メッセも通話も通じなくなって・・・・・・」膝に手をついて息を整えながらデュースが話した。

来てくれた・・・・・・たった一言連絡しただけなのに。此処に来ても、エースとデュースには何の得もしないで、ただ厄介ごとに巻き込まれるだけなのに。どうしよう・・・・・・たまらなく嬉しい。


「役に立たないとは思ってたけど、本当に全部解決してから来たんだゾ」
「はぁ〜!? こっちはなー、扉が開いてないから魔法でワープできなくて公共の交通機関乗り継いで学園まで戻ってきたんだからな!」
「よくわからないが・・・・・・この楽し気な様子を見る限り、危機的状況ってわけじゃなさそうだ」


「なんだ? ヨヅキたちの友達か?」現れた2人と夜月を交代にカリムは見やる。「あ、カニちゃんじゃん。遊びに来たの?」エースに気づいたフロイドが言う。カニという単語にデュースと夜月がエースに視線を向ける。「あー、フロイド先輩は同じバスケ部で・・・・・・ジャミル先輩も同じ部活なんだけど」エースがそう言うと「おお! そうかそうか、ジャミルの友達ならオレの友達だな!」とカリムは飛躍的なことを言いだす。「おい、何度も言うが俺はお前と友達になったつもりは・・・・・・はぁ、聞いてないな」ジャミルは否定するが、聞かないカリムにまた深いため息を落とす。

「とにかく、せっかく来たんだ。お前らもホリデーの宴に参加していけよ!」カリムは2人を宴に誘う。「こちらにピザやパスタもありますよ」「お飲み物はどうされますか?」ジェイドとアズールはそう言って食べ物や飲み物を差し出す。「げげっ、オクタヴィネルの奴ら!」2人の姿を見て、エースとデュースは顔を強張らせる。「お前たち、なんであいつらと一緒にいるんだ?」デュースがこそっと夜月やグリムに耳打ちする。「お前がいない間、オレ様たちそりゃもう大変な目に遭ったんだゾ! グリム様の武勇伝を聞かせてやるから、そこに座れ!」グリムはそう言って腰に手を当ててエースとデュースに言う。


「なんだそりゃ・・・・・・ま、無事だったならいいけどさ」
「まったく・・・・・・人騒がせなヤツらだ」


エースとデュースは安心したように微笑んだ。「心配して来てくれて、ありがとう」嬉しさで頬が緩んでしまうのを抑えながら言う。「別に? 実家にいてもゲームくらいしかやることなくて暇だったし・・・・・・」エースは頬を指で掻く。「いつでもメッセージしてこいと言った手前、無視もできないからな」デュースはそう言って腕を組んだ。「素直じゃねぇヤツらなんだゾ」そんな2人を見てグリムはジト目で見た。

夜月は片手ずつにエースとデュースの手を取ってギュっと握った。嬉しい、本当にうれしくてたまらない。こんなの初めてだ。押さえていても頬が緩んでしまう。「え、な、なに?」エースは突然の夜月の行動に目を丸くし「ヨヅキ? どうかしたのか?」デュースは顔を俯きがちにする夜月を心配するように声をかける。

「本当に、ありがとう、来てくれて。すごくうれしい」ギュっと2人の手を握る。「いつも一緒にいてくれた2人がいなかったら、心細くて。だからほんとうに嬉しい」なんだろう、いま凄く嬉しくて、言葉が出てこない。


「ほんとうに、ありがとう。エース、デュース」


「――っ!」嬉しそうに頬を緩ませ顔をほころばせて笑う夜月を見て、エースとデュースは顔を赤く染めて息をのんだ。嬉しそうにする目の前の夜月を見下ろした後、顔を赤くした2人は顔を見合わせ、くすっと笑みを零した。「ったく、心配させやがって。怪我してねぇだろうな」わしゃわしゃと握られていないほうの手でエースは夜月の頭を撫でる。「お前が無事で僕も安心した。次はもっと早く駆けつけれるように努力する」デュースは握られた手をギュっと握り返す。夜月はうん、うん、と2人の言葉に頷いた。


「よーし、それじゃあ宴の再開だ! ありったけの料理と音楽を! 今日は最高のホリデーにするぞー!」


今日は最高の日かもしれない、夜月は秘かにそう思った。