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「……目が覚めたか」


瞼を開けると、そこはマイルームだった。部屋のベッドに寝かされ、その横に座ったランサーが申し訳なさそうな顔をして夜月を覗き込んでいる。
大丈夫だと伝え起き上がろうとすると、「まだ横になっていろ」とランサーに肩を押さえ、ベッドに引き戻される。

毒が完全に消えたわけではない。校内にいるため、最低限の保証はされているが安静にすることに越したことはない。
毒のせいで汗が流れる。そこまで酷いわけでもないが、肌につたう汗をランサーは拭った。


「すまない。俺の失態で、お前に傷を負わせてしまった……すまない、マスター」


眉を下げ、少しだけ顔を俯かせる。本当に心から、そう思っている顔をしていた。
そんな彼を見越して夜月は微笑んでこう言った。


「ありがとう、ランサー。助けてくれて」


驚いた様子でランサーは横になった夜月を見つめた。
微笑んでありがとうと告げる夜月に対し、ランサーは再び目を伏せた。


「俺は憎まれこそすれど、礼を言われるようなことはしていない」

「してるわ、ランサー。こうして部屋に連れてきて、看病までしてる。アリーナでも守ってくれた。だから、ありがとう」


告げられた言葉にランサーは言葉を詰まらせた。しかしそれに納得することができず、やっと開いた口から「だが……」と零れ落ちる。
その続きの言葉は、夜月が「シィー」と立てた人差し指によって塞がれた。


「貴方が此処まで連れてきてくれたから、私はまだ此処にいる。だから毒で絶えることがなかった。ありがとう、ランサー。助けてくれて。貴方はちゃんと、私を守ってくれたわ」


「だから、ね?」と目を細めて笑む彼女にランサーは言葉を飲み込んだ。目を丸くして、夜月を凝視する。
やがて呆れたように息を吐き、微笑む。


「……お前は、変わった人間だな。だが、それがきっと、お前という人間なのだろう」


夜月は彼の言葉に朗笑した。
ランサーもそれに応えるように口端をあげ、彼女の銀色の髪を優しく撫で、指にからめる。


「今日はもう眠れ、マスター。明日は保健室へ行こう」

「えぇ、そうね。なら、それまで……おやすみ、ランサー」

「あぁ、おやすみ」


そっと瞼を閉じる。
ランサーは夜月が眠るまで、彼女から手を離さなかった。




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