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盤上を支配する悪食の女王



そこに、彼女は立っていた。

星々を集め編んだかのように輝く、長く伸びた銀糸の髪。雪のように、触れれば氷ってしまいそうなくらいの真っ白な肌。血のように赤く、心臓のように赤く、全てを射止める真っ赤な瞳。

紅月の背後に、彼女は君臨していた。
頬に手を添え、口端をあげ、あの魔王と同じ赤い瞳が楽し気に細められている。

――ああ、その様はまさに『女王』だ!!


「やあ、敬人。こうして顔を合わせるのは久しぶりね」


唇をひいて美しく微笑むその姿は、きっと誰をも魅了する。魅惑の微笑み。
だがその笑みに、背筋が凍りづく。


「夜月・・・・・・なぜだ・・・・・・なぜ、貴様が・・・・・・」


戸惑いと動揺でそのきれいな瞳が揺れる。思わず一歩足を退ける。「おい、蓮巳の旦那」「蓮巳殿!」傍らにいた鬼龍と神崎が心配そうに敬人を呼んだ。
だが敬人には今、目の前にいる人物しか目に入っていなかった。まるで、全てを喰らいつくす様に微笑む彼女しか。


「朔間さんっ! これはあんたの仕業かっ!」


背後のステージに立つ零を強くにらみつけた。
零はそれに可笑しそうに笑いながら応える。


「クク、我輩がこの気まぐれ女王を動かせるわけなかろう。我輩が転がされるなら、まだしものう?」


クスリと笑んだ。それは『女王』に向けられた。
敬人は微笑を絶やさない『女王』と対峙する。額に冷汗が流れる。


「ああ・・・・・・最高ね、最高ね敬人。私は待っていたわ、この舞台を。その幕上げをするのは貴方たち『UNDEAD』と『紅月』よ、まるで昔のようね!」


歓喜のあまり、声をあげる夜月。その姿は一瞬、『女王』ではない何か別の気配をちらつかせた。
敬人は思わず顔をしかめる。


「夜月・・・・・・」

「貴方もいい加減、私の本性に気付いたことでしょう? 長い付き合いだものね、敬人?」


ニコリ、夜月は朗笑した。
穏やかな笑みだった。それなのになぜ、ここまで恐怖心を駆り立ててくる。


「もう空腹で仕方がないの。退屈で仕方がなかったの。今夜は久しぶりの楽しい舞台。どうか私を満足させて、私の期待を裏切らずに、私の空腹を満たして」


恍惚に微笑む『女王』。長く細い美しい指が唇を撫で、手を己の腹に這わせた。
ゾワリと身の毛がよだつ。あの赤い瞳を向けられていない傍らの二人でさえ、息をすることを忘れている。


「さあ! 最高に私を楽しませて頂戴っ!」


両手を広げ、高らかに声をあげる、恍惚に溺れる『女王』。
彼女はまさに――――『悪食の女王』。


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