笑顔でいてほしいんだ
レオが『Knights』に『ジャッジメント』を宣言してから数日が過ぎた。
後日『臨時ユニット』を結成するためにメンバーを集めたレオは、夜月の協力のもと、なずなと紅郎と英智を引き入れた。基礎スキルも各々高く、レオの作曲も豊富で、『臨時ユニット』のレッスンは順調に進んでいた。
「おや、此処に居たのかえ。夜月」
「あら、零。珍しい、まだ日が昇っているのに棺から出てくるなんて」
人通りの少ない廊下で引き留められた夜月は「寝不足になるんじゃない?」と零に告げる。零はフッと笑い「なに、少し聞きたいことがあってのう」と続けた。こんな時間帯に棺から抜け出して夜月を探したくらいだ。よほど早く聞きたいことがあったのだろう。
廊下の隅によって壁にもたれかかりながら、夜月は零に話を促した。
「『ジャッジメント』をするようじゃのう」
「おや、耳が早い」
「『Knights』と月永くん率いる『臨時ユニット』が行うそうじゃのう」
「ええ、そうよ」
夜月は頷く。「『ジャッジメント』は『Knights』の内需粛清で用意られた形式だ」改めてそう言えば、零も知っていると頷く。
「良いのか。月永くんが勝利すれば、『Knights』は解散だと聞いたぞい」
つまり、これが本題と言うわけだ。零は夜月が『Knights』を大切にしてきたことを知っている。それがレオの手で、解散の危機に陥っているのだ。この事態について、零は一刻も早く夜月に確認を取りたかったようだ。
「いいよ。レオが決めたことだ」夜月はそっと笑みを浮かべながら頷いた。『Knights』のリーダーはレオだ。『Knights』を作り上げたのもレオだ。だからレオの判断に任せる。自分は一切口を出すつもりはないと夜月は続けた。「それに・・・・・・」呟くように、夜月は言葉を零す。
「きっと、これはレオにとってのケジメなんだよ。過去と、これからの」
やっとここまで来たのだ。あのどん底から、絶望から、やっとここまで上り詰めてきた。だからこそ、これから前に進むためのケジメをつけたいのだ。夜月はそう理解していた。
それを聞き、零も「そうか」とそっと笑みを浮かべる。
「ならば我輩は何も言うまい。健闘を祈ろう」
「ええ。気にしてくれてありがとう、零。でも大丈夫よ」
もうあの悲劇は繰り返さないさ。