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04


グリンゴッツ銀行を出て、まずは杖を買いに行こうとハグリッドがオリバンダーの店を指さした。ハグリッドは少し用事があるから先に行っててくれと二人に言った。
ハリーとディーアは一度ハグリットと別れ、オリバンダーの店を目指した。

「ねえ、聞いてもいい?」ハリーが遠慮がちに言う。「君はあそこに住んでるの?」ハリーはディーアがいた、人里離れた少し古い大きな家を思いだした。
「ううん」ディーアは首を横に振る。


「でも住む予定。一昨日、孤児院から逃げてきたの。でも、もともと母さんの家だったみたいだから」


とくに気にした様子はなく、ディーアは笑いながらそう言った。けれどハリーは、無神経なことを言ってしまったと後悔した。


「ごめん……」

「ううん、大丈夫」


ディーアは気にしないでとハリーに笑いかけた。


「私も聞いてもいい? ハリーはどこに住んでるの?」

「従兄弟のダドリーのとこだよ。おじさんとおばさんは意地悪だし、ダドリーは呆れるくらい我儘なんだ。両親は生まれてすぐに死んじゃった」


ハリーも生まれてすぐに両親を失くしてしまった。その境遇はディーアとまったく同じだった。

「ハグリットから聞いたけど、僕の両親も魔法使いだったんだ」そう語るハリーにディーアも返した。「私も、母さんが魔女だって聞いたよ。父さんは、知らないけど」


「嫌かもしれないけど……私たち、境遇が一緒ね」

「うん。同い年の友達も君が初めてだよ、ディーア」

「私もよ。友達ははじめて。わたしたち、きっと良い親友になれるわ」

「僕もそう思うよ」


二人はお互い顔を見合わせ、嬉しそうに笑いあった。
今まで出会えなかった、同じ境遇にいた人。今まで持てなかった同い年の友人。二人はお互いの存在に感謝し、何よりも近い存在だと心から感じた。

オリバンダーの店の扉を押して中へと入る。扉につけられたベルがチリンチリンと店内に鳴り響く。古びた店は趣があり、少し居心地の良さを感じる。店内の奥には箱が乱雑に仕舞われていた。

二人が店内を見渡していると、奥から突然人が現れ、肩を大きく揺らした。奥から現れた年老いた人とは、二人を見てニコリと笑う。


「そろそろお目にかかれると思っておりましたよ。ハリー・ポッターさん、ディーア・エヴァレスト嬢」


「貴方方のご両親が杖に買いにいらしたのが、つい昨日のようだ」オリバンダーは乱雑に仕舞われた箱を見比べながら言う。話を聞くに、大抵の魔法使いや魔女たちはオリバンダーの店で買うようだ。

オリバンダーは一つの箱を棚から取り出し、中に入った杖を取り出した。


「ではまず、エヴァレスト嬢から。欧州楢ヨーロッパナラ不死鳥フォークスの尾羽根」


杖を差し出され、戸惑いながらも受け取る。どうすればいいのかわからず、オリバンダーを見れば「振ってみなされ」と言われ、杖を振った。途端に、店内に置かれていた資料の紙やらが突然起こった風で飛び散った。


「合わなかったようじゃな。では……榛の木ハンノキとドラゴンの心臓の琴線」


杖を返し、新たに出した杖を受け取る。すると、不思議なことに杖はしっかりと手になじみ。これが自分の杖なのだと、何故か直感で分かった。「どうやら、杖が合ったようだ」オリバンダーはニコリと笑った。


「貴方のお母上――リディア嬢――は、欧州楢ヨーロッパナラ)一角獣ユニコーンのたてがみじゃった。君の杖ハンノキは無言呪文の魔法に向いており、それゆえ高度な能力を持つ魔女や魔法使いにしか使いこなせないといわれる。上手に学びなさい」

「ありがとう、オリバンダーさん」


ディーアは自分ものとなった杖を大事に握り、オリバンダーに礼を告げた。

「さて、ではポッターさん」オリバンダーはハリーに目を向け、再び杖をえらびに店の奥へと向かった。ハリーが最初に振った杖は奥にしまっていた箱を次々とひっくり返し、二本目の杖は傍にあった花瓶を割ってしまった。「難しい客だ」と呟き、杖をえらびに行くオリバンダー。そして、三本目に持ってきた杖は、ハリーが手に取った瞬間不思議な現象が起こった。

「不思議じゃ……不思議じゃ……」そうつぶやくオリバンダーに「あのう。なにが不思議なんですか?」とハリーが問いかける。


「わしは売った杖をすべて覚えておる。あなたの杖に入った不死鳥の尾羽は、もう一枚だけ提供した。あなたがこの杖を持つ運命にあったとは……兄弟羽が……兄弟杖がその傷を負わせたというのに」


ハリーは自分の額にある稲妻の傷をふれた。


「イチイの木じゃった。杖は持ち主の魔法使いを選ぶ。ポッターさん、あなたは偉大なことをなさるだろう。『名前を言ってはいけないあの人』も、ある意味では偉大なことをした。恐ろしいことだが……」


オリバンダーの言う『名前を言ってはいけないあの人』がだれだか、二人にはわからない。ただ、恐怖のあまり口をつぐんでいるというのは、容易に理解できた。

ハリーとディーアは杖の代金に七ガリオンを支払い、オリバンダーのお辞儀に見送られ店を出た。店を出ると、用事と言って途中で別れたハグリッドが片手に白い梟が入った籠を掲げ、笑顔で待っていた。


「ハッピーバースデー、ハリー!」


どうやらハリーの誕生日プレゼントらしい。「誕生日だったの?」「うん、つい昨日ね」言ってくれればよかったのにと愚痴を述べた後、ディーアはハリーにお祝いの言葉を捧げた。ハリーは今までまともに誕生日を祝われたことがなく、ディーアとハグリッドに祝われたことが心から嬉しかった。


「お前さんにもあげたかったんだがな。お前さんのばあさん動物に凄く懐かれちょった。だから、安易に選べなくてな……」

「祖母を知ってるの……?」


突然の事実にディーアは驚いてハグリッドを見上げた。
「ああ」ハグリッドは頷く。


「エリノアは二つ上の学年だったんだ。美人で優しくて、何でもできる奴でな。動物好きで、心が通じ合ってるようだった」

「エリノア……」


ここ最近で、今まで知らなかった家族のことをたくさん知ることができた。初めて知った祖母の名前。初めて知った祖母や母の正体。けれど、今まで出てきたのは祖母と母だけ。父のことは聞かなかった。

「ねえ、私の父さんのことは知ってる?」ハグリッドにそう問いかける。
「いや……悪いが知らねえんだ」ハグリッドは申し訳なさそうに言った。ディーアは落胆したが、それ以上は聞かなかった。


「まだ時間があるな。どっかで何か食べるか」


三人はたくさんの荷物を抱え、食事場所に向かった。