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裸の王様



「私はもう、我慢なりません! 一言、Leaderに物申さなくては気が済みません!」


ライブの後、控室に戻ってくると司は突然そう言って叫び出した。他のメンバーや夜月は司に目を向ける。「なぜ観客席に座るのです! あの人も『Knights』でしょう、私たちのLeaderでしょう!?」司は今までため込んできた不満を爆発させる。「気になってしまってPerformanceに集中できず、Mistakeを連発してしまいました! 全部あのLeaderのせいです!」レオは自分が所属するユニットのライブにもかかわらず、観客の全列を陣取って『Knights』のライブを見ていた。それを気にして司はミスを連発してしまっていた。

「集中できなかったのは自分の責任でしょう〜、未熟者め。でも、たしかに高みの見物みたいにされるのは不愉快かもねぇ?」泉も最近のレオの態度を思い出してそんなことを口にした、その時だった。


「わははは! 話は全て聞かせてもらったぞ!」


突然窓からレオが侵入してきた。それにメンバーは各々目を丸くして驚く。「やあ、いらっしゃいレオ」夜月は軽く手を振ってレオを向かい入れる。「あ〜、『王さま』だぁ」寝ていた凛月は目を覚まし、レオに目を向けた。「おお、リッツ! 寝てたのか、よく寝るなぁお前! 寝る子は育つっていうけど、おれが背ぇ伸びないのは作曲のために徹夜ばっかりしてるせいじゃないよな?」凛月は何の話かと首を傾げ、夜月はフフッと笑みを零す。

「ちょっとぉ、『王さま』・・・・・・急に何なわけ、チョ〜うるさい!」突然現れたレオに泉はうんざりしたように言う。続いて司も「Leader!」と大声を出してレオに歩み寄った。


「今更のこのこと姿を見せて! 今までどこで何をやっていたのですかっ、無責任にもほどがあります! 不肖・・・・・・この朱桜司が一言だけでも、あなたのやりくちに物申します!」

「誰だおまえ!」

「くあぁっ! どうして私の存在をお会いするたびに忘れるのですか!」


何度も名前を口にしているというのに、レオは覚える気がないのか全く司のことを覚えない。「今日と言う今日は我慢なりません! Leader、あなたは『Knights』のことをどうお考えなのですかっ!」司は眉尻を上げ、ため込んできた不満をすべてレオにぶつけた。


「うん、そろそろ不満が出ることだろうと思ってた」


そっと、静かにレオはそう言った。

「まあまあ落ち着けってば。そんなに取り乱したら綺麗な顔が台無しだぞ〜、新入り」怒る司に軽い調子で言えば「また『新入り』などと! いい加減、私の名前を覚えてください!」と司は訴える。「つっても、おれ、お前のことよく知らないもん」しかしレオはあっけらかんとそんなことを言ってはねのけた。「だからお前の、ってか今の『Knights』の力量を見定めるために、毎日のようにライブをしてもらったわけだけど」


「おまえ・・・・・・やる気あんの?」


スッと目を細め、声を低くしたレオに周りは息をのむ。「とくに今日は酷かったなぁ、見てらんなかったぞ正直。おまえ、自分が他のみんなの足引っ張てる自覚ある?」静かに続けるレオの言葉に、司は悔しそうに下唇を噛んだ。「そんなことないわよ、司ちゃん。一年生なんだし、まだ未熟でも仕方ないわ。司んちゃんが誰よりも努力してること、アタシは知ってるからねぇ」そんな司の肩に手を置き、嵐は助け舟を出した。その様子を見たレオはポツリとつぶやく。


「すっかり腑抜けちまってるなぁ、『Knights』も」


え、と嵐は声を上げた。「現状に文句を言っても仕方がないから、未来のことを考えよう! ここに再びおれの王国を築き上げようっ!」レオはまたいつもの調子に戻って、そんなことを言いだす。「来週あたりに『デュエル』をするから。夜月に頼んで、今準備してもらってるところ」レオがそう言うと「順調に事は進めてるよ。予定通り、来週あたりには開ける」と夜月は続ける。


「べつにいいけどさぁ、『デュエル』は俺たち『Knights』のお家芸だし。それで、どこの『ユニット』をぶっ潰すわけ?」

「意外と好戦的だよなぁ、セナ。でも今回はちょっと特殊な『デュエル』を考えてる」


「内部粛清のための『デュエル』・・・・・・『ジャッジメント』を開催する」宣言したレオに泉は綺麗な顔をゆがませた。「げっ、あれをやるの? 嫌だなぁ。『ジャッジメント』は遺恨を引きずってゴタゴタするんだよねぇ・・・・・・」特にレオや泉そして夜月にとっては苦い思い出だ。

『デュエル』や『ジャッジメント』を知らない司はあたふたとする。そんな彼を見つけた夜月は一つ一つ丁寧に説明を加えた。

「おれは『臨時ユニット』を結成する。その『ユニット』と『Knights』で勝負するんだよ」そう告げたレオに泉は眉間にしわを寄せ「ちょっと、調子こきすぎなんじゃない?」と少し不愉快そうに口にした。


「そ、そんな・・・・・・仲間同士で争うのですか? 何の意味があるのですか、Leader?」

「だから内部粛清だよ、『Knights』の未来のために・・・・・・」


「おまえらが勝てば、オレはなんでもいうことを聞くよ。ちゃんとLeaderらしい振る舞いをしてやる。オレを脱退させてくれてもいい」真っ直ぐと司を見詰めてレオは続ける。「だけど、もしおれが勝ったら・・・・・・」


「即席の『臨時ユニット』にすら勝てない惰弱な集団に『Knights』が成り下がってるなら。ここで、解散させる」


解散、と言う言葉にメンバーは目を見開く。「オレの青春そのものだった『Knights』が、見るに堪えない情けない集団になり果ててるなら・・・・・・そんな無価値な代物は、後腐れもなくゴミ箱にポイしてやるよ」真っ直ぐと伝えるレオの瞳に確かな意思が伝わってくる。「それが、元来の『Knights』の流儀だ」そう続けたレオに「あ、あなたが今さら『Knights』を語るのですかっ?」と司は少し睨むように言った。「おれの『Knights』だ、今はまだ」にっこりとレオは笑う。


「文句があるならかかってこいよ、お坊ちゃん。決闘しよう、『ジャッジメント』で、おれたち『Knights』の未来が決まるんだよ」


『ジャッジメント』の結果で『Knights』の命運がすべて決まる。解散の危機を目の前に、メンバーは固唾をのんだ。「それから、あともう一つ」レオは人差し指を立てる。「なに、まだなんかあるの?」泉は少し急かすように受け答えた。


「今回の『ジャッジメント』で、『Knights』に夜月は使わせない」


「夜月の協力は一切無しだ」その言葉にメンバーは目を見開いてレオを見た。当然、彼らは夜月がプロデューサーとして協力してくれると思っていた。「お姉さまはProducerです! そのような話では・・・・・・!」訴える司にレオはすぐさま切り捨てるように言う。「いや、そう言う話だよ新入り。夜月のプロデュースが入ってからのライブは立て直されてただろ?」夜月が入ってからのライブを思い還し、各々が目をそらした。


「もともと『Knights』は何のためにできたユニットだった? それも、おれの『Knights』は忘れたのか?」


「なあ、セナ」名指しを去れた泉は居心地を悪そうにして目を伏せた。『Knights』の結成時からいたのは、レオと泉そして夜月。『Knights』に込められた意味は、実際にはこの3人しか知らなかったし、深い思い入れもなかった。「『女王』に守られる『騎士』は、おれの『Knights』じゃない。夜月がいなきゃ存続できない『Knights』は、要らない。おれはそんな『Knights』を作った覚えはない」淡々と、芯の通った声色で続けるレオ。


「そこをはき違えるなよ」


静かなレオの声は、そっと彼らの中に落ちていった。

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