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消失の眠りでおわり、痛みではじまる――

何度目かの目覚めも、私は此処ではじまる――


「はぁ……! ……ッ!」


ボロボロの身体で、彼女は立っていた。腕や足は切傷だらけ。腹部からは血がどんどん流れ、制服を赤で染め上げいく。
気だるい身体。閉じてしまいそうな瞼を、全身の傷の痛みで覚まさせる。

彼女の目の前には倒れた人形がいた。のっぺらぼうの面白みのない人形の残骸。
その人形を、輪郭の合わない視界で彼女は睨みつけていた。

彼女は傷だらけの身体に鞭を討って、無理やりにでも足を前に出し、進もうとする。
そのたび傷に鋭い痛みが走り、崩れ落ちそうになる。感覚のない片腕。ガクガクと力なく震え嗤う膝。それでも前へ前へ前進する。


今度こそ、叶えてみせる――


電子世界の一つ。壁にはステンドグラスのようなものが光を放つ。
先へ進む道がないにもかかわらず、彼女は前進するのをやめない。


まだ始まったばかりだ――

我が儘な願いのために、手を貸してくれた彼らのために――

踏みつぶしてきた多くの命と、その願いを、無駄にしないために――


「諦めたりなんて、するものか――」


瞬間、背後にあったガラスが砕け、部屋に光が灯った。
目を見開いて振り向けば、中央に光がともった。それはだんだん形をとっていき、小さな人をかたどった。

現れたのは水色の髪をした少年だった。綺麗な髪と、それと同じ色をした瞳は海のようだ。
少年は正装を着て、瞳を釣り上げてこちらを見た。


「お前か、俺を呼んだ馬鹿なマスターは」


少年の声は低く、渋かった。

少年を凝視する。やがてゆっくりと頷けば鈍い痛みが走った。
手の甲に何かを刻まれた。そこには3つの模様が組み合わさった紋章にも見える印があった。印は開きかかった本のように見える。赤く刻まれた。

少年は鼻で笑った後、こういった。


「まぁいい。退屈しのぎだ。新たなネタになるやもしれんしな」

「あ、あなたは……?」


彼女は背の低い少年を見て、乾いた唇を動かした。
少年は腰に手を当て、ニヤリと笑った。


「三流サーヴァント、アンデルセンだ。本棚の隅にでも放り込んでおいてくれ。そして俺を楽しませて見せろ。さぁ、抗え。最弱なマスター」


――これは、このサーヴァントとの最初の記憶だ。




――仮に、この並行世界を世界線World Line__

ピ――

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