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煉獄のアレゴリー



レオが引きこもってから、学園の事態は急展開を続けた。新システムが投じられ、なんとか『Knights』は持ちこたえていたが、レオが引きこもったことにより完全に『fine』との主人公交代がなされた。『fine』は今、学園内で注目の的だ。

『Knights』はレオが不在のまま4人でまだその存在を保っている。曲だけ提供されたレオの曲を使い、使いまわして、まだ勝ち残っている。それだけ『Knights』が、泉が奮闘しているということだ。


「あ・・・・・・」

「・・・・・・やあ、泉」


零した声に振り返れば、泉が立っていた。久しぶりに泉の顔を見た。レオが引きこもってから、夜月は『Knights』と疎遠になり始めていた。泉自身も複雑な思いで夜月を避けがちになっていたことも原因だ。泉は『Knights』の下で、夜月は『五奇人』の下へ、それぞれそれぞれ居場所を別かった。

気まずい雰囲気を纏いながらも、2人はいつもレオを含めて3人で居た中庭へと足を運び、ベンチに腰を下ろした。会話は弾まず、途切れ途切れだった。最近はどうしているのか、変わったことは無いか、近況報告ばかり。


「あんたは、変わったね・・・・・・ほんと、人が変わったみたいに」

「・・・・・・そう見える?」


遠くから眺めて見ていた最近の夜月を思い還し、泉は呟くように言った。夜月は隣にいる泉に視線だけを向けながら聞き返す。泉は頷いて答える。


「そうでしょ。普段のあんたはクールで、滅多に笑ったりなんかしなかった」


泉は少し笑いながら言った。それは嘲笑か、少し馬鹿にした皮肉からなのか、思い出し笑いなのか、それは分からないけれど、冷めきった寂しい笑みだった。「あんたも、あいつも・・・・・・変わって・・・・・・」うつ向いた瞳が揺れている。無意識に口に出た呟きだった。

夜月は視線を前に戻した。
季節は秋になり、木々や花は枯れていき、どんよりとした雲が空を覆っている。


「私が変わったんじゃない」


泉は少しだけ顔を上げた。夜月は変わらず視線を真っ直ぐ向けたまま、こちらを見てはいなかった。


「今までの私が変わっていたんだよ」


その言葉に頷くことも相槌を打つことも無く、ただそっと息を吐いて視線を落とした。

冷たい風が容赦なく吹きかけた。身体は冷え、枯れ葉が辺りを舞う。沈黙が続いた中「ねぇ・・・・・・」と憚った声色が耳に届く。


「あいつは・・・・・・どう・・・・・・?」


両手を組んでいた手に力がこもったのが分かった。相変わらず泉の視線はうつ向いていた。「変わりないよ。相変わらず部屋にこもってる。私以外には扉を開こうとしない」そっけなく、現状を端的に告げた。泉は声色を沈ませ「そう・・・・・・」とだけ答えた。


「・・・・・・ごめん・・・・・・夜月」


唐突に告げられた。視線を泉に向けた。力んだ両手は震え、瞳は悔しさや負い目などで揺れていた。


「ごめん・・・・・・」


泉は何度も、その言葉を重ねた。


「謝らないでよ、泉・・・・・・私には・・・・・・謝られる資格なんて、無いんだから」


――レオが壊れることなど、最初から知って視えていたのだから。


これを最後に、泉と再び対話がなされたのは悲劇が起こってからだった。

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