×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
翌日、目を覚ましてから早々に夜月は保健室へ赴いた。


「これはイチイの毒ですね。私の権限でどこまで治療できるかわかりませんが、できる限りやってみます」


ベッドに体を預け、間桐桜から解毒の処置を受ける。そうしてベッドに座っていると、思わぬ来訪者が現れた。
ダン・モアだ。

彼はしばらく、夜月を見つめた後に「イチイの木の元になった宝具を破却させた」と口を開いた。
霊体化をしたままのランサーから、わずかに驚いた様子が伝わる。


「身勝手な言い分だが、これを謝罪とさせて欲しい」

「い、いえ。別に、大丈夫です」


少しばかり背を曲げて言うダン・モアに、夜月は戸惑いがちに言う。


「そして失望したぞ、アーチャー」


顕現した緑衣のアーチャーはやれやれ、という顔をした。
ダン・モアは静かな独白を続けた。だが、頑固たる信念に基づいた何かを感じる。

そして、ダン・モアはゆっくりと令呪の宿った手を上げ、告げた。


「令呪を持って命ずる。学園サイドでの、敵マスターへの祈りの弓イー・バウにより攻撃を永久に禁ずる」

「はあ!? 旦那、正気かよ……! 負けられない戦いじゃなかったのか!?」


アーチャーがそう言うのも当然だ。
宝具は最大の一撃。これをなくしては、最大の一手が打てないという事だ。


「無論だ。わしは自身に掛けて負けられぬし、当然のように勝つ。だが――アーチャーよ。貴君にまでそれを強制するつもりはない。わしにとって負けられぬ戦いでも、貴君にとってはそうでないのだからな」

「……」


その言葉にアーチャーは言葉をなくし、ただ黙ってダン・ブラックモアを見つめた。

令呪は3つ。本線参加者に与えられた、3つの絶対命令行使権利。しかし、1つは参加者の証。実際には2つだ。
そのうちの1つを、彼は使ったのだ。
自らのサーヴァントに『正々堂々戦え』と。

黙って彼らを見つめていた夜月に、ダン・モアは再び彼女に視線を向けた。


「サーヴァントが無礼な真似をした。君とは決戦場で、正面から雌雄を決するつもりだ。どうか、先ほどの事は許してほしい」


そう言うとダンは踵を返し、立ち去ってしまった。
残されたアーチャーは溜息を長く吐き、ガシガシと頭をかく。そうして隠れた片目で夜月を一瞥し、霊体化をして消えた。

二人が消えたのち、姿を現したランサー。視線は二人の消えた、扉に向いている。


「宝具名を漏らし、その使用を令呪を持って禁ずるか。更に、ペナルティによってあのマスターのステータスも下がるだろう」

「……」


ランサーの言う通り、この世界にはペナルティがある。
その傷を負い、サーヴァントの最大の武器となる宝具を禁じ、さらに敵マスターの前で宝具名を晒した。
それでもなお、彼は「勝つ」と言ったのだ。


武人騎士の鑑だな。お前にとっては……重い相手だろう」

「大丈夫よ、ランサー」


自分の身を案じてそう言ったランサーに、夜月は即座にそう答えた。
ランサーはじっと夜月を見つめる。嘘か真かお見定める、射貫くような瞳だ。
それでも夜月は「大丈夫だ」と繰り返した。それにランサーが応えることは無かった。


毒が消え、保健室を退室したのちに2-Aの教師へ出向くと、携帯端末が無機質な音を奏でた。


【第二暗号鍵を生成。第二層にて取得されたし】




Fourth day

prev | next
table of contents