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クリスマス休暇に入ると、予想していたより楽しいことでいっぱいだった。そのおかげで、ロンやハリーそしてディーアもニコラス・フラメルのことを忘れていた。
閑散とした暖炉で温かい談話室で、ハリーとロンはよく魔法使いのチェスをして遊んでいた。マグルのチェスと同じだけど、駒が一つひとつ生きているのが大きな違いだ。
ディーアは貸し切り状態になった女子寮で一人毛布にくるまりながら本を読んだり勉強をしたり、おもにスネイプからもらった課題を順調に進めていた。そしてよく同室のハーマイオニーやラベンダーやパーバティから手紙も届いた。一人で寮に残ったのを気にかけてくれていたみたいだ。
そんなディーアを外へ連れ出したのはフレッドとジョージだ。
部屋で一人本を読み、寒いからと談話室の暖炉で温まるディーアを、二人は半ば無理やり外へと連れだす。悪戯好きの双子に付き合って居残ってる先生に悪戯を仕掛けたり、学校を探索して新しい抜け穴を見つけたり、積もった雪で遊んだりした。
フレッドとジョージと遊ぶのは楽しくて、いつのまにかディーアは部屋にこもらず双子と一緒に、毎日のように外へ遊びにでかけていた。
クリスマスの朝。一層寒い空気に目が覚めた。貸し切り状態の部屋で微睡みながらゴロゴロしていると、部屋の外から元気な声が聞こえてきた。ディーアはそれに誘われ、ベッドから這い出てガウンを手に取った。
ガウンを羽織って階段を降り談話室を覗くと、居残り組であるパーシー、フレッド、ジョージ、ロン、ハリーが暖炉の前に集まってゴソゴソしていた。すると、ハリーがディーアに気づいて手招きをする。
「ディーアもおいでよ!」
「君の分もあるよ」
続けてロンがそういう。手招きに誘われて暖炉まで来ると、フレッドとジョージが間を開けてくれて、ディーアは二人の間に座った。
「ほら、開けてみろよ」
「この辺のは全部ディーアのだぜ」
双子が差し出したのはいくつかのプレゼントボックス。どうやらみんなでクリスマスプレゼントを開けていたみたいだ。自分宛てに送られたそれらを受け取り、ディーアはワクワクした気持ちで開いた。
最初はハーマイオニー。可愛らしい箱に何種類か素材の良い栞が入っていた。読書好きのハーマイオニーらしい。ラベンダーとパーバティはアクセサリーと香りのいいヘアオイル。お洒落で女の子らしい二人にぴったりだ。
他と比べてシンプルな箱を開けてみると、上質なヘアアクセサリーが入っていた。差出人を見てみると、そこにはセドリック・ディゴリーの名前が入っている。セドリックがクリスマス前に言っていたのはこのことだったのだ。
最後に手に取ったのは、少しもっこりとした包み。
「お、ディーアにも特製セーターが贈られたか」
「これでディーアもウィーズリー家の仲間入りだ」
包みを見たフレッドとジョージはそういう。
「それ、僕のママからだよ。ハリーとディーアがプレゼントをもらう当てがないかもしれないって送ったんだ」
ロンはハリーとディーアの事情を知っている。それを気遣ってくれたらしい。どうやらハリーもウィーズリー家特製セーターを貰ったらしい。よく見れば、ウィーズリー家のみんなはそのセーターを着ていた。
開けてみると、手作りのセーターが入っていて、真ん中には大きく名前のイニシャルが入っていた。
「嬉しい、とっても温かそう。ありがとうってお礼を伝えといて」
「うん、わかった。ママも喜ぶよ」
ロンは頷く。
プレゼントをもらう経験も贈る経験もなかったため、それほど期待もしていなかった。けれど実際には、こんなに多くのプレゼントをもらえた。人生最高のクリスマスだ、とディーアは心から思う。
クリスマスには間に合わないけど、帰ってきたみんなに何かお礼を返そうと、プレゼントを見下ろしながら考えた。
「そんで、俺らからはコレな」
「感謝しろよ〜、ディーア」
ポン、と同じタイミングで両隣から箱で頭を小突かれる。二人から箱を受け取ると「開けてみろよ」とジョージに促され、リボンを解く。箱から出てきたのはマフラーや手袋、耳当てや帽子といった、防寒具一式だった。「俺らが選んだんだぜ、良いデザインだろう」自慢げにフレッドが言う。確かにいいデザインだ。
「いっつも毛布にくるまってたからな。寒がりなんだと思ってさ」ジョージが言う。
「ああ。こんだけありゃ雪合戦もできるだろ」フレッドが言う。
「え、雪合戦するの?」フレッドの言葉に初意味だと答える。
「当たり前だろ。ホグワーツにいるから魔法使い放題だ」やる気満々の二人はそう言って楽しそうに笑う。どうやらもう決定事項だったみたいだ。
楽しそうに雪合戦の話をする二人に挟まれながら、ディーアは大切にプレゼントたちを抱えなおす。
「ありがとう、フレッド、ジョージ」
嬉しそうに緩んだ笑みを浮かべるディーアに、二人はお互いに顔を合わせ、ニッと笑った。
「「どういたしまして」」