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kaleidoscope / 絶えず変化するかたち



「夜月さん、俺たちやりましたよ!」

「俺たちのステージ見ててくれましたか?」

「勿論だとも。君たちのおかげで『TrickStar』への引継ぎは完璧だ」


『UNDEAD』と『紅月』の演目が終了し、『TrickStar』の準備ができるまでの引継ぎを担当した『2wink』。零の合図により、彼らはできるかぎり会場を盛り上げて『TrickStar』へステージを引き継いだ。素晴らしい仕事っぷりだ。

褒めて褒めて〜、と強請ってくる可愛らしい後輩を夜月は良い子いい子と頭を撫で繰り回した。しばらくそうしていると、不意に腹部に腕を回され双子との距離を離された。


「ちょっと、双子くんたちだけズルくない? 俺にもご褒美欲しいなぁ」


背後から抱き着くようにしてきたのは薫だった。汗をかかずに格好よく済ますことをモットーにする彼は、汗一つかいていない。


「いいよ。楽しい舞台を見せてくれたお礼だ」

「じゃあ夜月ちゃんからのチュウがいいなぁ」

「薫くん? いくら我輩でもそれは怒るぞい?」

「ちょっ、朔間さん。顔怖いから」


「仕方ないなぁ」と愚痴をこぼして、腹に回した腕を解く。それに苦笑を零し、背伸びをして双子と同じように頭を撫でれば、薫は照れくさそうに笑いながらそれを受け入れた。


「アドニスくんも、『TrickStar』のステージ準備をしてくれてありがとう」

「夜月先輩が楽しみにしていたステージだからな、力仕事は任せてくれ」

「晃牙もありがとう、それからごめんね。後日に『UNDEAD』が活躍できる舞台を用意するから、それで許してくれ」

「ホントかっ!? っしゃあ! 夜月先輩が用意するんだから間違いねぇ!」


一歩引いたところで機材の片づけなどを行っていた後輩たちに声をかける。テキパキと準備をこなす彼らは実に頼りがいがある。


「ふむ、事は順調に進んでおるの。楽しくなってきたわい、おぬしは満足したかえ?」

「勿論、満足したとも! 次も楽しい舞台を見せてあげるから、私を楽しませて頂戴ね?」

「うむ、期待しておるぞい」


舞台袖から『TrickStar』のステージを覗き見ていた零が、首を傾げて問いかけてくる。夜月は満足そうに笑い、零も喉の奥で笑った。
そんなことをしていると、ふとひなたとゆうたが夜月に向かって口を開いた。


「それにしても、エッグイ作戦ですよね〜! あの副会長さん、夜月さんと昔仲が良かったんでしょ? 容赦ないですね〜!」

「俺たちや朔間先輩さえ踏み台にしちゃうんですもん! 朔間先輩なんて喜んで踏み台になっちゃって。まあ、俺たちも楽しかったからいいですけど!」

「だってその方が愉しいじゃないか! おかげで敬人が泡を吹く姿も見れたことだし、大満足だ」

「っよ、邪道! 外道!」

「策士! 女王さま!」

「ふふ、そんなに褒められると照れるわ〜」

「えっ、褒めてるの? それ褒めて無くない?」

「相変わらずじゃの〜」


双子からの言葉に、頬に手を添えて照れているふりを見せる夜月。
三人の背後で、薫と零がそんな夜月に突っ込みを入れる。満足げに楽しむ夜月を見て、年長者の彼らも満足していた。

『TrickStar』の演目が終わる。そろそろこの舞台の幕が、下ろされる。



***



「やあ諸君、おめでとう! そして感謝する、楽しい舞台の幕上げに、革命の火蓋を切ったことに!」

「えっ? えっとー・・・・・・」


先程、放送委員のなずなによって集計結果を知らされた。結果は『TrickStar』の勝利。罠にはまった『紅月』は王者の座から降ろされ、『UNDEAD』と『2wink』は予定通り『TrickStar』の踏み台になった。

勝利の余韻に浸りながら舞台袖へとプロデューサと共に下がった『TrickStar』。舞台袖へと下がると、そこには『UNDEAD』と『2wink』を背後に笑顔で出迎える三年生の女子生徒の姿。彼らは突然の事に目を丸くした。


「夜月、楽しいのは分かるがそれでは彼らに伝わらんぞ」

「あら、失礼。久しぶりに楽しいものが見れたから、興奮が止まらなくってね。許しておくれ」


やれやれと言う零に、夜月は笑顔を向けた。
本当に楽しそうにするものだから、彼らも仕方がないと諦めているようだ。


「あ、貴方は・・・・・・!? まさか、いつの間にか協力してくれてたのか?」

「やあ北斗くん、最近の演劇部は楽しいかい?」

「うっ、それは聞かないでくれ・・・・・・」

「真緒くんも久しぶり、元気だったかい?」

「お久しぶりです夜月さん、俺は元気ですよ」 


夜月の姿を見て驚愕した北斗は思わず声をあげた。真緒も驚いて目を丸くしていた。だが夜月の言葉に、北斗は眉を潜め、真緒は柔らかい笑顔を向けた。
そんな二人にスバルは首を傾げた。


「なになに、ホッケーとサリーの知り合い?」

「うちの部長と仲が良いから、それで少し交流があっただけだ」

「俺は幼馴染に連れられてだな」

「へー。ていうか、転校生以外にも女の子が居たんだ。ウッキーは知ってた?」

「え、そりゃあ知ってるよ、有名だもん! 見たのは初めてだけど・・・・・・」


この中で夜月を知らないのはスバルと転校生だけだった。転校生は学院に来たばかりだから仕方がないが、すでに一年此処で過ごしているというのにただ自分一人だけが知らないことに、スバルは驚く。

一歩、奥で彼らを見守っていた零が前へ出る。


「『TrickStar』よ、今回このシナリオを用意したのはそこにおる夜月本人じゃ。その他にも、おぬしらの勝利のため、革命のために色々と手を回したのも夜月じゃ。感謝するがよい」


知らぬ間に、自分たちの見えないところで手を回していた夜月。それを知り、『TrickStar』の彼らは深々と礼をして感謝を述べた。夜月は首を振り、「見返りは今日の舞台で返してもらった、今後も期待しているよ」と朗笑した。


「それから、初めまして転校生さん」


『TrickStar』の一歩引いたところにいた転校生のプロデューサーに目線が映る。
転校生はビクリと肩を揺らした。それを安心させるように夜月は優し気な表情で微笑む。


「私は君と同じくプロデュース科の最初のテストケース、骨喰夜月だ。何かあったら何でも聞いてくれ。二人だけのプロデューサーで女の子同士、仲良くしましょ?」

「は、はい! よろしくお願いします」


転校生は少し緊張しながらお辞儀をする。自分にも同じ科の後輩ができて、夜月も嬉しそうだ。
『TrickStar』の彼らに姿を見せ、新しいプロデュース科の転校生にも挨拶を済ませた。やることはすべて終えた。あとは次の段階へ進むだけだ。

夜月はパチンと手を合わせ、ニコリを笑顔を向ける。


「それでは『TrickStar』、今夜は存分に勝利の余韻に浸って今後も頑張ってくれ」


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