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かくて君は郷愁を閉じる



「留学? 明日から?」

「そ、約一年間な。俺様がいなくて寂しいか〜?」

「全然、まったく。何処へなりとも行くが良いさ。どうせ地の果てでもしぶとく生きてるだろう」

「可愛げねぇなぁ〜、夜月ちゃんは・・・・・・」


「別れの言葉を欲しがるような可愛い性格でもないだろ、零」項垂れる零に素っ気なく言ってやる。笑みには嘲笑じみたものがある。
「別に今生の別れでもねーしな。わりと帰ってくるつもりだし」一切気にもせず零はニコニコする。

あんな契約を自分で持ち出しておいて、こちらを放置して行ってしまうのはどうかと思うが、人の人生、人の道だ。口を出す気もないし、本心で何処へでも行くがいいと思う。別に世界に対して恨みはないが、世界なんてこんなもんだと思えばいい。


「話はそれだけ? ならもう良いか?」

「あ? なんか用事でもあんのか?」

「レオに呼ばれてるんだ、あまり待たせたくない」


スマホを操作して視線を落としながら言う夜月に、零は不満を感じた。
夜月はすべてにおいて月永レオを優先していた。どこにいても何をしていても、たとえ火急の事態だったとしても、幼馴染である月永レオから何らかのアクションが来ればそっちのけでレオを優先する。今もこうして自分と話しているのに、夜月の視線の先には必ずレオがいた。
一緒に過ごす時間も長くなったし見ていれば幼馴染が大切な存在なんだと分かる。実際本人の口からも告げられた。だがそれでも、玩具を取られた子供のように零は不満だった。


「また幼馴染くんかよ・・・・・・」

「何か言ったか? 聞こえなかった」

「いーや、べつに? ・・・・・・お前が幼馴染くんを大事にしてんのはわかるけどよ、少しは俺にもちゃーんとかまってくれてもよくねぇ?」

「何言ってるのさ。君が連れ出すたびに散々付き合ってるじゃないか、十分かまっていると思うけど」


正論をぶつけるが、零はまだ不満そうな顔をする。夜月は呆れてため息を落とした。


「まあいいや。っていうことで、俺はしばらくいないからさ。お前なら平気だろうけど、なんかあったら連絡しろよ」

「そうは言うけど、君は携帯を使わないじゃないか。まあそもそも、そんな事態にもならないだろうし。一応、気を付けて旅立つことね」

「おう、土産も持ってきてやっからな」


子ども扱いをするように頭をなでる零の手を振り払う。
夜月は用も済んだことだしすぐさまレオのもとへ行こうと足を進める。必然的に零と行き先が異なり、そのまま別れようとしたがそれは零によって阻まれた。


「おっと、忘れもん」

「え? ――――!」


チュッとリップ音が響いた。
腕をひかれたと思えば流れるような手つきで顎に指を添えられ、零は頬に触れるだけのキスを落とした。目を丸くして見上げれば、零は赤い瞳を細めてニンマリと満足げに笑みを浮かべていた。


「――――ごちそうさま」




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