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隣同士がいちばん自然



あれ以来、一部学院内は騒がしかった。

レオは普段の調子で自由奔放に動き回るだけで、レッスンに参加しないという意味で迷惑被るのは『Knights』だけだからまだよかった。そこに『女王』である夜月が加わったことが、騒がしい問題だった。

夜月はレオが求める刺激を与えるために、面白いことを次々に引き寄せ、用意してレオに注いだ。レオは刺激的なそれを喜んで受け取り、インスピレーションが舞い降りて作曲がすごい勢いで捗った。あまりの夜月のレオへの溺愛ぶりに暴走してしまい、少々周りからお小言を言われることが増えた。それぐらい、夜月はたまらなく嬉しかったのだ。

そして今日も、学院内は騒がしい。


「月永! 貴様いい加減にしろっ!!」

「わははは! そう怒るなよ、ケイト。ああ、インスピレーションが湧いてくる! 無限の宇宙が広がる! あっははは!」

「夜月! 貴様も月永の手綱を握っていろ! お前までノッてどうする!」

「あはは! すまないねぇ、敬人。あとでちゃんと後始末はしておくよ!」


今日も副会長である敬人の怒号が響く。胃を痛めながら懲りない二人を追いかけるが、天才たちは運動神経も良いようで。ひょいひょいと身軽に逃げてなかなかレオと夜月は捕まらない。

はたから見ていると、いたずらをした園児を追いかける先生の図だ。その園児の一人に夜月が混じっているのだから、大半の人は口をあんぐりさせた。


「あらあら、今日もウチの『王さま』と『女王様』は元気ね〜」


ちょうどレッスンの休憩中、窓から外を眺めていた嵐がそんなことをつぶやいた。視線の先には楽しそうに敬人から逃げるレオと夜月の姿がある。


「まったく。こっちは『王さま』が勝手に持ち込んだ仕事が山積みだってのに、ちょーうざい」


ドリンクを飲んだ泉があきれ果てた顔で言った。「あらあら。泉ちゃんだって、夜月ちゃんが嬉しそうで安心したくせに」嵐が泉を揶揄うように言う。「そうそう。でもせっちゃんは夜月を取られて不満なんだよね〜」続けて凛月も加わる。「はあ!? べつに俺はそんなんじゃ・・・・・・!」大声を出して凛月の言葉を否定する泉。「そう? 俺は夜月がいなくてつまんないけど」凛月は欠伸をしながら素直に言った。


「私も不満です」


視線を向けると、司はムッとした顔で拗ねた声色を出してそう言った。頬を膨らませる姿はまさに末っ子のようだ。


「Leaderは『Knights』の王でありながら、Lessonにはなかなか参加してくれません。それに加え、Producerであるお姉さままで独り占めするなんて! 今日だってお姉さまと『Knights』のLessonだったのですよ!」


司はひとり興奮して不満を言い放った。「ま、それに関しては俺も同意だけどねぇ」司の言葉に泉は同意する。「なら瀬名先輩からも言ってください!」司は声を張り上げる。


「『王さま』に何言っても無駄だよ、夜月だって今は『王さま』のことしか眼中にないよ」

「そうねぇ、ようやく帰ってきた『王さま』に『女王様』は忙しいから。今はそっとしておいてあげたほうがいいわ

「スーちゃんは初めてだから知らないだろうけど、『王さま』のことになると夜月は止まらなくなるから。これもいつものことだよ」


三人の言葉に、司はまたしてもムッと不満げな顔をした。「はいはい。いつまでも突っ立ってないで、レッスンの続きするよ〜」パンパンと手を叩き、休憩時間を終わらせレッスンの開始を合図させる。

「かさくん」各々が動いている最中に、泉はそっと司に声をかけた。「なんですか、瀬名先輩」まだ拗ねた顔で泉を見上げる。「不満なのはわかるけど、もう少しの間は我慢しててよねぇ」泉は続ける。


「『王さま』から夜月を、夜月から『王さま』を、引き離しちゃダメだからねぇ」


少し顔を伏せがちに呟くように言い放った泉の言葉に、司は理解できずに首を傾げるだけだった。


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