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少年は恋を知る



「さて、どうしたものかな・・・・・・」


誰もいない廊下で、一人の青年が呟いた。

青年は、廃れ混沌へと陥ったこの学院をどうにか立て直そうと思案していた。
この学院には過去の栄光にすがり、努力をしない生徒で群がっている。本当にアイドルになりたい者、努力をする者は、此処に埋もれて光の目を見ることはない。アイドルになりたくて此処へときた青年は、それを受け入れることができなかった。

青年は着々と計画を進めていた。

まず手始めに始めたものが、今学院内で話がもちきりの『五奇人』。五人の天才という異端児を括り、その存在を学院内で示させた。
この『五奇人』という彼らがこの先どのような結末へと向かうのか。計画を実行した彼以外にはまだ誰も理解しえなかった。芽が出るまでには時間がかかる。それを誰もが目視するのは、まだまだ先だ。

青年は望んだ未来を手にするために、いばらの道を歩くだろう。


「うん?」


ふと、窓の外から話し声が聞こえてきた。高い声。それは女性を指していた。
そこで去年から新設されたプロデュース科のテストケースとして一人の女子生徒が入学していることを思い出した。去年はずっと入院していて、学院には全くこれなかった。だから彼女を知らない。

その声に誘われるように、廊下の窓をのぞく。
外には数週間前に少しの間、同じ病室になった月永レオがいた。


「夜月〜!」

「レオ、退院したばかりなんだし、そんな動き回らないほうが」

「もう退院して治ったぞ! 夜月は心配性だな〜」


むぅ、とした顔を向けるレオ。夜月と呼ばれた女子生徒はこちら側に背を向けていて、顔をうかがえなかった。

背中に長く伸びる髪がきれいだな、と思った。すると風が吹き上げたのか、その長い髪をゆらゆらとなびかせる。太陽に反射して、きらきらと輝いているようだ。彼女は髪を耳にかけるしぐさをして、吹き上げる風に誘われたように、振り返った。


「――――」


息が止まった。

振り返った彼女の赤い瞳が、こちらを向いた。
視線が交わったのかはわからない。だが、目が合ったように感じた。
彼女の視線はすぐに目の前にいるレオへと移ってしまったが、青年は時間を忘れたように彼女にくぎ付けになった。

心臓が大きく波打った。鼓動が加速する。
高まる鼓動が苦しくて、思わず胸を押さえた。
そうしてようやく、微かに口から空気を入れることができた。
彼女を見つめれば見つめるほど、心臓が締め付けられる。体温が上昇していく。

彼女を見た瞬間、知りえなかった感覚に襲われた。


「ん? 英智?」


たまたま廊下を歩いていた敬人が、英智を見つけた。英智はじっと窓の外を見つめ、敬人に視線を向けることはなかった。

敬人は胸を押さえる英智を見てぎょっとする。英智は体が弱い。敬人はすぐさま「気分が悪いのか!?」と慌てて問いかけるが、英智はいまだこちらに視線を向けず、回答にならない言葉を放つ。


「敬人、彼女のことを知ってる?」

「彼女・・・・・・?」


敬人は目を丸くする。
英智が向けている視線を応用に窓の外をのぞくと、外にはレオと一緒にいるV夜月がいた。


「ああ。彼女は骨喰夜月だ。去年からプロデュース科として通っている」


「お前もプロデュース科の話は知ってるだろ?」敬人は続ける。敬人は盗み見るように英智の表情をうかがった。


「骨喰夜月――――」


スッと心の中に入っては、じんわりと熱を持って広がっていく。
まだ名前もわからないこの感情にを、手放したくないと思った。



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