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転じて愛をも意味するという



近々『Knights』は『チェス』を相手とする『チェックメイト』というライブに挑むことになった。大きなライブで、これに敗北すると損害が大きい。とても負けられなかった。

『チェス』というユニットは元のユニット名を引き継いだだけあって、分裂したユニットの中では最大規模だった。正当な後継者を謡っているだけあって勢いもある。人数が多ければ声量も大きい。これに対して、『Knights』は泉とレオの2人だけ。

これに対抗して泉はひとまず即席の傭兵として鳴上嵐と朔間凛月を引き入れた。けれどまだ数が足りない。その不安をかき消すため、レオと夜月は助っ人を集めに行った。


「あっ、いた! テンシ〜!」


英智の姿を見つけると、レオはテンシと叫んで手を振った。呼ばれて振り返った英智は愛想よく笑みを浮かべて答えた。


「やあ、月永くん、夜月ちゃん」


ニコリの笑んだ表情は人畜無害だ。英智はレオの隣に居る夜月にも向けて笑顔を浮かべた。するとレオは「知り合いだったのか!?」と大げさに驚いて見せた。英智は「そうだよ」と自慢するように言った。とはいっても暇なときにお茶会をするだけの仲だ。夜月もレオがテンシと呼ぶその人が英智とは知らなかった。


「それで、僕に何のようかな?」


話を促そうと英智が口を開くと、レオは「頼みたいことがあるんだ」と答えた。英智は不思議そうに首を傾げる。


「今度の『チェックメイト』で、『Knights』の助っ人として参加してほしいんだ」


英智は目を丸くしてレオを見つめ返した。レオは変わらず笑顔を浮かべたまま。思わずレオの隣に佇む夜月に視線を向けた。夜月はそっと視線を逸らして、レオを待っている。


「・・・・・・うん、いいよ」

「ほんとか!」


ダメもとで頼みに行ったために、了承されることにレオは驚きを見せる。英智は頷いて参加を申し出る。「僕だけじゃきっと足りないよね。つむぎにも僕から頼んでみるよ」英智の他にもう一人助っ人が入れば6人になる。レオは素直に喜んでありがとうと告げた。

そのまま『チェックメイト』の予定や時刻など必要なことを伝え終えると、レオと夜月は踵を返す。そのとき英智は「待って」と夜月を呼び止めた。レオは不思議そうに首を傾げる。

呼び止めた英智をじっと見つめると、夜月はレオに視線を戻した。


「レオ、先に行ってていいよ。後から追いつくよ」

「うーん・・・・・・うん、わかった」


レオは夜月と英智を交代に見つめた後、気前良くうなずいてひとり帰路を歩き出した。廊下を歩くレオの姿が見えなくなると、夜月は再び英智に視線を戻す。しばらく2人は何も言わず、ただ向き合って立ち尽くした。


「何も言わないの?」


英智は素直の疑問を口にする。夜月の表情は変わらない。


「君は、全部分かってるんでしょ。僕が、何をしようとしているのかも、全部」


真直ぐと視線を送る。すべてを見通している赤い瞳が、一体何を考えているのか、英智には理解ができなかった。英智は夜月がレオを何よりも大切にしていることを知っている。だからこそ、疑問だった。


「レオは、私が出るのが嫌みたい」


ぽつり、何の感情も籠ってない声色で答えられた。「私が動くのが嫌なみたい」と夜月は続ける。それがすべてだと、夜月はそう語っていた。

「君は、それでいいの?」自分が言うセリフではないと、英智自身も理解している。しかし聞かずにはいられなかった。返ってきた言葉は、ひどく冷たいものに感じられた。


「レオが望むことがすべてだよ」

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