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07


部屋の中を見てグリムと夜月は口を大きく開け目を見張った。山のように積みあがる金貨や宝石、その他さまざまな高価なもの。あまりの異次元さに硬直してしまう。「ここにあるものは全部、家を出るときにとーちゃんが持たせてくれたんだ」目の前の金銀財宝を眺めてカリムが言う。「でも、寮の部屋に入りきらなくてなぁ。こうして物置に全部置かせてもらってるんだ」学園に入学して4年間寮暮らしをするだけなのに、大富豪の親はこんなものを持たせるのか。「物置じゃなくて、もはや宝物庫何だゾ!」グリムの言う通り、此処は財宝の宝物庫だ。「おお。難しい言葉知ってるな、グリム。偉いぞ!」


「え、このお宝の山の中でもオレが一番気に入ってるのが・・・・・・アレ? どこいった?」


「“アイツ”、たまに勝手に1人でいどうするんだよな」カリムはあちこち歩きまわってあるものを探す。「おーい、どこいった〜?」部屋の奥に入っていくカリムを見送り、グリムや夜月も各々に宝物庫を歩き回った。本物の金貨を目の前に身を固めてしまう。無造作に転がる大きな宝石たち。一体、何カットの宝石なのだろう。


「もー、しつこいな。なに・・・・・・ってほぎゃ〜〜〜!!」
「わっ、グリム!?」
「じ、絨毯が勝手に動いてる! ゴーストが憑りついた呪いの絨毯だゾ!!」


いきなりグリムが飛び込んできて驚く。グリムが指さす方を見れば、そこにはひとりでに動く絨毯がいた。「おっ、そこにいたのか。いつもの場所で丸まっててくれよ」聞きつけたカリムもやってきて、どうやらこれを探していたらしい。

「ソイツは一体何なんだゾ!?」若干まだ怯えるグリムはカリムに言う。「これは熱砂の国に伝わる伝説のお宝『魔法の絨』だ!」思っていた通り、魔法の絨毯らしい。お伽噺に出てくる絨毯そのものだ。「かつて砂漠の魔術師が使えた王が愛した空飛ぶ絨毯。コレはソノレプリカらしい。ウチに代々伝わる家宝なんだ」コクコクと絨毯は頷く。そのしぐさがなんだか可愛かった。

「本当に空を飛ぶんですか?」絨毯を眺めながらカリムに聞けば「そう。話すより乗ってみたほうが早い」とカリムは言う。「もうすぐ日暮れだし、夜空の散歩と洒落込もうぜ! さあ、お前たちも乗った乗った!」カリムは早々に絨毯の上に乗り、グリムや夜月を誘う。「でも・・・・・・」グリムはともかく、夜月は空飛ぶ箒にも乗ったことがない。はじめてのことに少し足がすくんだ。


「大丈夫だって、オレを信じろ」


大きな手が目の前に差し出される。不安そうにカリムを見上げれば、カリムは笑顔で手を差し伸べていた。おそるおそる手を取ればその手をしっかりと握って夜月を絨毯の上に引っ張り上げる。その反動で前のめりに倒れこんだ夜月の身体を支え、自分の隣に腰を下ろさせる。


「さあ行くぞ、それっ!」


カリムの言葉を合図に、絨毯はみるみると宙に浮かび上がり速度を出して部屋を飛び出し、あっという間に外へと出た。どんどん空へと上がっていく絨毯にギュっと目をつむり、不安定な身体を支えようとカリムにしがみつく。

「う、うわーー!! 本当に空を飛んでるんだゾ! 高さで目がくらみそうだ!」グリムが感嘆の声を零した。夜月はゆっくりと目を開け目の前を見詰める。「どうだ、雲の上は別世界だろ?」目の前に広がる光景に、夜月は目を輝かせた。見たことのない新しい世界だ。星がダイヤモンドみたい。言葉では言い表せない。なんて美しい光景だろう。


「あははっ、気に入ったか?」
「はい・・・・・・すごく、綺麗です」


思わず息を飲み込んで見詰めた。目を見張って目の前の光景に見ほれる夜月を見て、カリムは嬉しそうに目元をやわらげた。「空を自由に飛び回るのって、いいよな、小さい悩み何か全部どうでもよくなる」カリムは目の前を眺めながらつぶやいた。「ジャミルはいつも『お前は色々気にしなさすぎだ』って言われるけど。アイツも、もう少し気楽に生きればいいのにな・・・・・・」そんなことを零したカリムに、夜月はふと視線を向けた。


「ふな"! あっちの川の上、見たことない鳥が飛んでるんだゾ!」
「おっ、本当だ。よし、見に行ってみるか!」


笑顔になったカリムはそう言って、グリムが指さした鳥を見ようと絨毯を掴んだ。それからしばらく3人は時間を忘れて魔法の絨毯で空を飛びまわった。