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03


『一年生は次の物が必要です
 制服
 普段着のローブ三着(黒)
 普段着の三角帽(黒)一個 昼用
 安全手袋(ドラゴンの革またはそれに類するもの)一組
 冬用マント一着(黒、銀ボタン)
 衣類には名前をつけておくこと

 教科書
 全生徒は次の教科書を各一冊準備すること
 「基本呪文集(一学年用)」 ミランダ・ゴスホーク著
 「魔法史」 バチルダ・バグショット著
 「魔法論」 アドルバード・ワフリング著
 「変身術入門」 エメリック・スィッチ著
 「薬草ときのこ千種」 フィリダ・スポア著
 「魔法薬調合法」 アージニウス・ジガー著
 「幻の動物とその生息地」 ニュート・スキャマンダー著
 「闇の力―護身術入門」 クエンティン・トリンブル著

 その他学用品
 杖(一)
 大鍋(錫製、標準、2型)
 ガラス製またはクリスタル製の薬瓶(一組)
 望遠鏡(一)
 真鍮製はかり(一組)

 ふくろう、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい
 一年生は個人用箒の持参は許されないことを、保護者はご確認ください』


ハグリッドの後ろを歩きながら、ハリーとディーアは手紙の中に入っていた入学準備のリストを覗き込んでいた。今まで聞いたこともないものや教科書名を見て、ホグワーツ魔法学校ではいったいどんなことを学ぶのだろうと、期待に胸を膨らませていた。

「全部ロンドンで買うの?」ハリーがリストから顔をあげて聞いた。
「ああ。何処で買うか、知ってればな」ハグリッドは首を縦に振る。

ふと、ハグリッドが辺りを見渡し行きかう人を眺めながらぼやいた。「マグルの連中はよく魔法なしでやっていけるもんだ」


「マグル?」

「普通の人たち。魔法使いたちは使えない人をそう呼ぶんだって」


聞いたことない言葉を聞き返すと、ハグリッドではなくハリーが答えた。ハリーもつい昨日知ったばかりだ。

三人はある建物の中へと入った。”漏れ鍋”と呼ばれるパブは魔法使いたちのパブであるらしい。薄暗いなかハグリッドの背中を二人は中を見渡しながらついていく。「ホグワーツの仕事でね。今からハリーとディーアの入学準備をしなきゃならねえ」ハグリッドを飲みに誘った店主にそう言った途端、騒がしい話し声が一瞬にして消え去った。


「まさか……ハリー・ポッターか……なんたる光栄」


店の人々の誰もがハリーを凝視し、こそこそと話したり感嘆の声をあげていた。ハリー自身も目を見開いて驚いている。周りの人たちは口々に光栄だと言い、ハリーに握手を求めた。その様子をハリーの背中から見ていたディーアは、どうしてハリーが有名なのか疑問に思っていた。

ハリーに近寄ってきた群れの中に、ホグワーツの先生がいたらしい。クィリナス・クィレルと呼ばれた頭にターバンをまいた先生は、ホグワーツで『闇の魔術に対する防衛術』という科目を教えていると、ハグリッドが言った。

「そんじゃ、また学校でな。クィレル先生」とひとときの別れを告げてハグリッドはまた歩み出す。ハリーやディーアは周りの視線を気にしながら後を追った。あるレンガの壁の前で立ち止まると、ハグリッドは傘で三度レンガをノックした。途端にレンガは震えだし、クネクネとレンガの一つ一つが移動し、道を開けた。
レンガの先には多くの店が並び、多くの人であふれかえっていた。


「ようこそ、ダイアゴン横町へ」


ハグリッドはにこーっと笑った。

目の前に広がる光景に二人はポカーンと口を開け、驚きを隠せないでいた。再び歩き出すハグリッドに左右を見渡しながらついていく。

溢れかえる人たちは、絵本に出てくるような魔女や魔法使いの服を着ている。とんがり帽子がまさにそれだ。売っているものも不思議でならない。店では多くのフクロウを売っていたり、箒を売っていたりする。

こんなものが普通にあるのが、魔法の世界なんだ……。

大きなハグリッドのあとをついていくのは良いが、人が多すぎて小さなハリーやディーアは見失ってしまいそうだ。ハリーはすぐそばにいるディーアとはぐれないように、手を伸ばす。手を繋いだ二人はハグリッドに言った。


「ねえ、ハグリッド。僕、お金持ってないんだ」

「私も持ってないわ、そんなもの」

「お前さんらの金ならそこにある。グリンゴッツ銀行だ。ホグワーツの次に安全な場所だ」


ハグリッドの指さしたほうを見ると、この通りで一番大きな建物がたっていた。魔法界での銀行はどうやら此処であるらしい。

中へ入ると、大人の身長ぐらいある机の上で、小人のようなひとたちが金貨を計算していた。「アレは、なに?」「小鬼ゴブリンだ。頭は良いが、愛想は良くねえ」ハグリッドの言う通り、愛想は良くなさそうだ。

まっすぐ進んだところにいるゴブリンの目の前で止まる。このゴブリンがいわゆる受付の人だろう。


「ハリー・ポッターさんとディーア・エヴァレストさんの金庫を開けたい」


ゴブリンはハグリッドから、身を乗り出してハリーとディーアを見下ろした。「鍵はお持ちですか?」ゴブリンが問いかける。
そんなものを持っている記憶はなく、どうしたらいいのか悩んでいればハグリッドが二つの鍵をポケットから取り出した。「確かどっかにあったはずだ……ああ、あった」小さな金色の鍵だ。


「それと、ダンブルドアから手紙を預かってきちょる。例のものについてだ」


小さな声で告げたハグリッドは、鍵とは別に封筒を差し出す。「だれかに三つの金庫を案内させましょう」ゴブリンはそう言い、案内役を呼び出す。

金庫の中は洞窟の中のようでとても暗かった。洞窟の中をレールに乗ってクネクネと速い速度で移動する乗り物は、まるで遊園地にでもあるジェットコースターのように思えた。

金庫は最初はハリー、次にディーアの順で止まった。二人は自分の金庫に驚愕した。親たちが残したお金がこんなにも残っているとは思いもいなかったのだ。とくにディーアの金庫はハリーの倍以上の金貨が預けられていた。孤児院に預けられていたなんて思えないほどの金貨が、そこにはあった。


「金貨がガリオンだ。銀貨がシックルで、十七シックルで一ガリオン、一シックルは二十九クヌートだ。簡単だろう?」

「思ってたよりね」

「複雑じゃなくてよかった」

「ホントにね」


つぎに向かった先は七一三番金庫は、先ほどと違いカギ穴が一切なかった。「下がってください」ゴブリンはそう言い、長く伸びた爪先で扉をなぞると、次々にロックが開く音がして重い扉が開いた。中に入っていたのは小さな包み。
ハグリットはそれを取り出し、胸ポケットにしまい込んだ。


「なにかは聞いてくれるな。極秘なんだ」


ハリーとディーアは頷いた。
「そんじゃ金も持ったことだし、そろそろ買いに行かんとな」にこっと笑ったハグリッド。三人は足早に入学準備必要なモノをそろへに向かった。