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15


その日の午後三時半、グリフィンドール寮生たちは初めての飛行訓練を受けるため、正面階段から肯定へと急いだ。芝生を歩いていくと、肯定の反対側に禁じられた森が見える。
スリザリン寮生は既に到着していて、二十本の箒が地面に整然と並べられていた。

マダム・フーチが来る。マダム・フーチは「みんな箒の傍に立って。さあ、早く」とガミガミと言う。厳しそうな雰囲気は、マクゴナガル先生に似ているかもしれない。

スリザリン寮生とグリフィンドール寮生たちは、指示通り箒の傍に立つ。ディーアはハリーとハーマイオニーの隣に立った。

マダム・フーチの合図で、みんなが一斉に「上がれ!」と叫ぶ。易々と箒を手の中に収めたのは、ハリーとディーアそしてマルフォイの三人だけだった。周りの人たちの箒を見れば、地面にコロコロと転がっているのが多い。

数分してみんなが手に箒を持つと、マダム・フーチは次の段階へ進んだ。


「私が笛を吹いたら、地面を強くけってください。二メートルぐらい浮上して、前かがみになってすぐ降りてきてください。笛を吹いたらですよ。一、二の――」


ところが、マダム・フーチが笛を吹く前に、緊張したネビルが地面を蹴って宙に浮いてしまった。宙に浮いたネビルは怖々とした表情へ変わっていき、降りることもできず箒はユラユラと揺れ、突然箒はまっすぐと突進した。


「ネビル・ロングボトム! 戻ってきなさい!」


ネビルは箒を制御できず、グングンと飛んでいく。箒に揺られていると、ついにネビルは箒から落ちてしまい、ガーン――ドサッ――ボキッという嫌な音を立てて、ネビルは草の上に墜落した。


「ネビル!」


マダム・フーチがすぐに駆け寄りかがみこんだ。「まあまあ、手首が折れてる」ネビルの手首を見て呟いた。「さあさあ、ネビル。大丈夫。立って」


「この子を医務室に連れて行く間、箒はそのままにしておきなさい。さもないと、クィディッチの『ク』の字を言う前にホグワーツから出てってもらいます」


涙で顔をグチャグチャにしたネビルを支えながら、二人は城へ入っていく。二人が姿を消した時、マルフォイが口を開いた。


「あいつの顔を見たか? あの大まぬけの」


マルフォイの言葉に、他のスリザリン寮生も囃し立てる。


「やめて、マルフォイ」

「なんだ、エヴァレスト。ロングボトムの肩を持つのか?」

「エヴァレストったら、あんな泣き虫小僧に気があるなんて知らなかったわ」

「違うわ! 大切な友達よ!」


マルフォイに続いて冷やかしたのは、気の強そうな女の子――パンジー・パーキンソン――だった。
ディーアが強く言い返すと、それに対しても鼻で笑いクスクスと囃し立てる。


「みろよ、ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」


マルフォイが草むらに転がった球体を拾い上げた。それは、フクロウ便でネビルの祖母が送ってきた『思いだし玉』だった。マルフォイは高々と思いだし玉を差し上げる。


「それはネビルのよ」

「だったらなんだ。落としたのはあの大まぬけだろ」

「そんな横暴な――!」


二度も自分に盾をついたディーアが気に入らなかったのか、マルフォイは目を鋭くして、少し怒鳴りつけるように言葉を鋭くした。

「返せよマルフォイ」ハリーがマルフォイに強い口調で言う。
「嫌だね。ロングボトム自身にみつけさせる」思いだし玉をちらつかせて、箒に乗って徐々に空へと上がっていく。


「どうした、ポッター? 此処まで取りに来いよ」


ハリーはマルフォイの挑発に乗って箒を掴んだ。


「ダメ! フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」


ハーマイオニーは叫んでハリーを止めたが、ハリーはハーマイオニーを一瞥するだけで、無視して箒にまたがり地面を蹴る。

「なんて愚かなの」ハーマイオニーが呟いた言葉に「でも、ハリーの気持ちもわかるよ」とディーアが呟き返す。

ハリーはマルフォイが投げた思いだし玉を追いかけ、突進していく。玉が城にぶつかる寸前で、ハリーが玉をキャッチする。箒に乗ったことがないというのに、凄いテクニックを見せつけたハリーは、自分に驚きながらも笑顔でみんなのところへ降りてくる。だが、運悪くマクゴナガル先生が現れた。


「ミスター・ポッター、来なさい」


連れて行こうとするマクゴナガル先生にパーバティとロンが口を出すが、ピシャリと黙らせられ、ハリーはマクゴナガル先生に連れていかれる。
後ろでマルフォイたちは嘲わらい、ハーマイオニーは自業自得だと鼻息を荒くした。