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つないだ手の温もりは、確かにそこにあったよね




「んぅー・・・・・・なに・・・・・・?」


心地よく昼寝をしていたというのに、騒がしい音に目覚めさせられ、夜月は少々不機嫌な声を漏らした。未だ眠い目をこすり、寝帰りをうつ。

此処は学院の屋上。屋上にはあまり人は来ないし、今日は天気も良い。昨日は夜遅くまで起きていたこともあって、夜月は屋上で昼寝をしていた。
良い夢見心地だったというのに、多くの生徒たちの歓声や爆音で流れるギターの音で不本意にも叩き起こされる。

きっと、どっかの誰かが野良試合でもしているのだろう。どうせ長くは続かない。生徒会の許可もきっとないだろうし、すぐさま副会長率いる生徒会執行部隊がくるだろう。そうすれば、この騒がしさもおさまる。それまでの辛抱だ。

もう一度寝帰りをうって、目を瞑る。騒がしくて眠れないが、静かになるまでこうしていよう。


「あれ、夜月ちゃん?」

「ん?」


上から知っている声が降ってきた。
瞼をあげて、声のしたほうを見上げる。


「薫?」

「夜月ちゃんに会えるなんて、嬉しいなあ。屋上に来てよかったよ」


薫は嬉しそうにニコニコ笑って、夜月の隣に腰を下ろした。
夜月もいつまでも寝っ転がらないで起き上がり、薫と肩を並べて座った。


「昼寝してたの?」

「ええ、そんなとこ」

「まだ春だから、肌寒いじゃん。風邪ひいちゃうよ?」

「薫だって昼寝に来たんでしょ」

「俺は男だからいいの。女の子は冷やさないようにしないと」


「ね?」と薫は柔らかい笑みを浮かべて夜月の顔を覗き込む。
相変わらず、薫は薫のままだ。軽いところとか、女の子を何よりも優先にするところとか、笑みを絶やさないところとか。


「そういえば、外で何をやっているか知ってる? 騒がしくて眠れやしないわ」

「さあ? また野良試合でもやってるんじゃない? そういえば、衣装着てるわんちゃんが見えた気がするけど」


薫は夜月の問いかけに、一瞬チラ見した程度の風景をなんとか思いだす。


「ああ、あれは晃牙のギター音か。考えてみればそうか・・・・・・ならまあ、許す」

「相当眠かったんだね、夜月ちゃん」

「そうよ。どこぞの知らぬ輩が私の眠りを妨げていたら成敗してくれたわ」

「うわー・・・・・・」


ニッコリと笑みを浮かべて怖いことを言う。
夜月ちゃんが言うと本気なのか冗談なのか分からないなあ、と苦笑した。


「ねぇねぇ、夜月ちゃん。この後暇? 暇なら俺とデートしようよ」

「なんだい、薫。今日は女の子を取り損ねちゃったの?」

「ううん。でも夜月ちゃんとのデートのほうが俺にとっては大切だからね。その子には悪いけど、また今度に予定をずらすよ」

「まったく、現金な奴だねえ」


クスクスと夜月を笑みを零す。
カバンから携帯を取り出して時間を確認すれば、丁度昼時。まだ昼食は取っていないし、空腹だ。それに、今日は予定も無ければ暇だ。


「薫」

「ん? なに、夜月ちゃん?」

「私、まだお昼食べてないの。何処に連れてってくれるの?」


薫は嬉しそうに顔を緩ませ早々に立ち上がる。
喜ぶ薫を見て、夜月も微笑みを浮かべ、カバンを片手に立ち上がれば、薫はその手を握った。


「この前、美味しそうなパンケーキ屋さんを見つけたんだ。夜月ちゃん、甘いもの好きでしょ? そこに行こ!」

「うん、じゃあそこにしよう。薫の進めてくれるお店は何処も良いからね。楽しみだよ、本当に」



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