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20


談話室から空き部屋に戻ってきた5人は、さっそくジェイドから話を聞いた。


「やはり、アズールの予想通りでした。おそらく――カリムさんは誰かに魔法で洗脳され、操られています」
「洗脳〜〜!?」


「ラギーさんのように身体を操る魔法とは別に、精神を乗っ取るタイプの催眠魔法も存在します」ジェイドは続ける。「しかし身体を操るものよりもかなり高度な技術と魔力を必要とするので、使用できる魔法士はかなり限られていますが・・・・・・」話に聞くと、かなり難しい魔法のようだ。「アズール並みの魔力とテクがないとやれないよね」フロイドの言葉に「僕でも難しいと思いますよ」とアズールは言った。

「でも、アズールみたいにスゴいヤツ、スカラビアにはいない気がするんだゾ」グリムは3人にそういった。飛びぬけて優秀な生徒がいるという話は聞いたことがない。「それはどうでしょう? 能ある鷹は爪を隠すといいますからね」アズールはグリムの言葉にそう返した。


「で、誰がなんのためにラッコちゃんを洗脳してんの?」
「残念ながら、それについては聞きだすことができませんでした」
「ジェイドのユニーク魔法でもわかんなかったってこと?」
「ジェイド先輩のユニーク魔法?」


そういえば、ジェイドのユニーク魔法だけまだ知らない。「・・・・・・フロイド。ユニーク魔法の内容を他人に明かすのは感心しないといつも言っているでしょう?」ジェイドがそう釘をさせば「・・・・・・ま、ヨヅキさんたちには種明かしをしてもいいんじゃありませんか?」アズールは魔法耐性のない人間には真実を知っていても防げるものではない、と続けた。「・・・・・・はぁ、仕方ありませんね」ジェイドは夜月に向き直り、話しだした。

ジェイドのユニーク魔法『かじとる歯ショック・ザ・ハート』は、一度だけ相手に真実を喋らせることができるらしい。しかし、同じ相手に使えるのは一度きり。一回きりの切り札だ。それに加え、魔法耐性が強い人やアズールのような用心深いタイプには効かないことがほとんど。かなり範囲が限定されたユニーク魔法だという。

カリムはあっさりとジェイドのユニーク魔法にかかってくれたが、洗脳した犯人については強い意志で口を閉ざしたという。絶対に言えない、約束をしたというカリムに、これ以上は聞きだせなかったとジェイドは話した。


「カリムさんの人情に、ジェイドのユニーク魔法が敗北したわけですね」
「非常に悔しいですが、そういうことですね」
「ラッコちゃんって超口が軽そうなのに、意外〜」


カリムにとって、それほど大切な約束だったのだろう。「しかし、その意志の固さこそが、今回のスカラビア騒動の真実を白状したようなもの」アズールは既に答えが分かったかのようにそう零した。「あとは仕上げです。砂に潜った犯人の尻尾を捕まえるとしましょう」


「僕に作戦があります。まずは・・・・・・」



■ □ ■



アズールの作戦を聞いて、これからの動きを確認し終えたころにはもう真夜中だった。今日一日はことが進んで、濃い一日という感じがした。


「それでは、もう就寝するとしましょう」
「明日も早いですからね」
「そうですね」
「オレ様も眠いんだゾ〜」
「でもさぁ、オレらどこで寝んの? ベッド一つしかないじゃん」


「あ」とフロイド以外が声をそろえた。アズールたちは急遽こちらに来たということで、夜月たちと同じ部屋に押し込まれた。此処はひとり部屋だ。無論、ベッドは多少大きめだが一人用のもが一つしかない。一つのベッドを見詰め、アズールが最初に口を開いた。


「仕方ありませんね。僕たちは毛布やクッションを借りて床で寝ましょう」
「ベッドはヨヅキさんがお使いください」
「えぇ〜、オレやだよ。床かてぇじゃん」


アズールとジェイドは気前よく夜月にベッドを譲ったが、フロイドは床は固いと言って駄々をこねた。さすがに一人だけベッドを使うのは申し訳ない。「仕方ないでしょう、ベッドが一つしかないんですから。女性を床で寝かせるわけにはいかないでしょう?」駄々をこねるフロイドにアズールが言う。


「じゃあ一緒にベッドで寝ればいいじゃん」
「え?」
「は?」
「おやおや」


「それは名案ですね、フロイド」ニタリ顔でジェイドがフロイドの話に乗っかった。「でしょ〜。一緒に寝れば、オレらもベッドで寝れるし小エビちゃんも床で寝る必要ないんじゃん」一石二鳥、とでもいうようにフロイドは言う。一つのベッドで4人、しかもそのうち高身長2人。そもそもベッドに乗っかるのだろうか。「な、なにを言ってるんです! だいたい彼女は女性なんですよ!!」顔を赤く染めてアズールが大声を出した。「え〜、別にいいじゃん」


「小エビちゃんも、一緒に寝てもいいよね?」
「え、えっと・・・・・・」
「は? 嫌なの?」
「あ、いや・・・・・・い、良いと思います・・・・・・」
「だよねぇ〜、あはっ」


脅された。頷けばフロイドは上機嫌に夜月の首に腕を絡めた。「小エビちゃん、小っちゃくて柔らかいから抱き枕にしたら良さそ〜」ギュっと夜月を抱きしめたフロイドに「そうですね、フロイド。気持ちよく眠れそうです」とジェイドも抱き枕にする気満々で頷いた。

「まっ、お前たち!!」いそいそとベッドに向かおうとする2人を引き留める。「嫌ならアズールは床で寝ればいいじゃん。オレらは小エビちゃんと一緒に寝るからさぁ」ニタリとフロイドが笑う。「どうするんです、アズール。僕はどちらでも構いませんよ?」続いてジェイドもニヤリと笑う。ニヤニヤとしてアズールを見る2人に、アズールは顔を真っ赤にして叫んだ。


「〜〜っ! 僕だってベッドで寝ますよっ!!!」


結局、一人用のベッドに4人で寝る羽目になった。夜月とアズールを挟むようにフロイドとジェイドが両サイドに横になる。グリムは小さいから枕もとで丸まって寝ればいいが、夜月は朝まで3人に抱き枕のようにされながら眠りにつく羽目になった。