Two days later
USJ襲撃事件から2日。
声も戻り、かすり傷程度だったため包帯も取れ、夜月はいつも通り登校をした。
「瓦楽! お前もう大丈夫なのか!」
教室に入って一番に反応したのは切島だった。
その声に反応して女子全員と男子数名が、わらわらと夜月に駆け寄った。みんな口々に「もういいの?」と傷を労わる。
「ありがとう。でももう平気だから、心配しないで」
「はぁ……安心しましたわ」
「無事で何よりだわ、ケロ」
安堵の息をつく八百万と良かったという蛙吹。
「蛙吹も、あの時はありがとう」
「お礼なんていいわ。それから、梅雨ちゃんって呼んで」
「えぇ、ありがとう梅雨……爆豪も、ありがとう」
「次は捨てる!」
窓際に座っている爆豪に声をかけ、自分も席に着いた。
「みんなー!! 朝のHRが始まる!! 席につけー!」
「ついてるよついてねーのおめーだけだ」
飯田はいつものように気合い充分と言った様子で皆に座るように言うが、既に座っている。立っているのは彼だけだ。
彼はしまったと直ぐに席に着いた。
それからホームルームは誰がやるのだろうと誰かが言った。
流石に相澤は来ないだろう、と思っていると扉があき。
「おはよう」
「「相澤先生復帰早ぇぇぇ!!!」」
ガラリと空いた扉から、包帯ぐるぐる巻きの相澤が入ってくる。いつもと変わらぬ時間。まさに合理的である。
心配する飯田を他所に、相澤はまだ戦いは終わっていないという。
まさかまたヴィランかと、焦りを浮かべていくクラスの面々。しかしそれは杞憂に終わる。
「雄英体育祭が迫っている!!」
「くそ学校っぽいの来たあああああ!!!!」
クラス全員が、ホッとしながら叫び声をあげる。
この状況、襲撃のあとで逆に開催することで、雄英の機器管理体制は盤石だとアピールするためというのもあり、例年通りの開催と相成ったわけである。
夜月にとっては面倒でならないのだが。
そして、皆が気合を入れる理由はもう一つ。それは、プロからのスカウトである。
今後を期待される者はこの体育祭でプロからのスカウトを受けることとなるのだ。
「年に1回計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」
それだけ言い終わると、相澤はHRを終了して出ていった。
4限目終了後――昼休み。
「テンション上がんなぁー!!」
「数少ないチャンス、モノにしない手はない」
教室の後ろでは切島、瀬呂、常闇、砂藤が集まって話していた。
他にも仲のいいグループで集まり、クラスのあちこちで話している。
「瓦楽もテンシュン上がんだろっ!!」
切島がすぐその席で読書をしていた夜月に話しかけた。
夜月は本を閉じ、会話に参加する。
「あぁ、うん……」
「言葉に覇気がないな、どうかしたのか」
常闇が問いかける。
「私、身体能力は中の中だから、こういうのはねぇ。個性を使えばどうにかなるけど、使い過ぎもアレだし」
「ではまず、トレーニングだな。まずは食事か」
「んじゃ肉だな」
「後は……」
常闇の会話に乗り、切島と瀬呂が言う。
続いて砂藤。
「糖分だな!」
「いやそれは……」
「甘いものは毎日とってるから平気」
「お、瓦楽も甘党か!」
そこから話はずれ、砂藤と夜月の甘党会話になった。
それを眺める男子三人は、なんとも微妙な顔だ。砂藤がよく自分でケーキを作ると言うと夜月はそれに乗り、ささっとメアド交換をする。
それを見た切島の発言により、三人とも交換することになった。
少しの間、彼らと話していると夜月の携帯が鳴る。
開いてみると轟からのメッセージで、食堂の席を取ったとのこと。
夜月は会話を抜けて、早々と食堂に向かったのであった。
既に二人で昼を食べるのは当たり前と化している。
それを突っ込むに突っ込めない、そんな切島たち四人だった。
食堂――。
夜月はプレートを持って轟のもとへ向かった。
向かいの席に座っている轟。その様子はどこかピリピリしている。
「……」
無言で食べ進める。
夜月は轟の様子を伺いつつ、口に昼食を運んだ。
「……轟」
「なんだ?」
返答はいつも通り。声色も変わらない。
ただ、彼が纏っている雰囲気がピリピリとしているだけ。
「……いや、なんでもないよ」
「そうか」
なんだか、中学の頃に戻ったみたいだ。
夜月はそんなことを思った。