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裏切って傷つけてばかりなんだ



長期入院を終え退院をした夜月は、学校へ通うことはせず家に閉じこもった。これで退院をして学校に戻っては意味がない。『女王』は倒された。だからしばらくの間、身をひそめる必要がある。そうすれば、群衆たちは悪の権化は倒されたのだと思い込むだろう。

一人家にこもるのは、ひどく退屈だった。以前なら家に帰れば当然のようにレオがいたが、今はその姿もない。騒がしくてそれでいて心地良い空間は、今は見る影もなかった。それも仕方のないことだ。

一人でいる時間は、家に置きっぱなしにされたレオの楽譜をめくったり。周りの人たちがくれた思い出の品々を掘り出したりした。そうして時間をつぶして夕方ごろになると、必ずインターホンが鳴った。


「夜月・・・・・・」


扉の向こうで名前を呼ぶのは、泉だ。泉は入院している間も頻繁に夜月の元へ通った。こうして学校に登校しなくなって不登校になった後も、泉は夜月のもとに通い続けた。はじめは毎日のように。そして一日おき、二日おきと日数を重ね、それでも泉はやってくる。

インターホンのベルを合図に、夜月は玄関に背を預けて立つ。扉の向こうには泉が立っているだろう。一枚の扉を隔てて泉と夜月はそこにいた。


「ねぇ、夜月・・・・・・そこにいるんでしょ?」


扉の向こうから声がする。夜月は答えない。話したくないわけじゃない。会いたくないわけじゃない。ただただ、顔向けできないだけなのだ。ただただ、あの日のことが申し訳なくて。どうしようもなくて。それはお互い思っていることだろう。だから距離を置いた。


「ねぇ、夜月・・・・・・」


扉の向こうから、ひどく悲痛な声が届く。ああ、こんなにも悲しそうにする泉は見たことがない。それでも、その言葉に応える資格すら持ち合わせていないんだ。


「俺を、一人にしないでよ・・・・・・」

「・・・・・・」


レオもいなくなった。夜月もいなくなった。レオは新体制の渦に飲まれ仲間内の争いに心が荒んで、ついには壊れた。

夜月は『五奇人』と生徒会の戦いの間に身を置き、自ら悪の『女王』として君臨し、破れた。
この青春時代を、そして二人の友人を、泉はこの一年で失った。やるせない気持ちが、ただただ泉の中で流れていく。

泉は反応のない扉の向こうに落胆し、踵を返す。こうして何度も泉は扉の向こうに呼びかけては、帰っていく。応えなんて無いことを理解していながら。

やがて泉は夜月の元へ通うことをやめた。泉らしく、後ろを振り返らず真っ直ぐと前を見詰めたのだ。そして必死にレオが守り抜いた『Knights』を今度は泉が必死に守り抜こうをした。泉は前を向いて歩きだしたんだ。

もう来ることない足音に、夜月は安心した。


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