かなしみはどこへ
「病院は嫌だ〜っ!!」
「我儘いうんじゃないよ!!」
学院の正門前で、泉とレオは互いに攻防戦を繰り広げている。
この状況に至るのも仕方がない。先日、レオが学院で乱闘騒ぎを起こした。それで軽い骨折のけがを負ったのだが、病院を嫌って今まで病院に行かないかった。それが泉にバレて、この状況に至る。
「馬鹿じゃないの!? 乱闘騒ぎなんてこの学院で起こしたら停学どころじゃないよ!?」鬼の喧騒でまくしたてるように怒鳴る泉に、レオは肩をビクリとさせて縮こませていた。
「ほら! さっさと病院行くッ!!」
「やだっ!!」
「あっ、こら! 夜月の後ろに隠れんじゃないよ!!」
泉から逃げるレオは、2人の間に立って様子を見ていた夜月の後ろ背に隠れた。夜月を盾にしてレオは泉の様子を見る。自分を挟んで攻防戦をする2人に、夜月は小さくため息を落とした。
「夜月! あんたからもレオくんに言ってよ!」
「とういうか、あんたは乱闘騒ぎに居たんでしょ。なんで病院に連れ行かないの!」レオから夜月へと泉は視線を変える。「あぁ・・・・・・連れて行こうとは思ったよ。だけど、レオが嫌がるから・・・・・・」怒る泉に、夜月は少し言いにくそうに伝えた。すると、予想通り泉は怒る。「あんたのレオくん至上主義は良いけど、それも大概にしてよね!!」自分でも最もだと思う言葉に、夜月は何も言い返せず、素直に受け入れて黙り込む。
「あんたは問答無用で病院!」
「うわ〜っ! 夜月〜!!」
首根っこを掴まれ、レオは泉に引き摺られるように連れていかれる。懲りずに嫌だと言って、レオは夜月に助けを求めるが、夜月も泉に睨まれているため動けない。本音を言うと、夜月もレオには病院に行ってほしい思いはあった。此処は泉に従うべきだ、と視線を逸らす。
「じゃあ、俺はこの馬鹿を病院に連れて行くから。夜月は先にレッスン室に行って準備しといて」
「ああ、わかった。泉、レオをよろしくね」
「言われなくても。まったく」
「ほら、行くよ!」そう言って泉は強引にレオの首根っこを掴んだまま進み始める。首根っこを掴まれて逃げ出せないレオは、今だ嫌だと叫んでいる。無論、泉はそんなことは無視して近所の病院へと足を動かした。
その様子を、2人の姿が見えなくなるまで夜月は見送った。
「・・・・・・・・・・・・」