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23


十一月に入ると、とても寒くなった。学校を囲む山は灰色に凍り付き、湖は冷たい鋼のように張りつめていた。それと同時、生徒や教師が一段と盛り上がるクィディッチのシーズンが到来していた。土曜日は、いよいよハリーの初試合だ。対戦相手はスリザリンらしい。

ハリーは寮チームの秘密兵器として極秘にされており、練習のときも誰もハリーの姿を見ていないというのに、いつのまにかハリーがシーカーである事実は周知になっていた。周りはそんなハリーに期待のまなざしを送ったり、貶して揶揄ったりした。

ハーマイオニーやディーアに手伝ってもらいながら課題を終わらせ、クィディッチの練習に明け暮れる毎日を、ハリーは過ごす。最近はハーマイオニーに貸してもらった『クィディッチ今昔』をよく読んでいる。ディーアもすでに読み終えており、一緒になってハリーに勧めた。

しかし不運によりスネイプに本を取り上げられた。その時のスネイプは片足を引き摺って歩いていて、どうやらけがをしている様子だった。「どうしたのかな」と心配そうにつぶやくディーアに「知るもんか」とロンは素気なく応える。

そしてとうとう、試合当日を迎えた。その日は晴れ渡った寒い朝だった。

寒くてなかなかベッドから出てこなかったディーアをハーマイオニーは布団を剥ぎ取ってお越し、ちょっとばかりまだ眠そうにしているディーアの手を引いて大広間へたどり着く。大広間にはこんがり焼けたソーセージのおいしそうなにおいと、クィディッチの好試合を期待するウキウキしたざわめきで満たされていた。


「朝食、しっかり食べないと」

「何も食べたくないよ」

「せめてトーストだけでも」

「お腹すいてないんだよ」


ロンは出された朝食を掻き込むように食べている一方で、ハリーは試合に緊張して食欲が出なかった。心配してハーマイオニーが優しい声でハリーに言うが、ハリーは首を横に振る。


「ハリー、力をつけておけよ。シーカーは真っ先に敵に狙われるぞ」

「わざわざご親切に」


自分の皿のソーセージにケチャップを山盛りに絞り出して、忠告するシェイマスを眺めながらハリーは応えた。

入場まであと一時間あったというのに、一時間はあっという間に過ぎ去ってそろそろ試合が始まろうとしていた。結局ハリーは、ハーマイオニーの努力もあってトースト一枚だけを食べ切った。


「それじゃあハリー、頑張ってね」

「うん。ありがとう、ディーア」


選手であるハリーは、観客へ向かうディーアたちと行く場所が違う。少し元気のないハリーを励ましながら、ディーアたちはハリーを見送った。

ハリーも見送り、自分たちは観客席へ向かおうと足を踏み出しところで、背後からズシリと体重が乗っかかる。


「「やあ、ディーア」」

「フレッド、ジョージ」


肩に腕をまわして乗りかかってきたのは双子のフレッドとジョージ。2人は上機嫌な様子で、今から始まろうとしている試合にワクワクしているようだった。

「2人も試合、頑張ってね」ディーアは背に乗りかかる2人に笑顔で振り返った。
「ああ、スリザリンなんて負かしてやるぜ」ジョージは自信満々に応える。
「しっかり俺らの活躍見とけよ、ディーア」フレッドはディーアの頬を小突きながら言う。

「うん、応援してる」ディーアは満面な笑みで答えた。それに満足し、2人も早足で選手が集まる場所へ向かいだす。それを見送って、ディーアは今度こそ論とハーマイオニーと合流するべく観戦場へと足を向けた。