×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

女王の王さま



「やっほ〜、新入り。なかなか、良い顔になったな。認めてやるよ、おまえも『Knights』だ! 誇り高い騎士だよ、ひよっこだけどな!」


『ジャッジメント』の終盤に、各々の『キング』が姿を現した。残るは『キング』だけ。泉も嵐も凛月も、紅郎もなすなも英智も、もう倒れた。全力で戦って、出番を終えた。


「Leader・・・・・・あなたは、どこまで計算していたのでしょう?」


おもむろに司は問いだした。最初からこの『ジャッジメント』は、司とレオの衝突から始まった。そして周りの人間も巻き込んだ。しかし蓋を開けてみれば、今こうして、司とレオが一騎打ちになっている。極限まで単純化した、今回の喧嘩の構図そのものだ。

「すべてが、最初から最後まで貴方の掌の上だったのなら、私は感服いたします」司は静かに告げた。「買いかぶりすぎだよ、新入り。おれはね、全知全能の神様じゃないから」レオは少し困ったように、昔を懐かしむように微笑んだ。「もちろん神様に愛された大天才ではあるけど、”神様そのもの”じゃないんだよな・・・・・・おれも、夜月も」一瞬だけ、レオは目を伏せた。


「取り返しのつかない失敗をしてから、ようやく気付いたけど。遅かったよあまりにも。全部失って、おれは一度無責任に逃げちゃったんだ。ほんとはさ、この場にいる資格なんて無いんだよ」


「おれは赤ん坊でもわかるような簡単なことにすら気づかなかった、『裸の王様』だ。『騎士』に傅かれて、『女王』に守られる価値なんてないんだ」ずっと夜月に守られていた。守っているつもりで、守られていた。そんなことにも、最期まで気づかなかった。


「だからさ。この『ジャッジメント』にお前が勝ったら、おれは素直に立ち去る。最後に、おまえたちのことが心残りだったんだよなぁ。だから、ふらっと立ち寄っただけ」


レオは司に吹っ切れたような笑みを浮かべて言った。自分ににすら勝てないなら、そんな『Knights』には価値はない。かつての自分と同じで、生き恥をさらしてるだけだ。叩き潰して解決させようと思ったが、そんな権利も必要もなかったようだ。


「代替わりの時代が来たんだ、『ジャッジメント』はそういう儀式だよ」

「いいえ。Leader、我が侭ばかり言わないでください」


「私はまだ、あなたのことを何も知りませんから。けれど、私も『Knights』ですから。かつて勇名をはせた我らの王の武勇伝くらい、聞かせてくれませんか?」微笑んだ司の言葉に目を丸くしたレオは、やがて頷いた。「おれも、おれがいない間におまえらがどんな物語を紡いで来たのか・・・・・・知りたいし、興味があるから。それに、まだ『ジャッジメント』の勝敗も決まってないんだもんな」


「勝負しよう・・・・・・ううん、思いっきり遊ぼっか、新入り!」

「はい。私が勝利したら、まずは新入りではなく名前で呼んでいただきます。朱桜司、以後お見知りおきを」



* * *



出番を終えたメンバーたちは、舞台袖から舞台の様子を眺めていた。その中にはもちろん、夜月の姿もいた。みんなとは一歩引いた場所で舞台に立つレオの姿を見ていた夜月の隣に、スッと英智が立った。


「満足したかい?」

「どっちに転んだとしても、私は満足だったよ」


目線を変えずに夜月は答えた。その目はずっとレオを見詰めている。「君から話を聞いた時は驚いたよ。最悪、君が大切にしていた『Knights』を壊すことになるから」英智の言葉に、零と同じことを言うと、夜月は心の中でため息をついた。「『Knights』は私のものじゃない、彼らのものだ。私がどうこうするつもりはないよ」少しため息交じりに放った言葉に、英智はフフッと笑みを零す。


「・・・・・・ねぇ、聞いてもいいかな」


しばらく2人とも黙って舞台を眺めた後、視線を変えずに英智は言った。夜月は視線だけで英智と一瞥する。それを頷きとみなし、英智は再び口を開いた。


「どうして君は、そこまで月永君を重視するのかな」


「幼馴染なんて言葉では測れない関係なんてことは、とっくにわかってる」英智は舞台に視線は向けたまま、真剣な声色で続ける。「君をそこまで突き動かすのは、なんなのかな」答えはすぐに帰ってこなかった。しばらく沈黙が続く中、英智は返答を待つ。そんなとき、フッと隣で夜月が小さく息を吐いた。「ただ――」


「ただ一度、手を差し伸べてくれただけ――」


英智は夜月を見た。夜月は真直ぐと舞台に視線を注いでいる。少し懐かしそうにして、レオを見詰めていた。そして、そっと瞼を下ろし、夜月は英智を見上げた。


「――はじめて、世界で色を見たんだ」


prev | next
Back
9/11


Bookmark