私の知らないSE.RE.PH.。
その地で私は、再び目覚めた――――
底へと堕ちた。
この階層に残った、記憶を取り戻せず、自分を取り戻せずにいたマスターたちは、人間たちは、SE.RE.PH.が送り出した人形によって虐殺される。
殺される。コロサレル。
死ぬ。シヌ。
もう上へは登れない。もう上へはあがれない。
この階層は消滅する。
上がれない以上、人形に殺されなくとも消滅してしまう。
ああ、哀れな。
ああ、悲しき運命よ。
人形が追ってくる。
逃がさない。その命を取るまで。
傷だらけの身体を何とか支えながら、女は逃げる。
人形に斬られた傷。友につけられた傷。
歩け、歩け――!
此処で終わるわけにはいかない。
私は上がる。上へとのぼる。上を目指す。
諦めたくない。諦めたりはしない。
階層のそこへたどり着くと、そこは閉ざされた戦場だった。
隔離された戦場。
荒れ果てた戦場。
いまは旧き戦場。
辺りはには残骸。
壊れた戦車やその車輪。または壊れた幾多の槍。折られたの幾多の矢。転がる多くの弓。
その地の中心に、金色の輝く槍が立っていた。
細く長い槍。先端は太陽を模した形をしている。
見知った槍――。
それに向かって重い足を一歩、また一歩と進める。
後ろには表情のない人形。
ゆっくりと距離を詰めてくる。
手を伸ばす。その手が槍に触れる。掴む。
背後には刃を振り下ろす人形。
私はまだ、此処では終わらない――!!
槍を抜き、振り返りざまに人形の攻撃を防ごうとした。
だがそれは、抜いた瞬間に発生した光と風によって、人形は圧倒され攻撃できなかった。
辺りが一転する。
閉ざされた戦場に太陽が昇る。輝く太陽。
荒れ果てた戦場は活気を取り戻す。壊れたものは蘇り、旧き時代に立っているような感覚だ。
背後に人が降り立った。
輝かしい黄金の鎧。揺れる白い髪。胸の赤い鉱石。
それは、暗闇で輝く鋭利なる黄金。
眼を見開かせて、男を見た。
やがて男はその瞳を開け、女を捉える。そして優しく微笑むのだ。
「そうか、お前が……」
小さく唇を動かして発した言葉。
次に男は背後の人形を捉える。一歩また一歩あゆみ、彼女が手に持っていた自分の槍を受け取る。
そして人形を薙ぎ払う。切り裂き、突き刺し、一瞬で人形は跡形もなく粒子となって消え去った。
ああも簡単に、呆気なく。
男は振り返る。
そして未だ眼を見開かせて自分を見る女の目の前まで来て、告げる。
「聞こう。お前が俺のマスターか」
今は旧き戦場の地に眠る、誇り高き英雄よ――――