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05


薄暗い飲食店に入り、空腹のおなかを満たす。食事をしている最中、ハリーは何かを考えこんで黙っていたが、何かを確信し、やっと口を開いた。


「そいつがきっとパパとママを殺したんだ。この傷をつけた奴が……そいつを知ってるね?」


”そいつ”というのは『名前を言ってはいけないあの人』のことだ。先ほど、オリバンダーの店で彼が言っていた。
ハグリッドはそれを聞くと思い息を吐きだした。「ハリー、ディーア。魔法使いってのは良いやつばかりじゃねえ、悪いやつもいる」


「ある魔法使いが悪の道に走った。そいつの名は……そいつの、名は……」


ハグリッドはその人について話そうとしたが、重要な名前を言うところで押し黙ってしまった。言いにくそうな雰囲気に「言いにくいなら、紙に名前を書いたら?」とディーアが助け舟を出すが「綴りがわからねえ」と返されてしまった。


「言うぞ……ヴォルデモート」


とうとう口に出す決断をし、小さな声でその名を告げた。ハリーとディーアがその名前を同時に繰り返すと、ハグリッドは「シーッ!」と人差し指を立てて周りの人に聞かれていないか確認した。


「暗黒な時代があった。そいつに立ち向かった者は全員殺された。ディーアの母親もその一人だ。生き残った者はいない、お前さん以外はな」


ハグリッドはそう言ってハリーを指さす。ハリーは信じられないと言うように「ぼく?」と聞き返した。


「その傷はただの傷じゃねえ。呪いをはじき返してできたもんだ」


ディーアはそれを聞いて、ハリーの傷をまじまじと見つめた。確かに不思議な形をした傷だとは思ったが、まさかそう言ったものだとは思いもよらなかった。

「それで……そのひとはどうなったの……?」ディーアが恐る恐るハグリッドに聞く。
「死んだって言われとる。だが、奴はきっとどこかで生きてる。弱ってるだけだ」ハグリッドは確かな確信を持ってそう言い切った。


「だからお前さんを魔法界で知らない奴はいねえ。生き残った男の子だからな」


ハリーはどう反応していいのかわからずにいた。それもそうだろう。自分は、自分の正体も知らずに生きてきたというのに、こちらの世界では誰もが自分を知っているのだと言う。戸惑うはずがない。


「そういうお前さんも有名だぞ、ディーア」


突然、矛先が自分に向いてディーアは驚いた。


「エヴァレスト家は魔法界でも有名な一家だ。お前さんの名前を知らない奴も、そう居ないだろうさ」


ハリーほど有名じゃなくとも、自分も有名であるには変わりないらしい。
二人はこれから待ち受ける魔法界での一抹の不安を抱えながら、口に食べ物を運んだ。