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おまえを守るための騎士



「あ、そうだ。あんたに聞きたいことがあるんだけど」


「えっ、何? 好きな人とか教えてほしいの? おれはね〜、セナと夜月がだぁいすき!」「そうじゃなくて、俺たちの『ユニット』の名前決めなくちゃいけないの」


「えっ、『チェス』だろ?」

「それがさ、『チェス』は分裂したじゃん」


レオはリーダーになってユニットは『チェス』に名前が変更されたが、新しい制度の始まりで大所帯の『チェス』からいくつかの小規模の『ユニット』へ分裂を続けていた。それは泉もレオも例外ではない。また『ユニット』制度が試験運用され始め、『ユニット』の目章や所属メンバーの登録を行わなければならない。それを行わないと公式のドリフェスにも参加はできない、必須条件だった。

『チェス』の名前は他の『ユニット』に取られてしまったため、他の名前を決めてほしいと言うとレオは「え〜」と零した。


「名前とかどうでもいいな、正直。セナと夜月が何か良い感じのを考えてくれる?」

「俺たちが決めるわけにもいかないでしょ、あんたがリーダーなんだし」


レオは『チェス』が良いと繰り返す。『チェス』の音楽を聴き続けてきたレオにとっては特別な名前だった。しかし駄々をこねても仕方がない。

『チェス』から分裂した『ユニット』はチェスの駒の名前を付ける傾向がある。『キング』や『クィーン』のような名前は既に登録されており、アレンジをした名前もだいたいが出尽くしている状態だった。


「う〜・・・・・・あっ、じゃあ『Knights』は?」


泉がスマホで確認してみると『Knights』の名前はまだ登録されていないらしい。2人のユニット名は『Knights』に決まりそうだ。レオはそれを聞き、ふふんと嬉しそうに笑った。泉と夜月はそれを見て不思議に顔を見合わせた。


「何か意味でもあるのかい?」


『Knights』は騎士である『Knight』を複数形にしたものだ。まだ取られていない駒の名前以外に意味でも含めたのかと、夜月はレオにそう聞いてみる。


「うん! おまえを守る騎士って意味!」


満面の笑みで答えるレオの言葉に、夜月は目を丸くする。その横で「夜月を守る騎士?」と泉が首を傾げた。レオは頷く。「そう! おれとセナが騎士で、夜月がお姫様。だから『Knights』。夜月を守るための騎士!」自信満々にレオは応える。

「ふーん。でも夜月はどっちかって言うと、お姫様より女王様って感じじゃない?」話を聞いた泉は相槌を打ちながら、少し揶揄うように笑って夜月を見た。夜月はお姫様のように可愛げがあるわけでもなく、どちらかと言うと女王のように威厳がある。泉がそう言うと「そうかぁ?」と今度はレオが首を傾げた。

一方夜月は意味が分からないと眉をひそめる。


「その意味付けには理解できないよ。そもそも守られる必要ないだろう」

「いや、それはそうでもないんじゃない?」


夜月の言葉に泉がすぐに答えた。

「夜月の信者が付き纏ってくることもあるでしょ」泉の言う通り、夜月に付きまとってくる人間はそこそこいる。夜月は気にしていないようだが、それをいつも泉とレオが心配していた。「それに加えて最近は学園自体不穏だし、いま俺たちは睨まれてるからね。いつも一緒にいるあんたは良い的でしょ」泉はそう続ける。確かに連勝を続けている2人は周りから仇のような視線を集めていた。そしてプロデュース科に籍を置く夜月は、いつもこの2人についている。夜月の立場的にも敵は多い。


「おれたちが夜月の居場所になれたらいいなって思ったんだ」


視線を向ければ、レオはニコリと笑顔を浮かべていた。「夜月が逃げる場所になれたらって、そんな場所を作れたらいいなって」夢物語を語るようにレオは続ける。

「だから『Knights』、良い名前だろ?」人懐っこい笑みを浮かべて泉に同意を求めれば、泉は「そうだねぇ、悪くないんじゃない?」と気に入ったと言わんばかりに笑って見せた。


「女王様ひとりくらい、華麗に守ってあげるよ」


自身気に言う泉に、夜月は困ったような笑みを浮かべた。


「・・・・・・そう。頼りにしているよ、騎士様」


そんな場所があったならと、夜月は優しい夢を見た。

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