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騎士殺し



「お集りの皆さん! お待たせしましたあ〜、ついに『ジャッジメント』の当日だ! わははは!」


当日、講堂にはライブを見に来た観客で埋まっていた。観客の中にはちらほらと顔を知っている生徒が座っている。「おれが『Knights』の『王さま』だ! 月永レオさまだっ、わははは!」舞台に出たレオは、観客たちに大声で笑いながら言った。

その様子を残りの出演者は舞台袖で見ていた。そこにはもちろん、『Knights』もいる。「ぶっ壊れたみたいに騒いでやがるなあ・・・・・・」レオの様子を見ていた紅郎が呟いた。「レオが楽しそうで何よりだよ」プロデューサーとして『ジャッジメント』を仕切っている夜月がそう言うと、紅郎ははは、と笑う。


「ったくよぉ・・・・・・くだらねぇ、身内騒ぎに巻き込んで。まあ、『ナイトキラーズ』の衣装を作るのは楽しかったけどな」

「ほんとにお裁縫が好きなんだな〜、紅郎ちん」


会話に加わったなずながそう言った。

『ナイトキラーズ』は、『ジャッジメント』を行うために作られたレオの『臨時ユニット』だ。紅郎となずなはそのメンバーで今回は参加している。2人は所属しているユニットとは系統の違う、黒と灰色をベースにした、少し悪役のような衣装を身にまとっている。

「改めてなんだけど。面白い経験をさせてくれてありがとう、レオちん」舞台から袖に帰ってきたレオに、なずなは続ける。「おまえいつも孤高ぶってるからさ。おれたちクラスメイトに頼ってくれるなんて意外で、嬉しい!」と続けたなずなの横で「それ、一緒に夜月がいたからじゃねぇか?」と紅郎が突っ込むと「まあ、君たちに声をかけたのは私だしね」と夜月も頷く。

一方、なずなにそう言われたレオは眉間にしわを寄せ、首を傾げてなずなを見ていた。それを見た紅郎や夜月は、またかと察する。


「あ〜・・・・・・あぁ、うん。ありがとう、頼りにしてるぞ? クロと・・・・・・えぇっと、ナズ? ナズだよな、おまえ?」

「なんでちょっとうろ覚えっぽい感じなんだよっ、ひどいなぁ!」


『ジャッジメント』までの一週間は、毎日『ナイトキラーズ』でレッスンをしていた。そもそもなずなはレオのクラスメイトでもある。それでも顔を覚えないのだから、仕方ない。

「レオ、いい加減なずなのことも覚えようね? これから付き合っていくクラスメイトでもあるんだから」夜月にそう言われると、レオは少し眉尻を下げた。「う〜、だって、おまえ昔はあんまり目立たない奴じゃなかったか?」レオのなずなの印象は、2年生の秋前で止まっていた。以前のなずなから見れば、今のなずなへの変化は驚くものだ。「人間ってすごいなっ! 今日はよろしくなっ、ナズ〜!」レオが笑顔でそういえば「うが〜! おれはナズじゃなくて、仁兎なずな!」となずなは何度も名前を繰り返した。


「ふふ、今日はお手柔らかに頼むよ。『Knights』の諸君」


満を持して現れたのは、『fine』に所属する『皇帝』。その姿を見て『Knights』のメンバーは顔を強張らせた。英智も『ナイトキラーズ』のメンバーであり、白とは正反対の衣装を身にまとっている。


「相手に不足なし。健康面を配慮しつつ、僕も頑張ろうかな?」

「倒れないでおくれよ、英智。私が敬人にどやされる」

「さりげなく一番ノリノリだよな」


「僕は今回、月永君が復帰してくれたことへのご祝儀として参戦しているつもりだから」夜月や紅郎の言葉にふふ、と零しながら英智は続けた。「君がいない夢ノ咲学院は寂しかったよ、『王さま』くん? まあでも、君に邪魔されず『女王クイーン』と過ごせたのは嬉しかったけどね?」ニコリ、と天使のような笑みを浮かべる英智。レオは英智の放った言葉にムッとし、眉間にしわを寄せた。


「つうか、おまえ『Trickstar』とかいう連中に負けたんだってな。 や〜い、負け犬! 格好悪すぎるっ、わははは!」

「さすがにちょっとイラッとするね」


仕返しだと言わんばかりに挑発するレオ。英智は笑顔を浮かべるものの、腹が立っているのは読み取れた。そんな様子を夜月に続き、紅郎やなずなは少々呆れたような表情で眺めた。


そんな『ナイトキラーズ』の様子を、『Knights』は遠くで観察するように見つめていた。

『紅月』の紅郎、『Ra*bits』のなずな、『fine』の『皇帝』英智、そして『Knights』の『王さま』レオ。それらが加わった『ナイトキラーズ』は手ごわい相手だった。全員が3年生で、実力者だ。それに加え、あちらには夜月がいた。その存在は大きい。


「なあに固まってるわけぇ?」


顔を強張らせるメンバーに、泉が声を上げる。「勝つのは『Knights』でしょ? 『王さま』も夜月もいなくても、『Knights』はやってこれたでしょ?」泉の言う通りだ。レオも夜月もいなくなった後も、『Knights』は存続した。強豪ユニットの名前の通り、その名をはせていたのだ。気負うことはなにもない。「そうねぇ。『女王様』に守られる騎士なんて、格好悪すぎるわ」緊張の解けた嵐が続く。そのおかげで、一番気負っていた司も緊張がほぐれた。


「さあ、そろそろ開演の時間だ。出陣するのは誰だい?」


夜月の声がかかり、出演者が見合う。最初、『Knights』からは泉と嵐が。『ナイトキラーズ』からは紅郎となずながでる。『キング』は司とレオが。『Knights』の命運をかけた、戦いの幕が上がる。


「さあ、『ジャッジメント』をはじめよう!」

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