Inspect the enemy
いつものように放課後がやってくる。しかし、いつもと違うことがひとつだけあった。
それは、教室の外には人だかりができていることである。
そのほぼ全員が一年生で、同じヒーロー科のB組だけでなく、ほかのクラス普通科の面々もA組のクラスの前に集まっているのだ。
「何事だぁ!!?」
驚いて大声をあげる麗日及び緑谷はその異様な光景に、目が点である。
それにしても騒がしい。鬱陶しい。
「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ!」
「敵情視察だろザコ」
峰田の言葉をバッサリと切って爆豪は言う。
その容赦のない言葉に峰田が、爆豪を指さして「なにあいつ」と言いたげな顔で緑谷を見る。
「ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな。戦いの前に見ときてぇんだろ」
「意味ねぇからどけ! モブ共!!」
「君! 知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」
飯田が素早く注意するも、爆豪は聞く気がない。
すると、人だかりの中から少し頭が出ている男子生徒が前に出てくる。
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだな。ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」
「ああ!?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
1人前に出た男子生徒は爆豪の睨みなど気にする気もなく、首に手を置いて言う。
「普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ知ってた? 体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……」
彼の言い分に、ドキリとするA組の面々。もし結果が悪ければヒーロー科除籍が待っている。
彼は、ギラリとした目でA組メンバーを見る。
「敵情視察? 少なくとも俺は調子のってっと足元ゴッソリ救っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」
堂々とした様子で、その男子生徒はハッキリと言ってのけた。
すると、これらが火付け役となり、B組延いてはほかのクラス全てからA組は完全にヘイトを買ってしまっていた。
じっ…と全員がどうしてくれるんだと言った様子で爆豪を見るが、彼は気にする様子もなく、平常運転で帰ろうとする。人を掻き分けて。
「待てコラ!! どうしてくれんだ!! オメーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねぇか!!」
切島の声に、目だけ後ろに向けると爆豪は言う。
「関係ねぇよ。上に上がりゃ関係ねぇ」
爆豪は再び進みだす。罵倒を放ちながら歩くそこは、まさにデスロード。と、誰かが言った。
爆豪が教室を出たのをきっかけに、皆も徐々に教室を出ていく。しかし、先ほどの野次馬たちが消えているわけではない。
結局は掻き分けないといけないのだ。
「はぁ……億劫だなぁ」
「おーい、瓦楽ー! 早く帰ろーぜ?」
「今行くよ」
丁度良く切島が声をかけてくれたおかげで、彼が掻き分けた道を通るだけですんだ。
夜月は面倒ごとが避けられ、満足である。