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26


なんとかジャミルのオーバーブロットを止めることはできた。赤黒い空模様は消え、いつものスカラビアの空模様に戻った。意識を失ったジャミルを寝かせ、カリムは何度もジャミルを覗き込んで名前を呼んだ。「う・・・・・・ここは・・・・・・」ふと、ジャミルの瞼が上がった。「良かった。なんとか正気を取り戻したようですね」目が覚めたジャミルを見てアズールが一安心する。


「じゃ、じゃびる・・・・・・うぉおおええああわああん!!!」


カリムはジャミルが目を覚ました途端、子どものように大泣きしてジャミルに泣きついた。「ラッコちゃん、全然喋れてねーじゃん」それを見てフロイドが笑う。「一発殴ってやると言っていたのもすっかり忘れていますね」ジェイドも微笑ましそうに眺めた。

「い、生きててよかった・・・・・・いぎででよがっだ・・・・・・」ぐずぐずに泣いてジャミルに抱き着くカリム。「・・・・・・お前はどうしてそう・・・・・・はぁ〜〜・・・・・・」そんなカリムを見下ろし、ジャミルは深くため息をついた。「オレ、オレ・・・・・・うっ、お前がどんな気持ちで過ごしてきた知らなかった。ずっと・・・・・・我慢させてたことも、ぜんぜん、知らなぐでっ・・・・・・」嗚咽交じりに言葉を吐くカリム。

「その結果が、この手酷い裏切りですよ」ジェイドが言う。「ウミヘビくんは内心はず〜っとラッコちゃんのことバカにしながら生きてたんだよ」フロイドが言う。「オマエら、オレ様より空気読まねぇんだゾ!」2人にグリムが言った。


「お前は、ひ、ひどいヤツだ・・・・・・だけど、やっぱりずっとオレを助けてくれたのも、お前なんだ」
「カリム・・・・・・」
「だからもう、今日からはやめよう。親の地位とか主従関係とか、そういうことで遠慮するのは」
「・・・・・・は?」


「今日からは、遠慮なしで本気で一番を奪い合うライバルになろう。改めて対等な立場で・・・・・・友達になろう、ジャミル」カリムは満面の笑みでジャミルに手を差し伸べる。「対等な立場で、友達に・・・・・・? ふ・・・・・・お前らしい結論だな、カリム」仕方ないようにジャミルはフッと笑う。「なら、対等な立場で言わせてほしい」


「絶っっっ対にお断りだ!!!」
「えっ」
「考えなしで大雑把、間抜けで不器用、超がつくほど能天気で傲慢、デリカシーゼロのボンボンが! そんなヤツと誰が好き好んで友達になんかなるか! 利害関係がないなら、お前とは1ミリたりとも関わり合いたくないね!」
「え、えぇ〜〜〜!? なんだよそれぇえ!?」


「なんか吹っ切れちまったのか、ズバズバキツいこと言いまくりなんだゾ」遠慮のしないジャミルの様子にグリムが呟いた。「本当はあんな性格だったんだ・・・・・・」相当ジャミルは猫を被っていたらしい。カリムとジャミルの様子に思わず苦笑いをした。「いいじゃありませんか。僕は今のジャミルさんのほうが好感が持てますよ」ふふっとアズールが笑う。

「実は僕、1年生の頃からずっとあなたのことが気になっていたんです」ジャミルは目立たな過ぎて逆に浮いた生徒だった。座学の成績も実技の成績も優れた成績を残さないが、同時にマイナス評価も残さない。わざと10段階5評価を取っているように見えた。その疑いが、夜月の話を聞いてピンときた。そしてマンカラをした際、ジャミルがフロイドの機嫌を損ねない程度に勝敗をコントロールしているのを見て、確信に変わった。

「僕の予感は正しかった。ジャミルさんの本来の能力は実に素晴らしいものです!」アズールの言葉に「だろ? だろ? やっぱジャミルはすごいヤツなんだよ!」とカリムは自分のことのように嬉しそうにする。


「どうです? これを機にオクタヴィネルに転寮して、僕と手を組んで一旗あげてみませんか?」
「絶対にお断りだ。大体なんなんだ、お前は。いきなり出てきてべらべらと・・・・・・胡散臭いんだよ!」


「今後ともお前とは永遠に友人なんかになりたくないね、アズール」ジャミルは嫌そうに言った。「おや、言われてしまいましたねぇ」ジェイドがそうアズールに目を向けた。「フフフ・・・・・・今回は僕の秘密コレクションに新たな真実が1つ追加されたことで良しとしましょう」アズールは含んだ笑みを浮かべる。「別名。他人の弱点コレクションね」続けてフロイドが言った。「フン、世界中に向けて明かされちまった秘密なんて、弱みでも何でもないだろ」全てを吹っ切ったようにジャミルは言う。


「もう、今日からは遠慮しない。カリムにも、お前らにも、誰にも。二度と勝ちを譲ってやる気はないからな」
「・・・・・・ああ! オレも絶対に負けないぜ!」


カリムはそう言ったジャミルを見て、とても嬉しそうに笑った。