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最初に感じるのは、痛みだった――


「はぁ……はぁ……」


嫌な汗をかく。全身が痛み、動くことはできない。
体中にできた小さな切り傷がヒリヒリと痛み、脇腹にできた傷から生暖かい液体が流れていく。

視界ははっきりとせず、輪郭がぼやける。
倒れ伏した身体でなんとか上を見上げると、自分を見下ろす面白味のない人形と、部屋の周りに倒れ伏す制服を着た人たち。電子世界のような空間で、壁はステンドグラスみたいなものがあった。


いつもと同じ展開だ――


身体を動かそうと力を入れるも、体のあらゆるところが悲鳴を上る。だからと言ってやめるわけにはいかない。
両手に力をいれて、ボロボロの身体を何とか起こそうとする。痛みによって自分を支えられない腕はガクガクと震える。

瞳は真っすぐと前を見据えた。自分を見下ろし、腕を振り下ろそうとする人形を睨みつける。


今度こそ私は、やり遂げて見せる――


さぁ立て、と自分を奮い立たせる。
今度こそ、果たしてみせる。そのために自分は、私は、何度も繰り返してきた。


こんなところで、私は――


振り下ろされた鋭い腕が、真っ直ぐ自分へ降下した。


「――まだ、死ねない」


瞬間。ガラスが砕けたのと同時に、人形が背中から倒れた。人形は何処からか放たれた投石によって倒れたのだ。
目の前で起こった、今までになかった出来事に眼孔を見開かせて驚いていたところ。ふ……っと目の前に男が現れた。
こちらからでは後姿で、彼の顔は見えない。


「ふぅ、やれやれ。召喚初っ端でこれとは、僕も驚いたよ」


細身の男はそう呟き、踵を返して彼女を見た。
伸ばした黄緑色の髪とそれと、同じ色をした瞳で笑みを浮かべる、細身の男。首には黒いスカーフのようなものをして、片手には羊飼いの持つシェパーズ・クルークを握っている。
見た目は10代の青年のようだ。

その青年は爽やかな笑みを浮かべたまま、未だ倒れている彼女に語り掛けた。


「大丈夫かい、僕のマスター」

「……え……マス、ター……」

「おや、違うのかい?」


瞬きをして、止まったていた息を吹き返し肺に息を入れた。
戸惑って聞き返した彼女に、青年も同じように聞き返す。

すぐさま彼女は自分の手の甲に視線を送った。次の瞬間には、手がわずかに蒸発し、鈍い痛みを走らせる。手の甲に何かを刻まれた。
そこには3つの模様が組み合わさった紋章にも見える、奇妙な印があった。その印は彼の持つシェパーズ・クルークを模ったように見える。
赤く皮膚に刻みこんであった。

宿った令呪を見つめていると、彼は膝をついて彼女の両手を握り、傷だらけの身体を起こした。
手を取って、向き合って立つ二人。


「僕はアーチャー、ダビデ」

「アーチャー……」


彼女は何度も口にしたことのある、その単語を口にした。


「うん、僕はやるよ。かなりやる。ところで、君の名前を聞いてもいいかな。僕のマスター」

「私は――」





――仮に、この並行世界を世界線World Line__

ピ―――

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