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26


十一月も終わりに差し掛かったころ。来月にはクリスマスがあり、学校も前学期が終わり生徒はクリスマス休暇に入る。クリスマス休暇にはほとんどの生徒が実家に帰るらしいが、居残る生徒も一握り程度いるそうだ。

ハーマイオニーは実家に帰ると言っていたが、ロンは両親がルーマニアへ行っているから今年は居残ると言っていた。

あのクィディッチ以来、4人でニコラス・フラメルについて調べた。図書室の本を調べられるだけ調べて、もう百回ぐらい調べたと思う。それでもなかなか見つからな状況が続いている。


そんな今日この頃、ディーアは字の勉強と魔法薬の勉強をするために図書室へと向かった。せっかくスネイプ先生から特別に課題を出してもらえたのだ。しっかりとやり遂げたい。そのためにも、早く字の習得もしなければ。

最近はニコラス・フラメルについて調べるばかりで、あまり勉強できずにいた。これを取り戻そうと、ディーアは意気込んで図書室へ急いだ。

図書室に取り付けられている席を取り、机に筆記用具と本を広げる。そして参考書を取ろうと、梯子をかけ、上の段に差し込まれた本を取った時だった。


「また君は。レディとしての自覚がないのか?」

「あ、マルフォイ」


梯子に乗ったまま声のしたほうを振り返れば、呆れた顔をしてこちらを見上げるマルフォイがいた。

以前も同じようなことを言われた。「でもほら、マントがあるから見えないわ」背丈と同じぐらいのマントを羽織っている。だからスカートの中が見える心配はないと言えば、「そういう問題じゃない」とまた呆れ顔をされる。

梯子から降りて、参考書を先ほどと同じ場所に広げる。椅子に腰かけ羽ペンを持つ。マルフォイは立ち去る様子はなく、隣の机に体重をかけて凭れ掛かった。


「君、クリスマスはどうするんだい? 引き取り先の家には帰るんだろう?」

「え、帰らないわよ」


「私はホグワーツに残るわ」当たり前でしょ、という様子でいうとマルフォイは目を丸くした。その様子を見て「あれ、言ってなかったっけ?」とディーアは首を傾げた。


「私、マグルの孤児院で育ったけど此処へ来る少し前に出てって、今は母が暮らしていた家に住んでいるの」


だから帰っても誰もいない。此処に居たほうがハリーやロンたちもいて、楽しい。そういう事情があるからホグワーツに残るとディーアが言うと、マルフォイは信じられないと口をパクパクとさせた。

エヴァレスト家は純血の一族だ。没落したと言っても、その高貴さは変わらない。その末裔であるディーアが、まさかマグルの孤児院で今まで暮らしていたなど、誰が思うだろうか。

いろいろ問いただしたいところはあるが、ディーアの家庭事情は事情が事情である。それ以上ことを広げるのはやめ、マルフォイは喉まで出かかった言葉を飲み込み、声に発するのをこらえた。


「なら・・・・・・きみは、此処でクリスマスを過ごすのか」

「ええ、そうよ」

「そうか・・・・・・」


マルフォイの言葉が濁る。それ以上何も言わないマルフォイを見上げてみると、どうやら気にしてくれていたらしい。そんな一面に少し驚きながらも嬉しく思い、「大丈夫よ、此処のほうが楽しいもの」と笑顔で言う。「ふん、お気楽な奴だな」マルフォイはそう言い残して立ち去ってしまった。

結局、マルフォイは何をしに来たのかわからないま図書室を出ていってしまう。ディーアは不思議に思いながらも、本に目を移し羽ペンを紙の上に走らせた。