第2話



IH予選が目の前まで迫ってきた頃。後片付けをしていた潔子と夜月は、あるものを見つけた。


「こんなの、まだあったんだ」

「洗えばまだ使えそうですね」

「そうだね。みんなには内緒で綺麗にしようか」


2人は選手たちには内緒にして、前日にサプライズでそれを見せようと話した。
選手たちがこれを見て、もっと胸を張って前に進めるようにと、ささやかな応援を込めて。



* * *



「夜月先輩!」


お昼休み。廊下を歩いていると夜月を探していたらしい山口がそう声をかけた。呼び止められた夜月は不思議そうに山口を見上げる。


「どうかした?」

「あの、いま時間いいですか・・・・・・?」


遠慮がちに、でも真剣な表情を浮かべる山口。夜月は頷いてそれを了承した。
2人は人通りの少ない場所へ行き、夜月は山口が口を開くのを待った。


「試合に出るためには、何が必要だと思いますか?」


夜月は目を丸くして山口を見た。


「1年で試合に出てないのは俺だけ。でも、このままじゃ嫌なんです。どうすれば試合に出れますか」


真剣な顔つきをする山口を夜月は真正面から受け止めた。1人だけ試合に出れていないという劣等感と焦り。試合に出たいという強い意志が、山口を動かしたのだろう。
相談を受けた夜月はマネージャーとして考える。


「・・・・・・私がもし君と同じ立場だったら、チームに足りないところを伸ばす」

「チームに足りないもの?」


間をおいてから夜月はそう話しだした。
「そう、チームにあるものより無いものを伸ばせば、必ず出番は回ってくる。ウチのチームで足りないものは・・・・・・」夜月は続ける。


「ピンチサーバー・・・・・・サーブだ」


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