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09


庭に出された寮生たちはカリムの過酷な特訓に息を切らした。「明日の午前中は、東のオアシスまで行進だ。徹底的にしごいてやるから、そのつもりでいろ!」蹲る寮生たちを見下ろして、カリムは背を向けて寮へ戻っていく。

「手も足もガクガクだ・・・・・・」「明日も朝から砂漠を行進なんて・・・・・・」「寮長はどうしちまったんだ」寮生たちは床に蹲り、口々に戸惑いの声を上げる。「ぜ〜は〜・・・・・・やっと終わった」夜月の前まで来るとグリムは前に倒れこんだ。魔法が使えないため、魔法特訓では夜月はなんとか過酷な特訓が避けられた。「アイツ、さっきまで超ニコニコした良いヤツだったのに、急に人が変わっちまったんだゾ」グリムと言う通りだ。


「カリム先輩、どうしたんだろう・・・・・・」
「きっと、寮対抗マジフト大会や期末テストでスカラビアの成績がふるわなかったことに・・・・・・責任を感じてるんだろう」


「アイツは最近、ひどく情緒不安定なんだ」ジャミルは困り果てた顔で続けた。ジャミルとカリムは良さない頃からの長い付き合いだ。それでも今のカリムとどう接したらいいのかわからない。言動がコロコロ変わったり、急に横暴になったり、とにかく手に負えない。こうなる前は寮生全員が寮長であるカリムを慕っていたが、最近のおかしな様子に戸惑うばかり。今まではなんとかフォローしてきたが、このままじゃ寮生たちの不満が爆発するのは時間の問題だ。

なんだかハーツラビュル寮の時の一件と似ているような気がする。「ハーツラビュルのトレイといい、副寮長ってヤツは苦労するんだゾ」グリムも同じことを思ったのか、やれやれだと零した。


「そうか・・・・・・君たちこそ、“ダイヤの原石”なんだ!」


「君たちはハーツラビュルやサバナクロー、さらにはオクタヴィネルの問題まで解決に導いた、優秀な生徒だとうわさを聞いている」笑顔を向けたジャミルは続ける。「だから、頼む。どうか俺たちスカラビアの力にもなってくれないか」ジャミルの言葉に「えぇっ?」とグリムが零す。「食堂でたまたまであったのも運命の巡りあわせだ」


「きっと君らはダイヤのように輝く解決策をもたらしてくれるに違いない!」
「い、いや! 私たちだけじゃなにも、協力してくれた人たちが助けてくれただけで」
「そ、そんなに期待されても困るんだゾ」


「・・・・・・おい、ヨヅキ。他寮のトラブルに首突っ込むのはやめとけよ!」ジャミルに背を向け、グリムと夜月はコソコソと話す。「オレ様、もう面倒ごとはこりごりなんだゾ」うんざりした顔をするグリムに「そんなの、私だって嫌だよ」と夜月は続けた。


「君は・・・・・・俺たちを助けてくれるよな?」


ジャミルの言葉に振り返って断ろうとした。しかし振り向いたジャミルを見た瞬間、食堂の時に見たいにまた意識が遠のいた。自分が何を考えていたのか分からなくなっていく。


「・・・・・・わかりました・・・・・・」


気づいたら、そんなことを口にしていた。「ふな”っ!? オマエ、なに安請け合いしてるんだゾ!?」グリムは頷いた夜月にそう言った。「ああ・・・・・・! 引き受けてくれるのか。嬉しいよ、ヨヅキ」一方ジャミルは目を細めて声音を上げていた。「そうと決まれば、ぜひ2人とも賓客としてスカラビアに留まってほしい」ジャミルが二度手を叩くと急いで寮生の数名が駆け寄ってくる。


「お前たち、客人を部屋に案内しろ」
「「はっ!」」


夜月とグリムは寮生に案内されるがまま、スカラビアの滞在を余儀なくされた。